日米豪印のクアッドに加えて、英国、フランス、ドイツ、オランダまで8カ国が東シナ海に集結! 風雲急を告げる東アジア・インド太平洋情勢と日本で進む改憲への動き、再び「戦争が廊下の奥に立つてゐた」となるのか!〜5.11岸信夫防衛大臣会見 2021.5.11

記事公開日:2021.5.20取材地: テキスト動画
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(取材・浜本信貴、文・六反田千恵)

 2021年5月11日、岸信夫防衛大臣は会見で、日米豪仏の共同訓練「ARC21」について以下のように報告した。

 岸防衛大臣「日米豪仏の共同訓練についてであります。4月23日に私からお知らせをいたしました、フランス軍の練習艦隊『ジャンヌ・ダルク』との共同訓練について、海軍種間の訓練の調整が終わりましたので、改めてお知らせいたします。

 海上自衛隊においては、5月11日から17日までの間、東シナ海において、フランス海軍及び米海軍、豪州海軍も加えた4カ国の艦艇・航空機による対潜戦訓練のほか、航空自衛隊のF-2戦闘機の支援を得て防空訓練を実施をいたします。

 また、陸軍種と海軍種の協同による着上陸訓練として、地上部隊がヘリコプターで洋上の艦艇から霧島演習場に展開するという一連の訓練も行います。

 日米豪仏の4カ国は、今般の陸上・海上での共同訓練を『ARC21』(アーク21)と称することとしております。防衛省・自衛隊としては、この『ARC21』を通じて、『自由で開かれたインド太平洋』のビジョンを共有する日米豪仏4カ国の協力関係を一層深化させるとともに、島嶼防衛に係る自衛隊の戦術技量や4カ国との連携を更に強化してまいりたいと考えております」

 2021年2月1日に中国で「中華人民共和国海警法」が施行されていらい、東シナ海で軍事的な緊張が高まっている。その適用範囲に示す「中国の管轄海域」の定義が明記されておらず、外国の組織や個人から不法侵害を受けた場合には「武器の使用を含む一切の必要な措置」を講じると、武力行使を許容していることが周辺諸国の懸念を招いている。

 日米豪印によるクアッドが、対中包囲網として、アジア版NATOとして機能することを期待されている。そこに、レユニオン島、アブダビ、ジブチなどインド洋の西側地域に海軍基地を持つフランスが参加することで、「自由で開かれたインド太平洋」の強化を図る狙いもあるとされている。

 その他、ドイツのフリゲート艦のインド太平洋・オーストラリア・朝鮮半島沖への派遣、英国の空母『クイーンエリザベス号』を中心とする空母打撃群がオランダ軍フリゲート艦を伴って日本に寄稿することが予定されている。これが実現すれば、かつての海の覇権国と列強がインド太平洋から東シナ海に結集し、新興国中国を包囲することになる。こうした動きが中国を刺激しないはずはない。

 「ARC21」の詳細はIWJの検証レポートをお読みください。

 岸防衛大臣は、中国を刺激し偶発的な衝突につながるのではないかという北海道新聞記者の質問に、「特定の国を念頭に置いたものではない」と回答しているが、そんな答えが中国に通用するとは思えない。

北海道新聞記者「欧州のですね、各国と同盟国ではありませんので、実際に何かが起きた時に助けてもらえるという保証はないと思うのですけれども、そういった中でどういった協力関係を結びたいかという点と、この東シナ海地域にですね、各国軍が集まることによって、中国を刺激し、軍事的な、偶発的な衝突に繋がりやすいという懸念もあると思うのですけれども、そういった点について大臣はどのようにお考えでしょうか」

 岸防衛大臣「ヨーロッパの各国が、インド太平洋地域に高い関心をもってきていると、そしてプレゼンスをそれぞれ示す、こういうことについてですね、そのことが地域の平和と安定に繋がるものだというふうに考えておるところです。

 そのことが中国との関係にどうなるのか、こういうことですけれども、その一つFOIP(自由で開かれたインド太平洋)にしてもですね、特定の国を念頭に置いたものではございません。非常にインクルーシブな体制だと考えているところですけれども、その中で協力できるところ、ビジョンを共有できる国々とですね、しっかり体制を広げていくということが何より地域の平和と安定に繋がると、こういうふうに考えております」

 風雲急を告げる東シナ海だが、この対立の中で「バトルフィールド」になるのは、遠く欧州にある国々でも、睨み合う米中でもなく、その周辺国、とくに「第一列島線と日本」であることは自明だ。

 国内では、菅政権が国民投票法改正案の今国会内の成立を目指している。国民投票法改正案の成立は、緊急事態条項を含む自民党改憲案への入り口であり、最短では衆議院総選挙前の改憲発議もあり得る。コロナ禍の今、国民投票法改正案なのか。国際情勢を見れば、それは戦争への備えであり、戦時独裁体制をいつでも敷ける準備なのだと見えてくる。

 「戦争が廊下の奥に立つてゐた」と詠んだのは、渡辺白泉。1939年、真珠湾攻撃の2年前であった。なぜ当時の日本が、中国と戦いながら国力で圧倒的に上回る米国に戦争を挑んだのか、理性的に説明できる人はいないだろう。いつのまにか避けられないほど身近に戦争は立っている。

 岸防衛大臣の答弁をぜひじっくりと御覧ください。

■ ARC21 ハイライト

  • 日時 2021年5月11日(火)9:30~
  • 場所 防衛省 A棟 第1省議室(東京都新宿区)

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