2021年3月に名古屋入管収容中に亡くなられたウィシュマ・サンダマリさんの事件について、「第28回 難民問題に関する議員懇談会 総会」が、2021年8月13日、参議院会館で行われた。また、この懇談会には、ウィシュマさんのご遺族で妹のワヨミさんが参加予定であったが、8月12日に出入国在留管理庁が公開したウィシュマさんの監視カメラ映像の一部を見たことでショックを受けたワヨミさんは、体調不良を理由に欠席した。
その他の出席者は、立憲民主党・石川大我参議院議員、立憲民主党・石橋通宏参議院議員、立憲民主党・近藤昭一衆議院議員、代理人弁護士の指宿昭一弁護士、ウィシュマさんご遺族・ポールニマさんであった。
「難民問題に関する議員懇談会」では、冒頭に出入国在留管理庁調査チームから提出された被収容者死亡事案に関する調査報告書にそって概要説明が行われ、その後質疑応答に移った。
冒頭の概要説明の際に、出入国在留管理庁の丸山氏は、死亡要因について「病死ではあるが、複数の要因が影響した可能性があり、具体的機序の特定は困難」とした上で、「私たちの2名の有識者から、『専門医からの見解は理解でき、死亡解剖からのみでは、死因を判断できない。死亡に影響した可能性のある要因はその他にも、強い代謝性アシドーシス等が考えられる』とのご見解が示されている。調査チームとしても、Aさんの死についても可能な限り調査を尽くしたところではありますが、現在報告した通りでございます」と述べた。
その後、質疑応答では、石橋議員は「入管の対応が適切、適正に行われていれば、ウィシュマさんの命は救われていたという事でよろしいですか?」と問いただした。
丸山氏は石橋議員に対し、「私達の対応と今回の死の因果関係は必ずしも明らかではないところがあるので、石橋さんがおっしゃるような形で回答することは難しい」と返答した。
石橋衆議員は、丸山氏の返答に対し、「それで改善できるわけない」と、強い憤りを示した。
「ここが最大の問題、だから我々はずっと言っている。
今回も結局入管の内部調査ですよ、あなたたちがやって資料集めてあなたたちがまとめたものを、第三者にみせて、どうですか?と言っているだけの話で、これは内部調査ですよ。
それで誰も責任を取らないで、結局因果関係すら、わからないそんな馬鹿な、入管の対応に問題があったからウィシュマさんは命を落とされた。それは認めてくださいよ、それを認めないと先に進まない、それでどうやって改善するのですか、因果関係わかりません、責任もわかりませんでも、改善します、それで改善できるわけない」
また、代理弁護士の指宿氏は、調査報告書にある『午前5時15分頃ウィシュマさんがベッドからバランスを崩して落下したのに対し、ベッドに移動させようとした看守勤務者2名は持ち上げることができず、対応可能な看守が増える午前8時前頃まで、ウィシュマさんに朝まで我慢して毛布を掛けて寝ていてほしい旨を告げ、床で寝かせていた対応を取った』との記載について、以下の質問をした。
「僕はビデオを見ていないが、ビデオを見た遺族から聞いた話だと、何か服をつかんで引っ張っただけで持ち上げようとはしてないってことじゃないですか」
「持ち上げられないわけないでしょ。かなり体格のいい女性の職員と聞きました。あと、車いすとかに乗せたりしているのに、どうして女性二人で、ベッドに上げられないのですか?」
しかし、丸山氏は「私共としては、ビデオの内容を踏まえて2月26日のご指摘の際の事実記載をしている」と返答したのみであった。
この空虚な返答に対し、指宿氏は、
「だから、あなたたちが見ただけじゃ、わからないんだよ。見せなさいよ、遺族が見て違うって言ってるんだよ。せめて代理人には見せろよ、国会議員にも見せろよ。
データでください!!
あなたたちの見方が間違っているという事はみんなに見てもらえばわかるんだよ、おかしいよ!! 」
と、声を荒げて反論した。
ウィシュマさんの死亡事件について、出入国管理局の身内によるお手盛り調査だけで十分に調査を尽くしたと言えるだろうか。調査過程も透明性が十分確保されているとは言えない。日本では2007年からだけでも17人の方が入管収容中に亡くなられている。いつまで経っても改善されない入管のどこに問題があるのかを明らかにし、「改善」を進めるためには、第3者であるNGOや難民問題・人権問題を扱う団体が主体となった調査が必要である。
日本政府は、日本は欧米諸国とともに、自由、平等、基本的人権の尊重、民主主義といった普遍的な価値を共有していると主張している。しかし、助けを求め難民申請をしている人間を強制的に監禁し、虐待して死に至らしめるようなことをしていては、「普遍的な価値を共有している」などとは到底いえない。