2023年4月12日午後6時30分より、東京都文京区の全労連会館にて、全国労働組合総連合(全労連)の主催、および、首都圏移住労働者ユニオンの共催で、「入管法再提出抗議・廃案を目指す学習会」が開催された。
日本政府は、国連の人権機関から、入管法を「国際人権基準」を満たしたものにするよう、これまで何度も勧告を受けてきた。2022年11月にも、「難民保護法制」の確立や「仮放免中の外国人への就労支援」、「収容期間の上限設定」など、入管制度の全体的改善について勧告を受けている。
3月7日の閣議決定を受け、齋藤健法務大臣は、「日本の入管制度は人権諸条約に違反するものではない」旨の発言をしている。しかし、外国人労働者を支援する諸団体はもとより、日弁連をはじめ、各種の弁護士会、新聞報道などでも、軒並み、法案への反対、そして、法案の出し直しが要求されている。
学習会の冒頭、全労連事務局次長の竹下武氏は、改正案の内容について、「『こんな法案を誰が支持しているのか?』という状況になっている」と述べ、「本日の学習会を、入管の難民認定を国際人権基準に耐えられるものにするための流れを一層大きくしていくための機会としたい」と抱負を述べた。
学習会に参加した日本共産党の本村伸子衆議院議員は、「この日(12日)の法務委員会の理事会の中で、与党から、金曜日(14日)の一般質疑のあとに趣旨説明をさせてくれと提案があった」と述べ、「野党はそれをすぐ飲むわけにはいかない。まず、この間求め続けている、2021年3月に名古屋出入国在留管理局で死亡したスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさんの収容中の監視カメラ映像ビデオの公開が、今後の審議をする上での大前提となる」と述べた。
続いて、ウィシュマ・サンダマリさんの弁護団の一人である髙橋済弁護士が、「入管法問題点と課題」と題した講演を行った。
髙橋弁護士の講演は、入管法(出入国管理及び難民認定法)がどのような法律なのか、という基本から説き起こし、「外国人」、「ビザ」とは何か? なぜ、国は個人を「収容(拘禁)」できるのか? そして、「難民」とはどういった人々なのか? なぜ、彼らを「保護」しなければならないのかについて、本質的な内容であった。
以下、印象的な部分を引用する。
髙橋弁護士「今回の法律っていうのは、難民申請中の人を、その判断が出る前に、危険な国に送り返しちゃうっていうふうにできる法律なんですよね。で、まあ、そういった法律っていうのは韓国でも提案されていて、4年間、野党の抵抗で止まったままだと。で、我々日本は2年前の、2年間止めている。(中略)
今日は、せっかくなので、一つ、考え方というかですね、お話をさせていただきたいのは、『外国人』っていうのは、法律的には国籍で線を引くんですね。で、国籍で線を引くので、日本国籍を持ってるかどうかだけで、外国人と日本人を分けています。
この背後にある、そのルーツであるとか、あるいは、その考え方、
日本食が好きだとか、日本語が喋れるとか、そういったことは一切問わない概念なんですね。これが、なかなか日本社会では、実は、この法律とは離れた『日本人』概念っていうのがネックになってるんですね。
日本人は礼儀が正しくて、日本人は和を尊んでですね、日本人は安全だ、っていう考え方、見えない内なる『差別心』みたいなものが、実は、我々がちっちゃい時から多分培われていて、他方で、外国人っていうだけで、ちょっと近くになると息が詰まるというかですね、ちょっと緊張しちゃうというか。
実は、外国人って、暗に『何するかわかんない人』っていう潜在的な意識みたいなものを、みんな植え付けられていることが多いんですよね。で、そこから解き放って、考えを変えていかないと、なかなか、この入管法の問題っていうのは『見え方』が変わってこないんですよね。(中略)
犯罪をする人はいるんですよ。悪い人と善い人がいるのは、これ、当然なんで。で、それを国籍につける必要はないんです、基本的に。在留資格につける必要もないんです、基本的に。(中略)
これはだから、実は、暗に、我々が気付かないうちに意識してしまっている『外国人だからやったんじゃないか』とか、すぐ国籍に結びつけちゃう、内心。これ、別に恥ずかしいことでも何でもないと思っていて、その内なる差別心っていうのは、世代によっても、地域によっても、誰しも持っているものだと思いますので、私は、大事なのはそれを認識することだと思うんです。
認識して、そこからどういうふうに離れていくかっていうところだと、私は思ってます」
学習会の詳細は、ぜひ全編動画をご視聴いただきたい。