IWJ は高市早苗氏の「電磁パルスで敵基地無力化論」について質問。岸防衛相は「中国との戦争はまったく考えていない」とし、安倍前総理の談話を示すも、そこに核保有と電磁パルスへの言及はなし! ~10.1岸信夫 防衛大臣 定例会見 2021.10.1

記事公開日:2021.10.1取材地: テキスト動画
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(取材、文・IWJ編集部)

 2021年10月1日(金)午前11時12分より、東京都新宿区の防衛省庁舎にて、岸信夫防衛大臣の定例会見が行われた。

 冒頭、岸防衛大臣より、9月28日(火)に行われるはずであった前回の定例会見が岸大臣の体調不良により急遽取りやめとなったことへの謝罪があった。

 岸大臣は、「先日は私自身の健康管理の不手際から、まず閣議を始めとする公務の欠席をいたしましたし、皆様との大切なコミュニケーションの場であるこの会見の場をドタキャンすることになりまして、迷惑をお掛けしました。お詫びを申し上げたい」と述べた。

 また、新型コロナウイルス感染症関連の報告として、自衛隊内における感染者数について、前回9月24日に行われた会見での報告以降、27名の隊員が新たに感染し、隊内総感染者は累計で4849名となったこと、隊員のワクチン接種は9月24日までで約22万6千人、全体の86%が1回目の接種済み、約15万6千人、60%に対して2回目の接種が行われたことも報告された。

 その後参加メディア記者との質疑応答が行われ、IWJ は岸防衛相に以下の問いを投げかけた。

IWJ「『中国を標的とした電磁パルスによる敵基地無力化論』を、地上波のテレビで、開陳している政治家がいらっしゃいます」

 その政治家はもちろん高市早苗氏である。

IWJ「具体的には、9月10日のテレビ朝日『ワイドスクランブル』に出演され、中国との戦争を前提に『敵基地を一刻も早く無力化する。これを先にやった方が勝ち』と述べ、ツールとして『強い電磁パルス』を用いる。しかも『向こうからミサイル発射の兆候が見えた場合』に行う、と言われました。つまり中国の先制攻撃のそのさらに先手を取ることを地上波で公言したわけです。

 その無力化論の現実性についておうかがいします。『敵基地無力化論』とは、中国の、先制ミサイル攻撃を察知して相手国領空に核ミサイルを飛ばして高高空で爆発させ、そこで発生した電磁パルスにより、敵基地を無力化するものと聞いております。

 これは一般論として軍事技術的に、可能と防衛省はお考えなのでしょうか。また、日本が核を保有すること、運搬手段としての長距離ミサイルを保有することも可能とお考えでしょうか。

 この点を、石破元防衛大臣に会見でうかがったところ、『EMP爆弾にはご指摘の通り核爆発が伴うものであり、(中略)日本が核保有すれば、今のNPT体制があっと言う間に瓦解します。それが良い世界のあり方だと私は思いません』とはっきりと懸念を示されました。

 さらに、発生した電磁パルスにより、ミサイルを誤作動させたり、誤発射させたりすることなく、静かに無力化することは本当にできるのでしょうか。

 なお、この場合、全基地を同時無力化できなければ、こちらが核の先制使用をしているので、敵からの残存核戦力による核報復は避けられないと思いますが、安全保障対策としてこれは得策でしょうか。大臣のお考えをお聞かせください」

 これに対し、岸大臣は、「まず、今のお話のなかで中国との戦争を前提としているというお話がありましたが、そのようなことはまったく考えておりません。

 ただ、ミサイル防空のためにですね、今、弾道ミサイルに対してBMD(Ballistic Missile Defense 弾道ミサイル防衛)で対処するわけですけれども、そのようなことでいいのかどうか、ということについては昨年の安倍総理の談話のなかで問題提起がございました。

 2020年9月11日の談話として、安倍総理(当時)は安全保障についての方針を示した。安倍談話は、日米同盟の強化と北朝鮮ミサイルの脅威について触れ、「イージス・アショアの配備プロセスの停止」の代替策の必要性を訴えている。

 「(ミサイル阻止に関する安全保障政策の新たな方針)の検討は、憲法の範囲内において、国際法を遵守しつつ、行われているものであり、専守防衛の考え方については、いささかの変更もありません」

 つまり、安倍談話はたしかに「ミサイル阻止に関する安全保障政策の新たな方針」を示しているが、核爆発をともなう電磁パルスによる敵基地の無力化論など、一言も言及していないのである。

 高市氏の「電磁パルスで敵基地を無力化」するなどという発言は、安倍談話を大きく踏み越え、日本国憲法も国際法も飛び越えた異常な内容なのである。

 岸防衛大臣は、この安倍談話に沿って、議論を政府の中で進めていくというのである。

 「そうしたなかで抑止力をしっかり高めていくことは必要なんだと思います。そうした議論は政府のなかでもしっかり進めていかなければならないと思っております。技術的な問題については事務局にお問い合わせいただきたいと思います」

 その他、岸大臣との質疑応答において、TBS記者は航空自衛隊那覇基地のパワハラ問題について質問した。

 沖縄タイムス記者は、防衛大臣就任1年間の成果について問うた。

 NHK記者は、9月28日の北朝鮮対空ミサイル発射実験、弾道ミサイルの可能性に関しての質問を行なった。

 会見参加メディアによる質問と岸防衛大臣の回答については、全篇動画を御覧いただきたい。

■全編動画

  • 日時 2021年10月1日(金)11:10~
  • 場所 防衛省 A棟 第1省議室a(東京都千代田区)

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