「TPP交渉差止・違憲訴訟の会」や「日本の種子を守る会」で活動する元農林水産相・山田正彦弁護士が代表世話人をつとめる「デトックス・プロジェクト・ジャパン」が、「日本人の身体に農薬がどのくらい蓄積されているのか、私たちがどのくらい農薬を摂取しているのか、を測定・可視化」するために、フランスから検査キットを30セット取り寄せた。
このキットは、フランスの研究機関「クズ・サイエンス」のもので、頭髪を長さ3センチ、6グラム採取してフランスに送り、グリホサート、ネオニコチノイド、有機リン系などの農薬を検査するというもの。2週間から1か月ほどで結果が送られてくるということだ。
▲仏クズ・サイエンス社の検査キット(2019年3月4日、IWJ撮影)
2019年3月4日、衆議院第二議員会館で、超党派の「食の安全を考える議員連盟(仮称)」の国会議員が、「デトックス・プロジェクト・ジャパン」の予備調査として、頭髪を提供する「断髪式」が行われた。
▲国会議員の頭髪を集める「断髪式」が行われた(2019年3月4日、IWJ撮影)
「断髪式」には立憲民主党の川田龍平氏、大河原雅子氏、阿部知子氏、国民民主党の小宮山泰子氏、日本共産党の紙智子氏、社民党の福島瑞穂氏が参加したほか、自由党の山本太郎氏があらかじめ頭髪を提供していた。
▲「食の安全を考える議員連盟(仮称)」と「デトックス・プロジェクト・ジャパン」のスタッフ。右端が山田正彦元農水相(2019年3月4日、IWJ撮影)
- 日時 2019年3月4日(月)12:00~13:00
- 場所 衆議院第二議員会館(東京都千代田区)
モンサントの除草剤「ラウンドアップ」で発がん! 米国でモンサントに約320億円の損害賠償を命じる評決!
農薬大手の多国籍企業モンサントの除草剤「ラウンドアップ」を使用したことで悪性リンパ腫を発症したとして、米国カリフォルニア在住のドウェイン・ジョンソンさんがモンサントを提訴した裁判で、カリフォルニア州サンフランシスコの陪審は2018年8月10日、モンサントに2億8900万ドル(約320億円)の損害賠償の支払いを命じた。
学校の校庭整備の仕事をしていたジョンソンさんは、ラウンドアップを年間20回から30回のペースで使用し、2012年から2回ほど作業中にラウンドアップを浴びてしまったとのこと。その後、2014年に悪性リンパ腫と診断された。
ラウンドアップの有効成分は「グリホサート」と呼ばれている。モンサント側はグリホサートに発がん性がないことを訴えているが、WHO(世界保健機関)のIARC(国際がん研究機関)は、発がん性がある可能性を指摘している。また、2019年2月15日のCNNの報道によると、グリホサートにさらされると、がんのリスクが41%増大するという研究結果を、ワシントン大学の研究チームが発表したとのこと。
世界が除草剤「ラウンドアップ」の主成分「グリホサート」を禁止する中、日本は400倍の規制緩和!
山田正彦元農水相は、2月19日にフェイスブックで次のような投稿をした。
「このニュースは日本では何故か報道されませんでしたが、世界ではトップニュースとして連日報道され続けています。
オランダやフランス等は即、グリホサートの使用を禁止、ドイツ、イタリア等世界33か国が2〜3年後には禁止することを表明しました。
ところが、日本は1年程前にグリホサート残留農薬基準をものによっては400倍に緩和、小麦では6倍の30 ppmまで緩和したのです」
日本の大手3社の小麦からグリホサートが検出!「国が安全性確認しているので問題ない」!?
小麦の残留グリホサートについては、『女性自身』が1月15日発売の1月29日号に「大手3社小麦粉から『発がん性』成分が!! 企業名スクープ公開!!」という記事に、「農民連食品分析センター」が分析した、日清フーズ、日本製粉、昭和産業の大手3社の小麦粉のグリホサートの検出結果の表を掲載した。検査の結果、3社の全粒粉や強力粉から、0.09から1.1ppmのグリホサートが検出された。
輸入小麦は収穫の手間を省くため除草剤で作物を枯らせている!?
グリホサートは農作業の省力化のため、グリホサートをまいても枯れないように遺伝子を組み換えた大豆やとうもろこしなどの除草剤として使われている。だが、そもそも、米国では小麦の遺伝子組み換えは認められていない。
ではなぜ、輸入小麦からグリホサートが検出されたのか?
<ここから特別公開中>
「日本の種子を守る会」事務局アドバイザーで、「デトックス・プロジェクト・ジャパン」発起人の一人でもある印鑰(いんやく)智哉氏は、IWJの取材に「米国、カナダ、オーストラリアでは、収穫の際に、グリホサートをまいて小麦を枯らせ、収穫や乾燥の手間を省いている」と明かした。
▲印鑰智哉氏(2019年3月4日、IWJ撮影)
健康に関心のある消費者が、小麦の表皮、胚芽、胚乳をすべて粉にした全粒粉のパンを選んだ場合、そのパンの原料が外国産小麦であれば、グリホサートを摂取する危険性がより高くなってしまうということだ。印鑰氏は「もし全粒粉のものを食べたいなら、有機農業のものを選ぶしかない」という。
ppmの1000分の1でも人体に影響のあるグリホサート! 印鑰氏は「日本のグリホサートの規制基準自体に根拠がない」と批判!
印鑰氏は、「日本のグリホサートの規制基準自体に根拠がない、安全とは言い難い」と批判する。「グリホサートは『ビリオン』単位のほんの微量でも、妊婦の体に入ると早産になり、男性の生殖機能に影響を与えることが米国の大学で確認されています」
「ppm」とは「パーツ・パー・ミリオン」、つまり「100万分の1」の意味である。「パーツ・パー・ビリオン」は、10億分の1で「ppb」と表記する。「ppm」のさらに1000分の1である。それほど微量でも、人体に深刻な影響を及ぼすということだ。
さらに現在、米国ではグリホサートに耐性のある雑草への対策として、グリホサートより危険な「2,4-D」をグリホサートに混ぜて使い始めている。除草剤「2,4-D」は、モンサント社が「2,4,5-T」という別の除草剤と50:50で混ぜて、枯れ葉剤「エージェント・オレンジ」としてベトナム戦争で使用し、ダイオキシンを発生させたことで知られている。現在日本政府は、グリホサートに続いてその「2,4-D」までも大幅に規制緩和しようとしている。
グリホサートで腸内細菌も死滅! アレルギー症状に苦しむ米国の子どもたち!
グリホサートは腸内の善玉菌も殺してしまう。その結果、善玉菌が生成しているセロトニンやメラトニンなど、重要なホルモンが不足するといった指摘もある。セロトニンはインシュリンを抑制し、感情をコントロールする。また、メラトニンが不足すると睡眠障害を起こす。
米国で遺伝子組み換え食品に反対する市民団体「マムズ・アクロス・アメリカ」の創立者のゼン・ハニーカットさんは、息子さんのアレルギーや自閉症のような症状から食品を疑い、検査したところ、息子さんの尿からヨーロッパの環境保護団体が行った検査の4倍以上のグリホサートが検出された。
食事を有機食品に切り替えたところ、息子さんの症状は改善したという。
ゼン・ハニーカットさんは2018年12月に来日し、「デトックス・プロジェクト・ジャパン」の前身となった「日本の食を変えたい実行委員会」による交流会と学習会をIWJで中継した。ぜひ、以下のURLよりご覧いただきたい。
福島瑞穂議員「日本は規制が甘い。子どもたちにもっと農薬の影響が少なくなるようにしていく必要がある」
EUでは欧州議員が検査し、体内からグリホサートが検出されたことが、農薬規制につながった。「デトックス・プロジェクト・ジャパン」が「食の安全を考える議員連盟」に検査のための頭髪の提供を呼びかけたのは、EUと同様に、議員から農薬を規制することを働きかけてもらうためだ。
▲川田龍平議員(2019年3月4日、IWJ撮影)
議連の呼びかけ人代表である川田龍平議員は、IWJの取材に「検体は多いほうがいい。今後、国会議員にもっと広げていきたい。食べ物の汚染は与野党関係ない。超党派で進めたい」と語った。
また、福島瑞穂議員はIWJの取材に、「政府が残留農薬の基準を一気に緩めたこと、規制が甘いということが問題だ。韓国のソウルでは給食を有機にするという動きもある。子どもたちにもっと農薬の影響が少なくなるようにしていく必要がある」とコメント。その上で「この断髪式を契機に、食の安全の確立が広がっていけばいいと思う」と述べた。
IWJでは「岩上安身による山田正彦氏インタビュー」を3月18日に予定している。
これまでの岩上安身による山田正彦氏インタビューも下記URLより、あわせてご覧いただきたい。