2021年3月22日(月)、同日午後2時から開催された「種子法廃止等に関する違憲確認訴訟」第3回口頭弁論に先立ち、午後1時より、東京地裁正門前にて、門前集会が開催された。また、口頭弁論終了後には、場所を衆議院第2議員会館へ移し、報告集会も開催された。
2018年4月、「民間企業の種子事業への投資を阻害している」との理由により「主要農作物種子法(種子法)」が廃止された。この訴訟は、その「種子法廃止」が、憲法25条(生存権)などに抵触するとして、違憲確認などを求め、2019年5月24日に、全国の農家・消費者などが東京地裁に対して起こした裁判である。
そもそも、種子法は、1952年、戦後の食料難を解消するため、主食となるコメや麦・大豆などの種子を都道府県の管理下で開発し、優良品種を安定的に供給するために制定された非常に重要な法律であった。
門前集会の冒頭、弁護団の田井勝弁護士が、このたびの第3回口頭弁論のポイントについて、以下のように説明した。
「本日、原告の第2準備書面を提出した。これは、被告・国の主張に対する反論である。
国は、『食料への権利は憲法上の権利であり、種子法の廃止により、この権利が侵害された』という私たちの主張に対し、『食料への権利は具体的な権利ではなく、一般的・抽象的なことを言っているに過ぎない。これは権利ではない。だから、それを保証する義務はない』と主張している。
また、『法律の廃止によって、発生する可能性のある様々な不利益は、漠然とした不安感に過ぎないため、私たちが求めている憲法違反の確認を求める必要はない』とも答弁している。
私たちは、国側のこの主張を非常に不当なものだと考えている」
また、食や農業、社会とつながることをモットーにする料理研究家・枝元なほみ氏は、「食べ物のことをちゃんと考えない人を、信じることができません。国が『人が食べて生きていく』ことに責任を持たない国であることをものすごく情けなく思います。食べ物がなければ、誰も生きていけない。それを、きちんと正面から向き合って考えようとしていない。(中略)本当に、私たちのおおもとのところを譲る気はないです」と訴えた。
口頭弁論終了後の報告集会では、元農林水産大臣で「日本の種子(たね)を守る会」の山田正彦氏が、質疑応答の中で、次のように、問題の核心に触れた。
「種子法廃止後、2020年12月2日に成立し、この4月に施行予定の改正種苗法により、農業は、生産者と企業間の契約にもとづくものとなり、その際、企業側が指定した農薬・化学肥料と種子の使用を義務付けられる。そのため、私たち国民がこれまで当たり前に享受していた安心・安全な農作物の供給ができなくなるおそれがある。
この事態を受けて、各都道府県では、それぞれが抱える農家の『育種知見』を保護するための『種子条例』を成立させる動きが生まれており、現在、全国26の道県でこの種子条例が成立している」
食料への権利、小農の権利、持続可能な農業を守るための各都道府県における『種子条例』成立の今後の行方を見守りたい。
門前集会と報告集会の一部始終は、全編動画にてご確認いただきたい。