「台湾有事の際に最前線となる自衛隊と近隣住民の被害見積もりは?」IWJ記者の質問に岸大臣は「仮定の質問への回答はひかえる」「台湾海峡問題は当事者間の直接対話で平和的解決を」~6.18岸信夫 防衛大臣 定例会見 2021.6.18

記事公開日:2021.6.18取材地: テキスト動画
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(取材、文・浜本信貴)

 2021年6月18日(金)、午前11時20分頃より、東京・防衛省庁舎にて、岸信夫防衛大臣の定例会見が行なわれた。

 冒頭、岸大臣より、自衛隊の新型コロナウイルス感染者について、前回会見時(6/15)の報告から、新たに9名の隊員が感染し、感染者は累計で1945名となったと報告があった。

 続いて、新型コロナワクチン大規模接種センターでの接種予約の状況、6月17日(木)に開催され、岸大臣がスピーチをした欧州議会・安全保障・防衛小委員会の報告などが行なわれた。

 報告に続いて、岸大臣と各社記者との質疑応答となり、IWJ記者は、前回の会見から引き続き、「重要土地利用規制法案」について、以下のとおり、質問をした。

IWJ記者「米国のインド太平洋軍フィリップ・デビッドソン司令官が『中国が6年以内に台湾に侵攻する恐れがある』と、3月9日に米上院軍事委員会の公聴会で述べています。

 米軍のインド太平洋における『海洋圧力戦略』は、中国軍を、日本列島を含む第一列島線の内部に封じ込めようとするものです。中国軍がターゲットを絞り込めないように日本列島全体に軍事標的を多数分散配置するとしています。

 先の国会では、26時間というスピード審議で『重要土地利用規制法案』が可決されました。こんなに急いだ理由は、米国の構想に沿って『台湾有事』に向けて分散配置される軍事標的の準備のためでしょうか?

 一度『台湾有事』がおこれば、米軍は第2列島線まで引き、そこから戦闘機を第一列島線上まで低空飛行で飛ばし、ミサイル発射装置を下ろしてミサイルを撃ってすぐに飛び去るということです。

 自衛隊も米軍と共に中国艦隊または中国本土に向けてミサイル攻撃をかけるのでしょうか? その場合の報復は多大なものになると思われますが、いかがでしょうか?」

 この質問に対し、岸大臣は以下のとおり回答をした。

岸大臣「まず、国会の審議については、十分な審議時間が取られて、十分な審議が行なわれたものと承知している。本法案は、土地等の利用によって、安全保障上の重要な施設に対する機能阻害行為が行なわれるというリスクに対応するということを目的としている。

 我が国の安全保障環境が厳しさを増す中において、各種措置によって、安全保障上のリスクとなる機能阻害行為を未然に防止するという、本法案・本法律の目的は明確であって、防衛関係施設の機能発揮を万全にする観点から、意義あるものと考えているところだ。

 本法律にもとづく措置については、土地等の利用状況を調査し、必要に応じ、利用規制を行う。その一方で、経済活動への影響を最小限にするため、取得規制といった、私権制限の程度が大きな措置は導入をしていません。

 このため、通常の国民生活や経済活動への負担や影響は限定的であると承知している。安全保障と自由な経済活動の両面の両立に留意されているものと認識をしている」

 続いて、IWJ記者より、以下のとおり、追加の質問をおこなった。

IWJ記者「台湾有事における戦闘となった場合に、自衛隊と日本国民は最前線にとどまらされ、ひたすら中国艦隊または中国本土からのミサイル攻撃に耐えることになります。耐えきれず、早々に殲滅されるかもしれません。

 米軍は、持久戦を想定しているようですが、日本列島は孤立し、石油も、物資も、食料も入ってこなくなった場合、社会はどうなるのでしょうか? 自衛隊の被害、および近隣住民など非戦闘員の被害をどのように見積もっていますか?

 また、米軍の好き勝手に作られた戦略ではなく、ほんとうに日本を守るための防衛省・自衛隊の独自の戦略はないのでしょうか?」

岸大臣「まず、『台湾有事』といった仮定の質問への回答はひかえる。台湾海峡の平和と安定は、大変重要だと考えているし、海峡問題については、当事者間の直接対話によって、平和的に解決するべきものであり、そのことに期待している。我が国の立場に変わりはありません。

 その上で、台湾の情勢については、南西地域を含む、我が国の安全保障はもとより、国際社会の安定にとっても非常に重要であるという観点から、引き続き、動向に注視をしていきたいと考えている」

 岸防衛大臣の冒頭報告、そして各社記者との質疑応答は、全編動画にてご確認いただきたい。

■全編動画

  • 日時 2021年6月18日(金)11:15~11:35
  • 場所 防衛省 A棟11階 第1省議室(東京都新宿区)

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