日刊IWJガイド・非会員版「2022年、エネルギー大手がウクライナ紛争とインフレと賃金抑制でぼろもうけ! エクソンモービル、シェブロンなど年間利益が過去最高を更新」2023.2.4号~No.3796号


┏━━【目次】━━━━
■はじめに~2022年、米エネルギー大手がウクライナ紛争とインフレと賃金抑制でぼろもうけ! エクソンモービル、シェブロンなどの年間利益が過去最高を更新! ウクライナ紛争は、米国国家と米エネルギー大手にとって「金のなる木」に他ならない!「自由・民主主義対専制主義の戦い」とは、この実態を隠すための虚飾のキャンペーン!

■IWJは最大の経済的危機です! 1月の31日間でいただいたご寄付額が確定しました! 第13期6ヶ月間の累積の不足額は、1月末時点で1117万円にまで増えてしまいました! 岩上安身からのIWJの借り入れ総額は、現時点で1600万円になります! 岩上安身の私財には限界があります! このままでは、皆さまのご支持・応援、会費、そしてご寄付・カンパによるご支援がなければ、活動が立ち行かなくなります。米国が自らの覇権維持のために世界の緊張を高める「新たな戦争前夜」にあって、偏向メディアにかわって、正確な情報をお届けすべく、IWJは精いっぱい頑張りますので、緊急のご支援のほど、よろしくお願いします!

■【中継番組表】

■米国防総省が「北部から侵入した高高度偵察気球は中国のもの」と推定したが、「撃墜は見送った」と報告! 軍事的な脅威はなく、情報収集能力も低いとも! 中国外交部報道官は「我々は状況について検証中であり、双方が冷静かつ慎重に対処できることを願っている」!「軍事的脅威はない」と米国防総省が判断したこのエピソードを世界の大メディアが一斉に報じ、「中国の脅威」を煽る!『日本経済新聞』は「米中対立の新たな火種」とまで煽ったが、こうしたメディアの「空気づくり」が、日本の国益になるのか!?

■米ラトガース大が学術誌『Nature Food』に掲載した研究発表で、米露全面核戦争の「核の冬」で2年以内に世界の50億人が飢餓に直面と分析! 日本では1億2000万人以上、ほぼすべての人口が餓死!! IWJはこの研究発表「核戦争の煤煙噴出による気候変動で、作物、海洋漁業、家畜の生産が減少し、世界の食糧難と飢饉が発生する」を全文仮訳!!(その5・最終回)

■IWJ検証レポート!「米国が狙った独露間の天然ガスパイプラインノルドストリームの阻止!! その3」~2004年オレンジ革命から2006年のウクライナへのガス供給停止事件へ、本村真澄氏「ロシアはエネルギーに関して『政治』から離れて『経済』に専念した」
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■はじめに~2022年、米エネルギー大手がウクライナ紛争とインフレと賃金抑制でぼろもうけ! エクソンモービル、シェブロンなどの年間利益が過去最高を更新! ウクライナ紛争は、米国国家と米エネルギー大手にとって「金のなる木」に他ならない!「自由・民主主義対専制主義の戦い」とは、この実態を隠すための虚飾のキャンペーン!

 おはようございます。IWJ編集部です。

 本日、2月4日は立春です。

 世界も日本も「春」には程遠い状況が続いています。

 NATO諸国も日本も、中露との直接戦争を想定した経済・社会体制へと急速に変質させられつつあります。

 そんな中、我が世の春を謳歌している人々がいます。

 米国のエネルギー業界です。

 2月2日付『ワールド・ソーシャリスト・ウェブサイト』(以下、WSWS)は、「価格のつり上げで米エネルギー大手が過去最高益」という記事を配信しました。

※Price-gouging drives record profits at US energy giants(World Socialist Web Site、2023年2月2日)
https://www.wsws.org/en/articles/2023/02/02/hxip-f02.html

 この記事は、米エネルギー大企業のエクソンモービルとシェブロンが、2022年の年間利益が過去最高益になったと次のように報じています。

 「米国の巨大エネルギー企業であるエクソンモービルは、火曜日(1月31日)、557億ドル(約7兆円)の年間利益を計上した。これは、米国のエネルギー企業としては過去最大の規模である。

 エクソンモービルの利益は、過去最高だった2008年の450億ドル(約5兆8000億円)を100億ドルも上回り、資本利益率(「利益/資本×100」で投下資本の回収率の指標)は25%という驚異的な数字を出した。エクソンモービルの株価は昨年80%上昇した。これまで、これより高い利益を計上したのは、ハイテク大手のアップルとマイクロソフトだけだ。

 シェブロンは、2022年に355億ドル(約4兆6000億円)という過去最高の利益を計上した。コノコフィリップス、マラソン・ペトロリアムなどの大手エネルギー企業も過去最高、あるいはそれに近い利益を計上する見通しだ」

 この米国エネルギー大手の歴史的な最高益の要因について、『WSWS』は次のように分析しています。

 「この記録的な利益は、石油会社による価格つり上げと、インフレ率を下回るように賃金上昇を抑えるなど、コスト削減の結果である。

 原油価格は、ウクライナでのロシアとのNATO戦争の勃発と、ロシアのエネルギー輸出に対する制裁措置の発動によって、この1年で急騰した」

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■IWJは最大の経済的危機です! 1月の31日間でいただいたご寄付額が確定しました! 第13期6ヶ月間の累積の不足額は、1月末時点で1117万円にまで増えてしまいました! 岩上安身からのIWJの借り入れ総額は、現時点で1600万円になります! 岩上安身の私財には限界があります! このままでは、皆さまのご支持・応援、会費、そしてご寄付・カンパによるご支援がなければ、活動が立ち行かなくなります。米国が自らの覇権維持のために世界の緊張を高める「新たな戦争前夜」にあって、偏向メディアにかわって、正確な情報をお届けすべく、IWJは精いっぱい頑張りますので、緊急のご支援のほど、よろしくお願いします!

 おはようございます。IWJ代表の岩上安身です。

 いつもIWJをご支援いただきまして、誠にありがとうございます。

 IWJの第13期も半期の折り返しを過ぎ、この2月で7ヶ月目に入りました。

 第13期が始まった8月から12月末まで、月間目標を下回る月が続き、この5ヶ月間の累積の不足額は970万9900円にまで膨れ上がってしまいました。

 1月の31日間でいただいたご寄付額が確定しました! 197件、243万8900円です。これは、単独月間目標額390万円の63%に相当し、146万1100円の不足となっています。

 第13期6ヶ月の累積の不足額は、現時点で1117万1000円と、1000万円を超えてしまいました!

 2月1日から3日までの3日間でいただいたご寄付は、11件、13万7000円です。これは、単独月間目標額390万円の4%に相当します。

 厳しい経済状況の中、IWJにご寄付をお寄せいただき、誠にありがとうございます。

 皆さまにおかれましても、コロナ禍での経済的な打撃、そしてこのところの物価上昇に悩まされていることとお察しいたします。

 2023年「新たな戦争前夜」を迎えて、私、岩上安身とIWJは、少しでも正確な情報を皆さまにお届けできるように、その結果として、日本が戦争突入という悲劇に見舞われないように、無謀な戦争を断固阻止するために全力で頑張ってゆきたいと思います。

 皆さまにはぜひ、ご支援いただきたく、IWJの存続のために、会員登録と緊急のご寄付・カンパによるご支援をどうぞよろしくお願いしたく存じます。

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店番号 022
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口座番号 472535
口座名 株式会社インディペンデント.ウェブ.ジャーナル

ゆうちょ銀行
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店番 008
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 どうか、ご支援のほど、よろしくお願い申し上げます!

岩上安身


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◆中継番組表◆

**2023.2.4 Sat.**

あくまで予定ですので、変更、中止、追加などがある場合があります。また電波状況によっては、安定した中継ができない場合もございますので、ご了承ください。

【IWJ・エリアCh1・大阪】18:30~「検証 夢洲カジノで大阪はもうかる? ~国際金融専門家 鳥畑与一が語る~」
視聴URL: https://twitcasting.tv/iwj_areach1

 「カジノはいらん住吉の会」主催の講演を中継します。これまでIWJが報じてきた大阪府関連の記事は以下のURLから御覧いただけます。
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/tag/%e5%a4%a7%e9%98%aa%e5%ba%9c

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■米国防総省が「北部から侵入した高高度偵察気球は中国のもの」と推定したが、「撃墜は見送った」と報告! 軍事的な脅威はなく、情報収集能力も低いとも! 中国外交部報道官は「我々は状況について検証中であり、双方が冷静かつ慎重に対処できることを願っている」!「軍事的脅威はない」と米国防総省が判断したこのエピソードを世界の大メディアが一斉に報じ、「中国の脅威」を煽る!『日本経済新聞』は「米中対立の新たな火種」とまで煽ったが、こうしたメディアの「空気づくり」が、日本の国益になるのか!?

 「米国防総省は2日、中国が米大陸上空で高高度偵察気球を飛行させている疑いがあるとして、追跡を続けていることを明らかにした」と、『CNN』(3日)が報じました。

 『CNN』によると、国防総省のパトリック・ライダー報道官は、「問題の気球は数日前、北部から米大陸上空に侵入した」、「この高高度偵察気球が中国のものであることを確信している」、「こうした活動はバイデン政権以前から、過去数年間にわたって観測されていた」と述べました。

 気球は、西部モンタナ州にあるアメリカ軍のICBM=大陸間弾道ミサイルの発射施設が点在する上空を飛行したということです。

 ライダー報道官は、気球は「多数の機密性の高い場所」の上空を飛行しているが、重大な情報を収集されるリスクはないと説明しています。

 ライダー報道官は、「気球は現在、民間の航空機よりはるかに高い高度で飛行しており、地上の人に対する軍事的、物理的な脅威にはならない」ため、「米軍は気球の撃墜を見送った」と述べています。

 『CNN』は撃墜を見送った背景について、「地上に残骸が落下して人々の安全や安心にリスクを生じさせる恐れがある」というマーク・ミリー統合参謀本部議長など軍上層部の「強い勧告」を受けたと報じています。

※中国の偵察気球か 米本土上空を飛行、撃墜は見送り 米国防総省(CNN、2023年2月3日)
https://www.cnn.co.jp/usa/35199534.html

 『ウォール・ストリート・ジャーナル』(3日)は、気球を撃ち落とすよう指示を出したのは、バイデン大統領だと報じています。

※中国の偵察気球、米本土上空を飛行 政府が追跡中(ウォール・ストリート・ジャーナル、2023年2月3日)
https://jp.wsj.com/articles/u-s-tracked-suspected-chinese-spy-balloon-over-america-this-week-11675380995

 『朝日新聞』(3日)は、ライダー報道官が「中国が低軌道上の衛星などで収集できる以上の大きな付加価値を生むことはない、というのが現時点での我々の評価だ」と述べた、と報じました。軍事的な脅威とはならない、と判断したというのです。

※スパイ風船?米国の上空に監視用気球 国防総省「中国のものと確信」(朝日新聞、2023年2月3日)
https://digital.asahi.com/articles/ASR232QY4R23UHBI00F.html

 『テレ東ビズ』は、「米上空に中国の「偵察気球」と題して、YouTubeで気球の映像を公開しています。

 米国は、中国に大使館ルートで「事態を深刻に受け止めている」と伝えた、ということです。

※米上空に中国の「偵察気球」(テレ東ビズ、2023年2月3日)
https://www.youtube.com/watch?v=1NMmYaO0ifc

 ライダー報道官は「この高高度偵察気球が中国のものであることを確信」した根拠について、具体的な説明をしてません。仮に、中国のものであったとしても、情報収集力に限界があって、軍事的な脅威とはならないとも述べています。今、改めて大騒ぎして取り上げるような緊急性や事の重大性があるとは思えません。

 しかし、この話を、西側メディアは一斉に大きく報じました。IWJがざっと確認しただけでも、上記の『CNN』と『ウォール・ストリート・ジャーナル』のほか、『ロイター』、『ニューヨークタイムズ』、『ワシントン・ポスト』、『ブルームバーグ』、『BBC』、『ル・モンド』など錚々たる西側メディアが大々的に取り上げています。

 日本のメディアも上記の『朝日新聞』のほか、『日本経済新聞』、『読売新聞』、『産経新聞』、『時事通信』、『NHK』などメディア総出で報じています。

 中国外交部の毛寧報道官は、3日の記者会見で、『CNN』の記者から「中国のものと思われる高高度偵察用気球」が米本土上空を飛行しているについて問われ、「事実が明らかでない段階で憶測したり大げさに取り上げたりすべきでない」と述べました。

※米上空の偵察気球巡る問題、憶測控えるべき=中国外務省(ロイター、2023年2月3日)
https://jp.reuters.com/article/china-usa-spying-idJPL6N34J05A?il=0

CNN記者「国防総省の当局者は、ここ数日、中国からのものと思われる高高度偵察気球を注意深く監視していると述べた。広報担当者は、関連する状況を確認しているか? これについて何かコメントはあるか? この事件の公開は、(5日以降に予定されている)アントニー・ブリンケン米国務長官の中国訪問、またはその旅程に影響を与えるだろうか? ブリンケン首相と中国指導者との会談に影響はあるだろうか?」

毛寧報道官「私は、関連報道をみており、中国側は状況を確認している。ブリンケン国務長官の訪中について、現時点で発表することは何もない」

CNN記者「もうひとつの関連質問は、米軍が、中国からの高高度偵察気球が米国空域に出現したのは初めてではないと述べたことについて。彼らは、さまざまなチャンネルを通じて中国とのコミュニケーションを維持することを望むと、繰り返し述べている。しかし、ペロシの台湾訪問後、中国は両軍間の交流と通信を断ち切った。この事件は、両軍間の交流を再開することの重要性と緊急性を反映しているのか? 担当者としてコメントは?」

毛寧報道官「中国は責任ある国であり、常に国際法を厳守しており、主権国の領土や空域を侵害する意図はない。先ほど申し上げたように、我々は状況について検証中であり、双方が冷静かつ慎重に対処できることを願っている」

※2023年2月3日、外交部・毛寧報道官定例記者会見(中国外交部、2023年2月3日)
https://www.fmprc.gov.cn/fyrbt_673021/202302/t20230203_11019334.shtml

 毛報道官の発言を「はぐらかし」と受け取る人々は少なくないと思われます。とはいえ、1)中国が意図的に、2)米国の軍事基地を偵察するために、3)飛ばした気球である、というどの1点を取っても、何も具体的なことは明らかではない段階であるということは、確認しておかなければなりません。

 もちろん、先述した通り、この気球が中国のものであり、軍事情報を求めて偵察していた可能性はあります。しかし、仮にそうだとしても、軍事的な脅威はなく、情報収集能力も低いと、すでに、米国防総省自身が冷静に分析し、その結果としての評価と「撃墜しない」という判断をくだしていることを忘れてはなりません。

 にもかかわらず、『日本経済新聞』は3日、「軍事施設の偵察を試みた可能性があり、米軍の情報収集能力を試したとの見方もある。ブリンケン米国務長官の中国訪問を控え、米中対立の新たな火種になりかねない」と踏み込んだ独自分析を出しました。

 現在明らかになっている情報を確認する限り、「米中対立の新たな火種になりかねない」とまで言い切る根拠は見出せません。むしろ、「軍事的脅威ではない」と米国防総省が判断した気球を、「米中対立の新たな火種」とするべく、空気を吹き込んでいるのは、『日経』のようなマスコミの過剰な煽りではないでしょうか!? 一方で、後述しますが、アントニー・ブリンケン米国務長官は、気球騒動を踏まえ、この週末に予定されていた中国訪問を延期することを決定しました。この報道は、騒ぎ立てたい米国国務省がメディアにリークしたものなのでしょうか? 続報を引き続き注視する必要があります。

※ブリンケン米国務長官、中国訪問を延期 偵察気球飛来で(日本経済新聞、2023年2月4日)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN03D0C0T00C23A2000000/

 米中対立を煽ることは、まったく日本の国益にはなりません。日本が米中の対立に巻き込まれれば、「国として機能できないほど」ボロボロになると、米国のシンクタンクであるランド研究所が堂々と述べているのです。日本を代表するメディアが米中双方のエスカレートを煽り立てるような無責任な論説を出して、世論をどこへ誘導しているのでしょうか?

※「中国の偵察気球、米本土の軍事施設対象か 対立の火種に」(日経、2023年2月3日)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN033LI0T00C23A2000000/

 米国のメディア操作は、ウクライナ紛争でも明白です。ロシアよりもずっと「手強い」中国の脅威を煽り立てるような情報を出し、日本をはじめとする世界各国を米中対立に巻き込んでいくことでしょう。それは、ウクライナ紛争におけるメディア操作の比ではないはずです。だからこそ、日本のメディアは、米国に忖度して、米中対立のエスカレーションのお先棒をかつぐのではなく、対立を回避する役割を果たすべきです。何よりそれは、日本人の生存がかかっています。

 中国外交部は3日夜、気球(飛行船)は中国製であることを認めました。

 中国外交部によると、懸案の気球は「主に気象学を目的とした研究に使用される民間飛行船」です。中国外交部は以下のように発表しました。

 「(この気球は)自己操舵能力が制限されていたため、偏西風の影響を受けて、計画されたコースから大きく逸脱した。中国側は、飛行船が不可抗力により意図せず、米国領空に侵入したことを遺憾に思う。中国側は引き続き米国側と連絡を取り合い、この不可抗力による不測の事態に適切に対処していく」

 この中国側の説明が、実は軍事偵察を目的としていて、今回、ブリンケン国務長官の訪中会談のタイミングで大騒ぎとなったので、「民間飛行船」という弁明を思いついたのではないか、という疑いも否定はしきれません。

 しかし、それにしてもです。

 「米中対立の新しい火種」とまで大騒ぎするほどのトピックだったのでしょうか。「大山鳴動してネズミ一匹」ならぬ、「迷子になった気象観測気球1個」ではないでしょうか。

※Foreign Ministry Spokesperson’s Remarks on the Unintended Entry of a Chinese Unmanned Airship into US Airspace Due to Force Majeure(中国外交部、2023年2月3日)
https://www.fmprc.gov.cn/eng/xwfw_665399/s2510_665401/202302/t20230203_11019484.html

 アントニー・ブリンケン米国務長官は、気球騒動を踏まえ、この週末に予定されていた中国訪問を延期することを決定したと、米当局者が明らかにしました。『ブルームバーグ』が、日本時間3日深夜に報じました。

 米国務長官による北京訪問は、2018年以来、5年ぶりの訪問です。『ブルームバーグ』は「ブリンケン氏の訪中は、2018年以来最も重要な米国の中国訪問となる予定だった。バイデン政権にとって、これは中国のライバル関係が悪化しないようにするための努力の一環だった」と報じています。

 しかし、『ブルームバーグ』によれば、「中国の気球は明らかに米国の主権を侵害しており、米国は計画された旅行の条件が今のところ適切ではないと判断した」と、国務省高官は3日、記者団に語りました。米国務省は、「関係悪化回避の努力」どころか、「主権の侵害」だと、関係を悪化させる姿勢です。

※US to Postpone Blinken’s Visit to China Over Its Spy Balloon(Bloomberg、2023年2月3日)
https://www.bloomberg.com/news/articles/2023-02-03/us-to-postpone-blinken-s-visit-to-china-over-its-spy-balloon?srnd=politics-vp

 冒頭の『CNN』の記事によれば「こうした活動はバイデン政権以前から、過去数年間にわたって観測されていた」とされています。

 なぜ、1年も前から予定されていたブリンケン国務長官の訪中前日になって、突然、数年前から米政府に観測されていたのに、「放置」されていた「中国のスパイバルーン」が急に持ち出され、問題視され、主要マスメディアに拡散されたのでしょうか。

 米政府の当局者が『気球』をメディアにリークし、それに呼応してメディアが煽り立て、結果、ブリンケン訪中が延期になりました。米中の緊張緩和ではなく、対立激化への、米国務省「背広組」の思惑と見られます。

 このようにして戦争は始まるのです。日本は、米中核戦争に巻き込まれれば、一億の国民が餓死します。なんとしても、それを回避しなくてはなりません。

■米ラトガース大が学術誌『Nature Food』に掲載した研究発表で、米露全面核戦争の「核の冬」で2年以内に世界の50億人が飢餓に直面と分析! 日本では1億2000万人以上、ほぼすべての人口が餓死!! IWJはこの研究発表「核戦争の煤煙噴出による気候変動で、作物、海洋漁業、家畜の生産が減少し、世界の食糧難と飢饉が発生する」を全文仮訳!!(その5・最終回)

 昨年8月15日付けの査読付き月刊学術雑誌『Nature Food』に、米ラトガース大学環境生物科学部のリリ・シア(Lili Xia)助教授らによって、核戦争によって農作物が死滅し、飢餓の蔓延で50億人が死の淵に立たされる可能性があるという研究発表が掲載されました。

※Global food insecurity and famine from reduced crop, marine fishery and livestock production due to climate disruption from nuclear war soot injection(Nature Food、2022年8月15日)
https://www.nature.com/articles/s43016-022-00573-0

 IWJはこの研究発表の全文を仮訳し、この日刊IWJガイドで連載しています。本日は、その最終回です。

※米ラトガース大が学術誌『Nature Food』に掲載した研究発表で、米露全面核戦争の「核の冬」で2年以内に世界の50億人が飢餓に直面と分析! 日本では1億2000万人以上、ほぼすべての人口が餓死!! IWJはこの研究発表「核戦争の煤煙噴出による気候変動で、作物、海洋漁業、家畜の生産が減少し、世界の食糧難と飢饉が発生する」を全文仮訳!!(その3)(日刊IWJガイド、2023年2月1日)
https://iwj.co.jp/info/whatsnew/guide/51821#idx-4

※米ラトガース大が学術誌『Nature Food』に掲載した研究発表で、米露全面核戦争の「核の冬」で2年以内に世界の50億人が飢餓に直面と分析! 日本では1億2000万人以上、ほぼすべての人口が餓死!! IWJはこの研究発表「核戦争の煤煙噴出による気候変動で、作物、海洋漁業、家畜の生産が減少し、世界の食糧難と飢饉が発生する」を全文仮訳!!(その4)(日刊IWJガイド、2023年2月3日)
https://iwj.co.jp/info/whatsnew/guide/51836#idx-4

(第4回からの続き)

・カロリー要件

 『家畜』『部分家畜』『家畜なし』の答えで算出された利用可能カロリーで支えられる人口の割合は、食料安全保障に対するマクロレベルの影響を示している(※図4)。

 現在の人間の利用可能なカロリーの平均供給量は、食料摂取量と食料廃棄量を含めて、1人当たり1日2855kcalである(※図3)。

(※図3)Fig. 3: Global average human diet and protein composition and usage of crop-based products.
https://www.nature.com/articles/s43016-022-00573-0/figures/3

 必要なカロリーは、年齢、性別、体格、気候、活動レベル、基礎疾患によって大きく異なる。

 (※27)は、国家レベルのカロリー利用可能量、カロリー摂取量、植物性製品、家畜、魚からのカロリーを推定し、さらに、現在の身体活動が定常的でカロリー摂取量が基礎代謝量より低い低体重集団のカロリー摂取量を計算している。現在の身体活動を持つ低体重層の摂取カロリーは、生命維持と定期的な労働活動に必要なものと仮定している。

(※27)Bodirsky, B. et al. mrcommons: MadRat Commons Input Data Library. R version 1.9.3(2022年)
https://github.com/pik-piam/mrcommons

・不確実性

 この作業は、1つの地球システムモデルで行われ、煤煙噴出量が5Tgを超えるすべてのケースで組み合わせメンバーは1人、作物モデルは1人、漁業モデルは1人だけである。

 5Tgのケースとコントロールでは、3つの組み合わせメンバーがいるが、組み合わせ平均値のみが使用されている。5Tgのケースの3つの組み合わせメンバーは非常に似ている(※補足図8)ので、大きな威力の場合の気候変動は、シグナル(信号)よりもずっと小さいと思われる。

(※補足表1~9、および補足図1~8)
https://static-content.springer.com/esm/art%3A10.1038%2Fs43016-022-00573-0/MediaObjects/43016_2022_573_MOESM1_ESM.pdf

 CESMは、最先端の気候モデルであり、核戦争の影響については、5Tg(※49、※50)、150Tg(※9)のケースで、他のモデルによるシミュレーションとほぼ同じ結果が得られている。

(※49)Multidecadal global cooling and unprecedented ozone loss following a regional nuclear conflict(ADVANCING EARTH AND SPACE SCIENCE、2014年2月7日)
https://agupubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/2013EF000205

(※50)Climate and chemistry effects of a regional scale nuclear conflict(European Geosciences Union、2013年10月2日)
https://acp.copernicus.org/articles/13/9713/2013/

(※9)Nuclear Winter Responses to Nuclear War Between the United States and Russia in the Whole Atmosphere Community Climate Model Version 4 and the Goddard Institute for Space Studies ModelE(ADVANCING EARTH AND SPACE SCIENCE、2019年7月23日)
https://agupubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1029/2019JD030509

 しかし、火災の排出ガスに含まれる有機炭素を含めたり、エアロゾルの成長や周辺環境との相互作用をよりよく再現するなど、気候モデルのさらなる発展が、核戦争後の気候予測を向上させる可能性がある。

 CLM5cropと、BOATSも最新モデルであるが、今後、異なるモデルでのシミュレーションが有用であることは間違いない。CLM5cropは、核戦争に対する反応において、他の作物モデルとよく比較されている(※14、※補足図2)。

(※14)A regional nuclear conflict would compromise global food security(PNAS、2020年3月16日)
https://www.pnas.org/doi/full/10.1073/pnas.1919049117

 むしろ、CLM5cropは、核戦争に対する作物の反応を過小評価している(※図2、※補足図2)。

(※図2)Fig. 2: Calorie production changes for crops and fish, and accumulated carbon change for grasses following different nuclear war soot injections.
https://www.nature.com/articles/s43016-022-00573-0/figures/2

 ほとんどの作物モデルは、現在または暖かい気候を対象として開発されているため、突然の寒冷化に対して作物がどのように反応するかを理解するためには、さらなる研究が必要である。

 私たちの研究は、核戦争後の国家の食糧安全保障を明らかにする第一歩だが、農作業のやり方が異なるため、国ごとに同じ強制力に対して作物が一様に反応するとは限らない。

 また、この問題を十分に検討するためには、マルチモデル評価が不可欠であり、地表のオゾン、紫外線、淡水の利用などから受ける影響を理解するためには、作物モデルの開発が重要である。

 さらに、核戦争による局地的な放射能汚染や気候変動は、昆虫界に影響を与えるだろう。害虫、受粉媒介者、その他の昆虫への影響は不明であり、それ故、さらなる研究が必要である。

 本研究におけるいくつかの仮定は、今後の研究において検討される可能性がある。

 例えば、国際貿易をオフにするために、国内供給に対する現地生産の比率を国レベルで適用している。また、核戦争後の国民のカロリー摂取量を計算するために、食料が各国に均等に分配されると仮定している。

 核戦争後の人間のカロリー摂取量に対する貿易と地域的な食糧分配システムの寄与をさらに理解するためには、経済モデルが必要であろう。

 この研究では、(※27)の摂取カロリーを使用し、収穫による食品ロスは考慮していない。もし、人間の行動や食品産業が大きく変化するようなことがあれば、結論に影響を与えるだろう。

・レポートの概要

 研究デザインの詳細については、この記事にリンクされている「Nature Research Reporting Summary」を御覧いただきたい」

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 ここまでが、『Nature Food』に掲載された研究発表の本文の全文です。

 本文に付された補足表(PDF)には、S4からS9まで6通り、本文に示された条件を変えた上での「核戦争シミュレーションの2年後に飢餓で死亡する人の数」が、世界中の国別で示されています。

 そして、S4からS9のそれぞれの表すべてに、2010年時点の人口と、インド・パキスタンの核戦争による5段階の煤煙噴出量(5Tg、16Tg、27Tg、37Tg、47Tg)それぞれの場合の餓死者の数、米露全面核戦争(150Tg)での餓死者数と、家庭ごみの半分が食料消費に加えられた場合(150Tg+hw)、家庭ごみのすべてが食料消費に加えられた場合(150Tg+tw)の3パターンの餓死者数が表されています。

(※補足表1~9、および補足図1~8)
https://static-content.springer.com/esm/art%3A10.1038%2Fs43016-022-00573-0/MediaObjects/43016_2022_573_MOESM1_ESM.pdf

 以下に、各条件のもとでの日本の餓死者の数と、同じ条件での世界全体の餓死者の数を抜き出しておきます。2010年時点での日本の人口は、1億2740万人、世界の総人口は67億10万人です。

<Table S4 畜産は継続され、貿易がないと仮定した場合>

・日本
5Tg 7690万人
16Tg 9970万人
27Tg 1億810万人
37Tg 1億1520万人
47Tg 1億1860万人
150Tg 1億2450万人
150Tg+hw 1億2430万人(+hwは、家庭ごみの半分が家庭消費に加えられた場合)
150Tg+tw 1億2400万人(+twは、家庭ごみのすべてが家庭消費に加えられた場合)

・世界全体
5Tg 4億920万人
16Tg 12億4930万人
27Tg 17億9800万人
37Tg 23億6380万人
47Tg 28億1200万人
150Tg 54億4190万人
150Tg+hw 53億1820万人
150Tg+tw 51億9570万人

<Table S5 畜産用穀物飼料の50%が人間消費に、50%が家畜の飼育に使われると仮定。貿易がないと仮定した場合>

・日本
5Tg 7150万人
16Tg 9820万人
27Tg 1億850万人
37Tg 1億1650万人
47Tg 1億2000万人
150Tg 1億2520万人
150Tg+hw 1億2500万人
150Tg+tw 1億2480万人

・世界全体
5Tg 2億5470万人
16Tg 9億2560万人
27Tg 14億2610万人
37Tg 20億8090万人
47Tg 25億1220万人
150Tg 53億4080万人
150Tg+hw 52億510万人
150Tg+tw 50億8120万人

<Table S6 1年目に畜産物を殺し、畜産物用穀物飼料を50%使用する。貿易がないと仮定した場合>

・日本
5Tg 7920万人
16Tg 1億280万人
27Tg 1億1220万人
37Tg 1億1910万人
47Tg 1億2190万人
150Tg 1億2560万人
150Tg+hw 1億2550万人
150Tg+tw 1億2530万人

・世界全体
5Tg 3億3540万人
16Tg 11億2240万人
27Tg 15億7920万人
37Tg 22億3870万人
47Tg 26億7530万人
150Tg 54億1290万人
150Tg+hw 52億8610万人
150Tg+tw 51億5940万人

<Table S7 畜産は継続され、すべての国で貿易が継続されると仮定した場合>

・日本
5Tg 0人
16Tg 5560万人
27Tg 8120万人
37Tg 1億110万人
47Tg 1億980万人
150Tg 1億2260万人
150Tg+hw 1億2220万人
150Tg+tw 1億2170万人

・世界全体
5Tg 1710万人
16Tg 9億5360万人
27Tg 15億2160万人
37Tg 21億5580万人
47Tg 26億8440万人
150Tg 54億2270万人
150Tg+hw 52億9260万人
150Tg+tw 51億6350万人

<Table S8 畜産用穀物飼料の50%が人間の消費に使われ、畜産用穀物飼料の50%が家畜の飼育に使われると仮定した場合。すべての国で貿易が継続されると仮定した場合>

・日本
5Tg 0人
16Tg 3930万人
27Tg 7360万人
37Tg 9910万人
47Tg 1億980万人
150Tg 1億2360万人
150Tg+hw 1億2320万人
150Tg+tw 1億2290万人

・世界全体
5Tg 420万人
16Tg 6億2640万人
27Tg 11億6220万人
37Tg 18億6120万人
47Tg 23億5250万人
150Tg 53億2120万人
150Tg+hw 51億8220万人
150Tg+tw 50億4480万人

<Table S9 1年目に家畜を殺し、家畜の穀物飼料の50%を人間の消費に回すと仮定した場合。すべての国で貿易が継続されると仮定した場合>

・日本
5Tg 0人
16Tg 4540万人
27Tg 7850万人
37Tg 1億250万人
47Tg 1億1230万人
150Tg 1億2410万人
150Tg+hw 1億2390万人
150Tg+tw 1億2360万人

・世界全体
5Tg 950万人
16Tg 7億6990万人
27Tg 13億1850万人
37Tg 20億1420万人
47Tg 25億1490万人
150Tg 54億50万人
150Tg+hw 52億7130万人
150Tg+tw 51億4340万人

■IWJ検証レポート!「米国が狙った独露間の天然ガスパイプラインノルドストリームの阻止!! その3」~2004年オレンジ革命から2006年のウクライナへのガス供給停止事件へ、本村真澄氏「ロシアはエネルギーに関して『政治』から離れて『経済』に専念した」

 独露を結ぶ天然ガスパイプライン「ノルドストリーム1、2」に対し、米国は「エネルギー安全保障上の脅威」だとし、建設中から繰り返し制裁を加えてきました。ウクライナ侵攻から7ヶ月目となった昨年2022年9月末、ロシア側が東部南部4州で住民投票を強行する最中に、バルト海底を通る「ノルドストリーム1、2」が何者かによって攻撃を受け、爆破されました。

 1991年のウクライナ独立以来、ウクライナ領を通過する天然ガスのパイプラインは、ウクライナがガス代の支払いを滞らせたり、組織的にガスを抜き取り転売する「泥棒」に悩まされたりと、常にロシアとウクライナの間でトラブルが絶えませんでした。「ノルドストリーム1、2」は、そうしたトラブルを回避するため、ドイツとロシアを連結し、ウクライナを通過しない「ウクライナ外し」のパイプラインです。

 IWJは、ウクライナ紛争の背景にある「ノルドストリーム1、2」についての検証レポートをこれまで2本掲載しています。「その3」となる本稿では、「ノルドストリーム1」建設の契機となった、2006年のロシアによるウクライナへのガス供給停止事件を取り上げます。

 この事件において西側メディアはこぞって、2004年のオレンジ革命によって誕生した「親欧米的なユシチェンコ政権に対するロシアによる制裁」であるとして批判してきました。現在のゼレンスキー政権に対して、欧米メディアが肩入れするのもその時以来、ずっと継続している傾向です。そこで今日は今につながる問題として、2006年の時のガス供給停止問題を取り上げ、これが親欧米政権を揺さぶる意図を持ったロシアによる政治的な制裁だったのかどうかを検証します。

 検証レポートの第1回、第2回は以下より御覧ください。

※IWJ検証レポート!「米国が狙った独露間の天然ガスパイプラインノルドストリームの阻止!! その1」~ウクライナ危機の背景には、ユーラシアに安定と繁栄をもたらす欧露間の天然ガスパイプラインでの結びつきを嫌い、仲を引き裂く米国の戦略が! 米国の狙い通り、ドイツとロシアを結ぶ新パイプライン「ノルドストリーム2」の認可が停止に! 2022.4.27
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/505188

※IWJ検証レポート!「米国が狙った独露間の天然ガスパイプラインノルドストリームの阻止!! その2」~米国ネオコン勢が地政学を持ち出し、経済合理性を無視して欧露の関係を分断するために介入! 2022.7.6
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/508187

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【2006年「ウクライナガス供給途絶問題」はロシア産天然ガスの国際標準価格へ向けての値上げに始まった】

 2004年の「オレンジ革命」(※IWJ注)によって、2005年1月にウクライナで初めての親欧米・反露のユシチェンコ政権が誕生しました。

(※IWJ編集部注)オレンジ革命:2004年のウクライナ大統領選挙で、現職で親ロシア的なヤヌコーヴィチ氏が当選した結果に対し、選挙不正を訴え、親欧米的なユシチェンコ氏を大統領に推す抗議運動。再投票が行われ、ユシチェンコ氏が逆転勝利した。オレンジ色のリボンやマフラーを身につけるなど、支持者らは、オレンジ色をシンボルカラーとし、西側のメディアでも大きく取り上げられた。この「オレンジ革命」と呼ばれた運動は、陰に陽に米国からのサポートを受け、一連の「民主革命」と同様、「カラー革命」のひとつに数えられる。

 ユシチェンコ政権誕生の翌年2005年に、ロシアはウクライナに対し、旧ソ連国のよしみで国際価格よりもずっと安価に供給してきた天然ガスの値上げを求めました。

 西側諸国の政治家達は、ウクライナで誕生した親欧米政権に対する政治的制裁の意味あいをもつ値上げ要請であり、エネルギーの政治利用だとして、一気にロシア批判へと傾きました。

 実は、レーガン政権期から、米国は、ロシアと欧州を結ぶ天然ガスパイプラインを「エネルギー安全保障上の脅威」とみなして批判するようになっていました。言いかえると、西欧諸国は、あの厳しい東西分断の冷戦時代を、ソ連(ロシア)の天然ガスや石油等のエネルギー資源の供給を受け入れていたのです。

 オレンジ革命当時、米国の大統領は、ジョージ・W・ブッシュ(パパブッシュ)でした。

 独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の本村真澄氏によれば、チェイニー米副大統領(当時)は、2006年5月、バルト3国の一つであるリトアニアで、「石油とガスを恫喝や強請の道具に使うことは許されない」とロシアを批判する演説を行なっています。

※ロシアの石油ガスパイプラインシステムの発展と戦略(本村真澄、土木学会論文集D3、vol.67、2011)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscejipm/67/3/67_3_339/_article/-char/ja/

 しかし、本村氏は、ロシアによる天然ガス値上げは、原油価格の高騰、ロシア国内のインフレ、世界貿易機関(WTO)が求めるガス価格の国際標準化に従ったものであり、ウクライナの親欧米政権に対する制裁とはいえない、と評価しています。

 本村氏は、欧州産業界におけるロシアは「信頼のおけるエネルギー供給者」であったと、指摘しています。

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IWJ編集部(岩上安身、六反田千恵、尾内達也、浜本信貴、前田啓、中村尚貴)

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