TPP11と日欧EPAが超危険!! 食料自給率が20%を切る!? 種子法廃止で有機栽培できる土地が消える!? 遺伝子組み換え食品ばかりが食卓に ~市民が変える日本の政治 オールジャパン学習会 2018.4.19

記事公開日:2018.4.21取材地: テキスト動画
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(取材:八重樫拓也 文:奥松由利子)

特集 TPP問題
特集 種子法廃止の衝撃「食料主権」を売り渡す安倍政権
※2018年5月7日、テキストを追加しました。

 敗戦後の食料不足が続く1952年、「国民を飢えさせないために」と制定された種子法(正式名称:主要農作物種子法)は、2016年秋、内閣府の規制改革推進会議の農業ワーキング・グループにおいて、「民間企業の農業への参入を阻む」と指摘された。2017年2月には異例の早さで種子法廃止法案の閣議決定があり、同年4月、参院本会議で可決、成立。こうして、日本各地の気候風土に合ったコメ、麦、大豆の優良品種の育成と安定供給を半世紀以上にわたって支えてきた種子法は、2018年4月1日に廃止された。

 これに対し、食の安全や種子生産技術の海外流出などを懸念した野党6党(立憲民主党、日本共産党、希望の党、無所属の会、自由党、社民党)は、2018年4月19日、種子法復活法案を衆議院に共同提出している。

 同じ2018年4月19日、東京都千代田区の衆議院第二議員会館にて行われたオールジャパン平和と共生の学習会「市民が変える日本の政治 オールジャパン学習会 さようなら!アベノミクス『むしり取る経済政策』から『分かち合う経済政策』へ 亡国のTPP11と種子法廃止」では、経済学者の植草一秀氏や元農水大臣の山田正彦氏らが国の食料主権が失われる危機感を訴え、TPP11や日欧EPAについても警鐘を鳴らした。

▲種子法廃止で有機栽培のコメを作れる土地がなくなってしまう(イメージ写真)

 オールジャパン平和と共生の顧問で運営委員でもある山田氏は、国が補助金をチラつかせながら飼料米の収量アップを農家に迫り、F1種や遺伝子組み換えの種子へと誘導する構図を紹介。「各地の農家が遺伝子組み換えの飼料米を作り始めたら、稲の花粉は1.5キロ四方に飛んで交雑するので、日本で有機栽培のコメを作れる土地がなくなってしまう。結果的に、われわれは遺伝子組み換えのものを食べることになる」と懸念した。

 オールジャパン平和と共生運営委員の植草氏は、安倍政権の経済政策であるアベノミクスの問題点を改めて指摘し、経済活動の成果をどのように分け合うかという分配政策「シェアノミクス」を提案。消費税廃止、最低賃金の引き上げ、最低保障年金制度、一次産業への個別所得保障、奨学金徳政令(債務免除)など、5つの具体的なプランと効果について説明した。

 「今の日本は、国民の主権がすべて総理大臣に持っていかれている」と語ったのは、オールジャパン平和と共生の最高顧問、原中勝征氏だ。このままアメリカ追従の政策を続けると、日本の独立性も国民の決定権もなくなると危惧し、「子どもや孫の世代にとんでもない国を残すことのないように、決めるのは自分たちだという意識を国民全員が持つことが重要だ」と力を込めた。

 なお、オールジャパン平和と共生は、6月6日に東京の憲政記念館講堂にて、オールジャパン総決起集会を開催する予定である。

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■ハイライト

■全編動画

アベノミクスの本質は弱肉強食! 目指していたのは国民の利益ではなく、グローバル資本の利益だった!

 冒頭で挨拶に立った原中氏は、元日本医師会会長という視点から、輸入農産物の増加によって日本の食の安全と国民の健康が脅かされる危険について語った。

▲オールジャパン平和と共生最高顧問、元日本医師会会長・原中勝征氏(IWJ撮影)

 「日本は大豆の輸入が多いが、遺伝子組み換え大豆を食べたラットの50%にがんができたという実験がある。また、成長ホルモンを与えた牛の牛肉や牛乳を摂取していると、乳がんになるリスクは8倍、前立腺がんのリスクは2倍という報告もあり、アメリカのある州では成長ホルモンの使用をストップした。EUやロシア、中国が輸入を制限するような食品を、(アメリカの大統領に)『晋三、お前は信頼できる』などと肩を叩かれて、日本が買うのか。遺伝子組み換え食品や成長ホルモンの恐ろしさを、国民が知らなければいけない」

 続いて植草氏が、「むしり取る経済政策」から「分かち合う経済政策」への転換、と題した講演を行なった。

 はじめに、「アベノミクスとは、大資本の利益を追及するもの。賛同する勢力はグローバルに展開する巨大資本だ。アベノミクスの本質は、すべてを市場原理に委ねる弱肉強食であり、政府の役割を小さくして民営化を推進する。1%が99%を支配する構図で、その99%はどんどん下流に押し流され、格差は拡大する。当初、謳われたトリクルダウン(大企業の利益を拡大すれば、やがて労働者にも利益が回る)は嘘八百だ」と断じた。

 そして、アベノミクスの「3本の矢」について、次のように検証した。

 「1本目の金融緩和は、インフレ誘導を目指して失敗した。インフレ誘導は、国民にとっては百害あって一利なし。結果的に失敗したことは、国民には不幸中の幸いだ。もともとインフレ誘導は目指すべきものではなかった。

 2本目は財政出動。2013年には財政出動したが、2014年は消費税を8%に増税したため、財政出動の効果は出なかった。消費税の増税で日本経済は景気が後退、不況に突入。ただし、財務省は不況になったことを隠蔽している。2019年10月には消費税10%になる予定だが、どうなるのか。

 3本目の矢は成長戦略。ただし、何の成長かを示していないところが要注意である。政府が目指しているのは国民の利益ではなく、大資本の利益の成長である。これがアベノミクスの核心なのだ」

アメリカに翻弄される日本の経済と金融! バブル景気と崩壊、日本版金融ビッグバン、りそな銀行救済、郵政民営化

 植草氏は、「戦後の日本とは、アメリカが支配する日本である」と指摘。ここで言うアメリカとは、金融資本、軍事資本、多国籍企業の3つであり、アメリカの日本支配の実働部隊が、日本の官僚機構と日本の大資本なのだと語った。「米国、官僚、産業、政治、情報(マスメディア)」の5つによって、日本が支配される構造が続いてきたという。

 日本が抱える3つの領土問題も、日本が近隣諸国と仲良くならないように米国が埋め込んだ策略であるとし、対中国は尖閣諸島、対韓国では竹島、対ロシア(旧ソ連)では北方領土を未解決状態におくことで、アメリカのコントロールが効くようにしていたと述べた。

 また、1980年代の日本のバブル景気もアメリカの事情によるものだと説明。高金利、ドル高でアメリカの赤字が増えたので、人為的にドルを下げて円高へ。プラザ合意で日本の金利が下がると日本の資産価格が上昇し、日本企業がロックフェラーセンターなどの海外物件を買い漁るようになった。

 「ここで日本が目立ちすぎたため、1980年代の後半は日本叩きへ転じて、バブル崩壊が誘導された。1990年代以降は、日本にとって失われた20年。バブル崩壊で日本の金融市場は大混乱となり、不良債権問題で日本の金融機関の体力は急激に低下した。そのタイミングで1996年、橋本龍太郎政権の日本版金融ビッグバン。日本の金融市場を全面開放させた。破綻した日本の金融機関を外資が安く買い取り、外資系保険会社が急増した」

 そして、小泉純一郎政権の2003年に起きた、りそな銀行への公的資金注入について、植草氏は「深い闇」と表現しながら、このように続けた。

▲りそな銀行本店(Wikimedia Commonsより)

 「りそなは、経営陣だけが一掃され、公的資金で救済された。小泉・竹中(当時の竹中平蔵金融担当大臣)ラインの近親者が幹部に送り込まれている。合法的な乗っ取りだ。

 その後、りそな銀行は自民党への融資を激増させた。これを朝日新聞(2006年12月18日付)が一面トップで報じたが、書いた記者は東京湾で水死体で発見された。また、『りそなは自己資金が足りない』と指摘した監査法人の担当会計士は自宅マンションから転落死している。外資が日本の金融機関の株価を最低ラインまで下げたところで公的資金で救済し、ぼろ儲けをする図式があった。

 郵政民営化は、350兆円の郵政マネーと日本郵政が保有する不動産資産を狙った収奪作戦だった。かんぽの宿は、全国の109施設をまとめて格安でオリックスに払い下げようとしたが、これは未遂に終わっている」

株価が反映するのは日本企業の上澄み0.1%の状況でしかない。消費税8%をきっかけに日本は不況に転じている!

 植草氏は、アベノミクスの現状について、「今、株価は上がっている。大企業の利益も上がっている。失業率が下がり、有効求人倍率は上昇。確かに、大企業の利益に限って言えば絶好調だ。しかし、それらは全体のごく一部。株価が表すのは上場企業の約4000社だが、日本の法人数は400万社。つまり、株価は日本企業全体の0.1%の状況しか反映していない。確かに失業率は下がっているが、肝心なのは給料だ」と話す。

 第2次安倍政権発足後の経済成長率は平均プラス1.5。東日本大震災を経験し、経済が非常に停滞した民主党政権時代でも、経済成長率は1.8だった。今は、それより経済の状態が悪いということだ。

 植草氏は、2014年1月から2016年5月までの2年半で日本は不況に転じているとし、「これは消費税増税による不況だが、政府は隠蔽している。安倍政権は『いざなぎ景気(1965年~1970年)を超えた』などと言うが、あの時はGDPが7割も増えている。今回は全体で7%増。北米大陸の最高峰マッキンリーと日本の高尾山くらいの差がある。マッキンリーに登頂した人に、高尾山に登った人が『自分も同じだ』と言うようなもの。つまり、今回の景気はイカサマ景気。実質賃金指数が重要なのだが、第2次安倍政権になって5%も減っている」と指摘した。

 アベノミクスの背後にあるのは「ワシントン・コンセンサス」だと植草氏は言う。これは1989年、ジョン・ウィリアムソンという国際経済学者が論文で使った言葉で、国際通貨基金(IMF)、世界銀行、米財務省、ホワイトハウスなど、主にワシントンにある組織の意向を反映した、経済における世界戦略、政策パッケージのことだ。その4本柱は、1. 市場原理を基軸にする 2. 小さな政府(社会保障はしない、弱肉強食) 3. 規制撤廃 4. 民営化、というもの。アベノミクスは、まさにこれで、後押ししているのはグローバル資本なのである。

アベノミクスの5つの大罪? 食の不安、医療の崩壊、官業払い下げで大資本に旨味の民営化、労働コスト圧縮の「働かせ方改悪」、企業優遇の法人税減税!

 次に植草氏は、アベノミクスの5つの柱である、農業の自由化、医療の自由化、特区創設・民営化、労働規制撤廃、法人税減税をひとつずつ解説していった。

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 「農業の自由化。TPPや日欧EPAで日本は譲歩に譲歩を重ねている。アメリカを含む12ヵ国で決めたTPPは、アメリカが抜けて11ヵ国になったのに枠組みはそのままだ。遺伝子組み換え食品や成長ホルモンを投与した米国産の肉の問題。これらは乳がん発生と関わりがあるとされ、ヨーロッパでは輸入禁止だ。そして、亡国の種子法廃止。食の安全の崩壊が懸念される。

 医療の自由化。安倍政権は公的支出は抑制しつつ、医療のGDPを拡大するとしている。これは、薬と医療機器の価格を上げることを意味する。そうなると、日本の医療は2本立てになり、お金の有無で受けられる医療が変わってしまう。病気になった時、生活を支える構造が崩壊する。

 特区創設・民営化。民営化とは『官業払い下げ』である。森友の国有地払い下げも根は同じ。かつて、麻生財務大臣は水道民営化に言及したが、(インフラなどの)公的事業は独占状態ゆえに、公的に管理されているのだ。旨味のある部分を民間に渡して価格を自由にしたら、どうなるか。超過利潤を追求して行くのは目に見えている」

▲オールジャパン平和と共生運営委員、経済学者・植草一秀氏(IWJ撮影)

 そして、労働規制撤廃について植草氏は、耳あたりのよい政府の説明を一刀両断にした。

 「グローバリズムの究極の目標は、利益の極大化。有効な方策は労働コストの圧縮だ。安倍政権は労働コストの圧縮を後押ししている。『働き方改革』というイメージの良い言葉の実態は『働かせ方改悪』だ。日本は人口が減っており、技術進歩も停滞。今後の急成長は望めない。できるのは、今、働いていない人たちを労働市場に引っ張り出して低賃金で働かせることなのだ」

 また、今国会に出た4つの法案、残業規制、同一労働・同一賃金、高度プロフェッショナル制度、裁量労働制の適用範囲拡大(撤回された)について、植草氏は、「残業規制は月100時間まで容認というが、月80時間で過労死認定されている事例があるので、これは『過労死促進法案』と言える。

 高度プロフェッショナル制度は残業代を払わない制度。つまり、『定額残業させ放題プラン法案』。同一労働・同一賃金は、正規、非正規の格差をいたるところで容認するもの。言い方はきれいだが、大資本の利益を極大化するために、労働規制を撤廃し、労働コストを下げる。そして、外国人労働力を入れ、日本の労働者の賃金が下がるように仕向けている」と批判した。

 法人税減税に関しては、2007年の政府税制調査会の報告書で、日本の法人の税及び社会保険料負担の国際比較があり、日本企業の税及び社会保険料負担は高くない、とされている。つまり、法人税減税は必要ないという結論を出しているのだが、2012年以降、法人税はどんどん下がっていった。

 植草氏はその背景を、以下のように示す。

1. 財務省が消費税増税の応援団を必要とした。大企業を味方にするとメディアコントロールができる。

2.ハゲタカ(外国資本)の要求。現在、日本の大企業の資本は3割が外国資本の所有。外国資本は日本に投資した時、高い法人税は払いたくない。一般庶民に肩代わりさせろ、ということ。

3. 日本の税収規模は1989年から2016年まで、ほとんど同額で変わっていない。変化したのは所得税が約4兆円減り、法人税が約9兆円減り、消費税が14兆円増えたこと。消費税増税は財政再建や社会保障のためと言われていたが、法人税減税と富裕層の所得税減税のために実施された。

 「日本には1000兆円超えの借金があり、日本のGDPは500兆円なので、約2倍の借金。これはギリシャより悪いと言われているが、財務省が絶対に言わないのが期末資産1302兆円があること。実は、政府負債よりも資産が多い。ですから、日本が財政危機に陥る可能性はゼロ。国民は完全に騙されている。

 現在、政府支出で33兆円が社会保障にあてられているが、消費税は15~16兆円規模。社会保障の支出が33兆円あるので、政府は今後も消費税を増税する際には『増税分は全部、社会保障にあてます』と言い続けることができる。こういう言葉のトリックに騙されてはいけない」

必要なのは分配政策。アベノミクスより「シェアノミクス」を! 法人税と富裕層の所得税アップで財源は確保できる

 植草氏は、「重要なのは成長を追求することではなく、みんなが生み出した経済の果実を、どのように分け合うかという分配政策だ」と言い、アベノミクスに代わる案として、国民が皆で分かち合う「シェアノミクス」を提案した。具体的な内容は次の5点になる。

▲最低賃金の引き上げ(イメージ写真)

1. 消費税の廃止
 「消費税は5%に戻してもいいし、金額的にも廃止が可能。代わりに法人税を増やし、富裕層の所得税を上げれば、財源は確保できる」

2. 最低賃金の引き上げ
 「今の最低賃金は時給800円台などに設定されていて、生活するには困難な金額だ。私は時給1300円を提案する。月の労働時間を155時間として、時給1300円だと月収が20万円を超える。中小企業がこの支出に耐えられないのなら、そこに国の補助金をあてる。法人税などで得た財源を元に、労働者にそれを還元していく」

3. 最低保障年金
 「すべての国民に対する最低保障年金制度を確立する。現行では無年金の人も非常に多い。また、高齢者の6割が年金収入のみで暮らしているが、年金だけで生活を支えることが困難なケースもある。その場合は、生活保護を新たな権利として位置付ける」

4. 一次産業に対する個別所得保障
 「一次産業は国家安全保障の要。農業、食料の問題は、私たちの生命の問題である。食の安全が脅かされている今、一番の解決策は地産地消に戻すこと。農業所得に占める補助金の比率はアメリカ75%、ドイツ61%、日本は38%と低い。誰が作ったかわかる安全な食料の供給のためには、農業への補助が必要だ」

5. 奨学金の徳政令と教育の無償化
 「奨学金が返せずに自己破産に追い込まれる人が増えている。大学教育については、大学進学の意向を持ちながら経済的事情で進学できないケースを、国がなくすことが必要だ。そのためには給付型奨学金制度を充実させる。現行の貸与型奨学金の残高については、奨学金徳政令(債務免除)を打ち出す」

 かつて、民主党政権が高速道路無料化、子ども手当支給、農家への個別所得保障、高校授業料の無償化などを打ち出した時、「ばら撒き」だと批判された。植草氏は、「政府の支出には国民に直接給付するものと、政府が裁量で行うものと2種類あるが、財務省が嫌うのは直接給付型。制度が決まって支出されるものは、国民の権利になるからで、それは財務省の利権を大きく損ねる。財務省は直接給付型の支給をできるだけ切って、自分たちのさじ加減で予算をつける裁量型支出だけにしたい。そのため、直接給付型には悪い印象の名前をつける。それが『ばら撒き』だった」と振り返る。

 そして、「日本の財政支出には『その他・30兆円』という部分があるが、ここには無駄が多く、3割(約10兆円)削減が可能だ。それ以外にも、先述した法人税と所得税の増税でお金を賄うことができる。さらに、富裕層を対象にした金融資産課税を行えば、財源は十分に確保できる」と語り、安倍政権下で疲弊した日本社会の再建への道筋を示した。

TPP11で日本の農家は努力し生産性向上!? 政府のトンデモ皮算用を山田正彦氏が一喝! 「農家の時給は180円。これ以上の努力などあり得ない!」

 第2部では、「亡国のTPP11と種子法廃止」と題して、オールジャパン平和と共生の顧問で運営委員でもある山田氏がマイクを握った。

 「多国籍企業によって、日本が支配されようとしている。その尖兵がTPPだったが米国民の7~8割がTPPに反対し、トランプ大統領はTPPを離脱した。これで12ヵ国によるTPPは終わりかと思ったら、TPP11になった」

 TPP11は8000ページに及ぶTPP協定に6ページだけ上書きしたものだが、TPP交渉で決まった内容はそのまま効力を持つ。山田氏は、「実際は各国ともTPP11に反対だったのに、日本が主導して有利な条件を譲りに譲ってまとめてしまった」と表情を曇らせる。そして、日本の食料自給率は、2年足らずで40%から37.6%に下がっているが、TPP11と日欧EPAによって10年以内に20%を切るのではないか、と懸念した。

 日本政府は、TPP11で農家の減収額が最大1500億円という試算を行いながら、「農家の所得は減らない。食料自給率は変わらない」と説明している。農産物価格が下がるのに、なぜ、農家の所得は減らないと言えるのだろう。

 「その分、農家が努力して、生産性も向上するから大丈夫だ、というのが政府の言い分だ。農家がこれを聞いたら怒るだろう。今、農家の労働賃金は時給換算で180円。これ以上の生産性向上など、あり得ないのだ。このままでは、私たちの食料が大変なことになってしまう」

 憲法22条1項には「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する」とある。山田氏は、TPP協定は公共の福祉とは思えないとし、「TPP11で農家の営業の自由が侵害され、消費者は安全なものを選べなくなる。これは憲法13条(幸福追求の権利)や25条(生存権)に反するものだ」と断じた。

 山田氏は、TPP交渉差止・違憲訴訟の会の呼びかけ人も務めている。東京高裁での控訴審判決では、「まだ、TPPは発効していない」として訴えは却下されたが、判決の中に「種子法廃止は、TPP協定が背景にあることは否定できない」という一文があったという。つまり、グローバル資本にとって日本の種子法がなくなることは非常に好都合だということだ。

▲TPP11により成長ホルモンが使われた牛乳、牛肉、豚肉の輸入が倍増する(イメージ写真)

 TPP11によって、成長ホルモンが使われたニュージーランドの牛乳、オーストラリアの牛肉、カナダの豚肉の輸入が倍増することに触れた山田氏は、「乳がんや前立腺がんの発生率が高まると言われているものを、子どもや孫に食べさせなくてはいけない時代が、すぐそこに来ている」と危機感を表明した。

稲の花粉は1.5キロ四方に飛んで交雑する。農家が遺伝子組み換えのコメを作り始めたら、有機栽培のコメを作れる土地は日本からなくなる!?

 種子法について山田氏は、「現在、モンサント、ダウ・デュポン(ダウ・ケミカルとデュポンが合併)、シンジェンタ、バイエルの4社で、世界のコメの種子80%くらいを支配している。野菜の種子の場合だと、30年前は国内産が100%だったが、今は90%が海外生産。日本の野菜の種子はモンサントが作っているらしい。種子登録されているものは自家採取できないのだが、モンサントがどれだけ登録しているか、今、農水省に問い合わせている」と話した。

▲オールジャパン平和と共生顧問、元農林水産大臣・山田正彦氏(IWJ撮影)

 「これまで、コメ、麦、大豆だけは(種子法で守られて)国産100%で、伝統的な固定種だった。しかし、種子法廃止に関して2017年秋に出た農水省の次官通達には、『民間の種子が参入するまでの間、(各地の農業試験場などは)伝統的なコメの品種(原種)を維持し、育種知見を民間に提供しなさい』とある。公共の種子の情報を提供しなさい、と。ここで言う民間にはモンサントなどの海外企業も含まれている」

 国の機関である農研機構(農業・食品産業技術総合研究機構)は、長い間、日本の育種技術を研究、集約してきた機関である。今年の4月1日、その理事長に、三菱電機出身で内閣府の総合科学技術・イノベーション会議のメンバーであった久間和生氏が就任した。民間からの登用は初めてのことだ。

 山田氏は、「いよいよ日本の(種子の)知的財産権を取られ、すべての品種が登録される。その時、私たちは何を食べさせられるのか。三井化学の「みつひかり」、今年から参入する豊田通商の「しきゆたか」は(1代限りで種子が採れない)F1品種だ。また、遺伝子組み換えの品種も、すでに飼料米として準備されている」と語る。

 最近、北陸農政局が「飼料米は1反あたり11俵作らないと補助金は出さない」という通達を農家に出した。1反あたりの収量を上げるとしたら、農家はF1品種か遺伝子組み換え品種を作るしかない。そして、前述の農研機構では遺伝子組み換えの飼料米の種子を用意しているという。

 「今年か来年、各地の農家が遺伝子組み換えの飼料米を作り始めたら、稲の花粉は1.5キロ四方に飛んで交雑するので、日本で有機栽培のコメを作れる土地がなくなってしまう。結果的に、われわれは遺伝子組み換えのものを食べることになる」

 最後に会場の参加者から、「今の政策がこのまま続いたら、日本はどうなってしまうのか」という質問があった。

 原中氏は、「本来、国民が主権者であるはずが、(安倍政権で作られた)法律ひとつひとつを見ていくと、国民の主権がすべて総理大臣、政府に持っていかれている。ヒトラーやムッソリーニのような独裁者と同じ道に向かっている」とし、次のように力説した。

 「改憲で9条に自衛隊を明記するということも、安倍さんの頭の中では単純にアメリカと一緒に海外に(戦争に)行く、ということではないのか。このままだとアメリカのイエスマンで、日本の独立性、国民の決定権は何もなくなる。ここで、私たちは主権を取り返すべき。国民全員が、決めるのは自分たちだという意識を持つこと。安倍さんに全権を任せて、とんでもない国を子どもや孫の世代に残すことのないように」

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「TPP11と日欧EPAが超危険!! 食料自給率が20%を切る!? 種子法廃止で有機栽培できる土地が消える!? 遺伝子組み換え食品ばかりが食卓に ~市民が変える日本の政治 オールジャパン学習会」への2件のフィードバック

  1. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    TPP11と日欧EPAが超危険!! 食料自給率が20%を切る!? 種子法廃止で有機栽培できる土地が消える!? 遺伝子組み換え食品ばかりが食卓に https://iwj.co.jp/wj/open/archives/418650 … @iwakamiyasumi
    日本の食料自給率は今でも先進国で最低。さらに下がって20%とは、その国が国民を食わせることを放棄したということだ。
    https://twitter.com/55kurosuke/status/987651281660428288

  2. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    TPP11と日欧EPAが超危険!! 食料自給率が20%を切る!? 種子法廃止で有機栽培できる土地が消える!? 遺伝子組み換え食品ばかりが食卓に https://iwj.co.jp/wj/open/archives/418650 … @iwakamiyasumi
    政府が目指しているのは国民の利益ではなく、大資本の利益の成長である。これがアベノミクスの核心なのだ。
    https://twitter.com/55kurosuke/status/1057769276688392193

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