イスラエルは10月10日の『停戦』発効から、1ヶ月ちょっとで300人のパレスチナ人を殺害! 本来であれば、ガザから完全撤収すべきイスラエル軍は、ガザの58%を恒久的に押さえて既成事実化! 米国とイスラエルの「停戦」や「和平」はインチキ! 欧米諸国政府の対中東政策を批判的に論じる思想家ハミッド・ダバシの新著『イスラエル=アメリカの新植民地主義: ガザ〈10.7〉以後の世界』を読む! 岩上安身によるインタビュー第1208回ゲスト 東京経済大学教授 早尾貴紀氏 第3回(その1) 2025.11.21

記事公開日:2025.11.21取材地: テキスト動画独自
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(文・IWJ編集部)

特集 中東

※25/11/24テキスト追加
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 2025年11月21日、「欧米諸国政府の対中東政策を批判的に論じる思想家ハミッド・ダバシの新著『イスラエル=アメリカの新植民地主義: ガザ〈10.7〉以後の世界』を読む! 岩上安身によるインタビュー第1208回ゲスト 東京経済大学教授 早尾貴紀氏 第3回(その1)」を撮りおろし初配信した。

 早尾教授は、イラン生まれの米コロンビア大学教授ハミッド・ダバシ氏が、英国の中東専門メディア『ミドル・イースト・アイ』に掲載したエッセーを、抜粋・翻訳して、今年6月に『イスラエル=アメリカの新植民地主義~ガザ〈10.7〉以後の世界』(地平社)として出版した。

 岩上安身は、この新著の内容に沿って、早尾教授に連続インタビューを行っている。今回は、その第3回になる。

 10月10日に、米国のトランプ大統領が主導する、イスラエルとハマスの停戦が発効した。しかし、ガザ地区に駐留するイスラエル軍は、その後も理由をつけてはガザへの大規模な空爆を繰り返し、一方的に300人以上のパレスチナ市民を殺害し続けている。

※ハマスが生存する最後のイスラエル人の人質20人を解放! トランプ大統領はイスラエル国会で「偉大なる調和と永続的な平和の幕開け」だなどと大絶賛! ジェノサイドの共犯者が主犯を礼賛する異常な光景! しかし、イスラエル側はガザへの支援を半減させ、ラファ検問所の閉鎖を継続、パレスチナ人の殺害を現在も継続中!(前編)(日刊IWJガイド、2025年10月16日)
会員版 https://iwj.co.jp/wj/member.old/nikkan-20251016#idx-5
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※ハマスが最後の人質20人を解放! トランプ大統領はイスラエル国会で「平和の幕開け」だなどと、ネタニヤフ首相を大絶賛! 日本でも及川幸久氏がトランプの交渉力を手放しでほめる! しかし、 これは罠だった! イスラエル側はガザへの支援を半減させ、ラファ検問所の閉鎖を継続、パレスチナ人の殺害を現在も継続中!(後編)『グレイゾーン』のマックス・ブルメンタール氏は、「合意違反をしているのはイスラエル!」トランプ大統領の再建計画は「新植民地主義的な計画! と断言! ミアシャイマー教授は、『ニュールンベルグ裁判を開けば、トランプ大統領とネタニヤフ首相は、ジェノサイドの罪で有罪となり絞首刑だろう』と断罪!
(日刊IWJガイド、2025年10月17日)
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※ハマスによる人質20人の解放後も、イスラエルは「ハマスによる停戦破り」との言いがかりで、「報復」と称して空爆と封鎖を続行し、ガザでは停戦後も97人が死亡! イスラエルのベン・グヴィル国家安全保障大臣は、「戦闘を再開し、ガザを征服せよ」と明白に約束を破る要求! さらにクネセト(国会)では予備審議でヨルダン川西岸併合法案が可決! 国際司法裁判所はイスラエルの人道支援制限を国際法違反と断罪するも、イスラエルは判決を無視し、UNRWAの活動を拒否!(日刊IWJガイド、2025年10月24日)
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※【ガザ停戦発効後も続く、イスラエル軍による一方的なパレスチナ人虐殺! 10月28日には、ガザ全域への12時間におよぶ大規模空爆で、子供46人を含むパレスチナ人104人を殺害! それでも「停戦は脅かされていない」と言い張るトランプ大統領は、「イスラエルには報復する権利がある。ハマスが停戦に従わない場合は、ハマスを排除できる」と、一方的にイスラエルを擁護!!】(『タイムズ・オブ・イスラエル』、2025年10月29日ほか)(日刊IWJガイド、2025年10月31日)
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 米国とイスラエルに共通する帝国主義的な傲慢さと入植者植民地主義(セトラー・コロニアリズム)について、早尾教授は、「非常に根深い、イデオロギー的な問題だ」と指摘し、「マニフェスト・ディスティニー(『明白なる天命』、『アメリカは神から授かった使命として、北米大陸を西へと拡大すべきだ』という思想・正当化理念)という考えによって、西部『開拓』の名のもとに、事実上、先住民の虐殺、追放、そして土地の収奪をやってきた歴史があって、その延長を、無反省にやっている」と述べた。

 『イスラエル=アメリカの新植民地主義~ガザ〈10.7〉以後の世界』の中で、ダバシ教授は、トランプ大統領が米国内で政策として進めているDEI(多様性、公平性、包摂性)の否定を、白人至上主義による「イデオロギー的な策略だ」と論じ、「これは露骨な人種差別としての大量虐殺シオニズムの論理である」と結論づけている。

 早尾教授は、「超正統派のユダヤ教徒からすれば、シオニズム自体が、近代の世俗ナショナリズムであり、建国運動というのは、外交と軍事の力で作るものですから、それは宗教とまったく関係ない」と述べ、次のように続けた。

 「イスラエル国家を、建国したあとから、いかに正当化するのかというその中で、強引な言語解釈で、宗教による正当化を行っている。

 軍事占領を正当化するのに、ヨルダン川西岸からガザまで含めて『約束の地』だと、宗教的な言説を使っているだけで、シオニズムはまったく宗教ではない。ユダヤ教的ではない」。

 ダバシ教授は、シオニズムの論理について、米国とイスラエルが、「民主主義、法の支配、国際秩序、国家主権」などに構わず、占領地を、「自分達が自由に作り変えることができる不動産」と考えていると指摘している。

 これについて、早尾教授は、以下のように指摘した。

 「トランプが1月に就任して、第2期が始まってすぐに、『アメリカがガザを所有し、開発する。中東のリビエラにする』と、いかにもトランプらしい発言をしています。

 1点、注意が必要だと思うのは、ガザの再開発については、すでにネタニヤフが、2024年の5月に言っています。『2035年のガザ』という、きらびやかなガザ地区の絵を、首相官邸からのプランとして、発表していたわけです。

 それも、24年の5月なので、(ガザで)ジェノサイドをしながら、きらびやかなガザの将来イメージみたいなものを出して、それをイスラエルが開発して、そこでリゾートとか、あるいは金融だとか、資源開発だとか、そういうことをやって、儲けるのはイスラエルだということを、発表していたわけです。

 トランプは、ある意味、それに便乗した。ネタニヤフからすると、これを実行する力は、アメリカの方がある。そもそも、ガザのジェノサイドも、アメリカの力なしには成し得ないわけですから。

 アメリカが入ってきて、トランプが手柄をかっさらっていくようなところには、たぶん、微妙なものを感じていると思いますが、方向性、考えていることは一緒ですね、ネタニヤフとトランプは。

 本音は、ネタニヤフとしては、自分達の不動産として開発したいと思っているんでしょうけれども、実際にはトランプの、アメリカの協力なしにはできないわけですから。

 それで、今は、イスラエルとアメリカは、ガザの利権をどう分割するか、ということを話しあっているわけですね」。

 そして、10月10日の停戦発効以降も、イスラエル軍がパレスチナ人の虐殺を続けていることについて、早尾教授は、以下のように憤りをあらわにした。

 「この『停戦』と言われるもの。『停戦、和平』、その『第1段階、第2段階』だということを言っていますが、そもそも、アメリカが仲介するということ自体が、おかしい話です。アメリカは、イスラエルの(一方的な)ジェノサイドを最大限に支援をしてきた当事者になるわけですね。

 本来であれば、イスラエルのガザ地区での占領と、占領地でのジェノサイド・軍事攻撃を、いかに止めるか、そしてガザ地区からいかにイスラエルを追い出すのか、ということを話さなきゃいけない時に、あたかも『停戦』と、ハマスとイスラエルが(対等に)戦争をしているかのように言う。

 そして、停戦条件をつけて、『ハマスが停戦を守らない。だから、ハマスに対して攻撃が続いてるんだ』ということを、正当化するかのようなことを言いながら(攻撃を続けている)。

 結局、アメリカとイスラエルの間では、イスラエルが自分に都合が良い、イスラエルが『この話だったら飲める』という(案しか出てこない)、つまり、(イスラエルは)ガザから全面的に撤退しなくてよい。今、『イエローライン』と呼ばれていますけれども、ガザの半分以上、58%ぐらいを抑えたままの停戦ラインを設けて、事実上、ガザの半分以上を、イスラエルが半恒久的に押さえてよいと。

 そして、その内側、つまり、かなり幅広いバッファーゾーンを取って、そして半分以下に切り縮められたガザ地区、ここにハマスを詰め込む。非常に狭い範囲に、ただでさえ狭いガザ地区を、さらに狭く抑え込むということを指している。

 それで、『停戦』という名目だけを与えている。

 攻撃の規模としては、10月10日の前だったら、(死者数が)1日100人以上の規模だったのが、1日10数人になったと。

 でも、10月10日の停戦発効から、1ヶ月ちょっとですけど、300人ですよ、殺害されているのは。数10人どころじゃなくて。

 毎日10人は殺されているというような状況ですが、それを、アメリカとイスラエルの間では、『停戦が維持されている』という。

 逆に、ハマスがちょっとでも何かしたら、ハマスに対しては『停戦違反だ』と言って、一気に全面的な再侵攻、そしてガザ一掃をやることを正当化する可能性を残している。

 ハマスには、一切の武力行使を許さない。それをやったら、完全に停戦違反で、『殲滅するぞ』と言いながら、自分達は、『治安管理』の名のもとに、毎日10人以上を殺し続けても、『これでも停戦なのだ』というふうに、言い換えている。

 そして、日本の新聞・報道も、何とか停戦が、今、辛うじて維持されているかのように言うわけですが、まったくもう、『停戦』じゃないですし、本来であれば、完全撤収(すべき)ですよね。イスラエルはガザに一切触れない、ということが大事なわけですが、もう、話がずれているわけですね。

 もう既成事実として、ガザの半分以上を、イスラエルが恒久的に押さえるという方向にずらされている。それが、『停戦』とか『和平』という名のもとに行われているということが、非常にインチキなわけです」。

■ハイライト(その1~その4共通)

  • 日時 2025年11月14日(金)18:00~
  • 場所 IWJ事務所(東京都港区)

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