2021年5月11日から17日まで、自衛隊は、日米豪仏共同訓練「ARC21」を行った。
東シナ海で、各国陸海軍の参加により行われたものであり、米国主導の中国包囲網に、フランス軍が加わった点が特筆に値する。フランスは、インド洋一帯に過去の植民地の「遺産」である拠点をもつ。さらにフランス軍だけではなく、ドイツ、英国、オランダ各国も日本等への軍艦派遣を表明している。
特に英国は「英軍史上最大級の軍艦」とされる空母クイーン・エリザベスを派遣するという。防衛省のホームページによると、5月14日、15日に中山泰秀防衛副大臣がARC21(仏陸軍及び米海兵隊との実動訓練)の視察を、陸上自衛隊霧島演習場で行うと文書で記されている。
日米豪印の中国包囲網「クアッド」に、英仏独オランダが加わり、共同訓練も実施するというのだから、「世界大戦」規模の戦争になりかねない。
万が一、覇権をめぐる米中の対立がエスカレートして、この構図で、この規模で「実戦」に至ったならば、地域紛争レベルではすまず、包囲網を形成され、目と鼻の先で合同演習を行われて挑発された中国が、黙って指をくわえて傍観しているはずはない。中国は次の一手をどう打つのか?
岸信夫防衛大臣は記者会見で、このARC21について、「中国を刺激し、偶発的な衝突につながるのではないか」という、北海道新聞記者の質問に対し、「特定の国を念頭に置いたものではない」と答えた。しかし、日米首脳会談の共同声明でも、中国の脅威を名指しで指摘し、自衛隊の強化まで約束しているのだから、「特定の国を念頭においたものではない」という弁明は通じない。米欧とも、中国からは離れた距離にあるが、日本は至近距離に位置する。現実に、この構図で戦争が勃発すれば、在日米軍があり、さらに各国軍隊に寄港地を提供する日本が真っ先に中国軍のミサイルの標的となる。
4月29日に行われた岩上安身のインタビューで立憲民主党・小西洋之参議院議員は、2017年の日米共同訓練によって、北朝鮮が攻撃対象に日本を加え、「『米朝は一触即発』だった」事実を明らかにしている。名目は「演習」でも、実戦につながるリスクはないとは言えないと真剣にとらえる必要がある。