第51回衆院選投開票日の前日2月7日、「投開票直前緊急インタビュー」として、2月5日に収録した「岩上安身によるインタビュー第1211回ゲスト エコノミスト 田代秀敏氏」(その1)を、撮りおろし初配信した。
米国のトランプ大統領の外交・安全保障政策や米国内の政策に対する「トランプリスク」から、投資家のドル離れが進み、安全資産としての金や銀など貴金属の価格が上昇を続けていたが、1月30日に一転、急落し、米株価も下落した。
きっかけとなったのは、トランプ大統領が次期連邦準備制度理事会(FRB)議長として、財政規律を守る「タカ派」と目されていたケビン・ウォーシュ元FRB理事を指名したことだった。
- 記録的高騰を続けていた金・銀・銅の価格が暴落! トランプ大統領が指名した次期米連邦準備制度理事会(FRB)議長が、トランプ大統領の金融緩和政策に慎重な「タカ派」であることから、トランプ・リスクでドル資産から金に流れていた世界中の投資家が、ドル資産に戻ってきた!?(日刊IWJガイド、2026年2月2日)
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しかし、週明けの2月2日には、貴金属価格は反発し、米株価も上昇。すると、3日の東京株式市場では、日経平均株価が一時史上最高値を更新した。
- 【貴金属価格暴落からの反発! 2月2日の米市場では、金も株価も上昇! 東京株式市場でも、日経平均が一時史上最高値を更新!】(『日本経済新聞』、2026年2月3日)(日刊IWJガイド、2026年2月4日)
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この株価だけを見て、日本経済は好調なのだと、勘違いする向きが少なくない。マスメディアでも、YouTubeはじめ、SNSでも、そうした前時代的な認識がまかり通っている。
しかし、株価が、各企業の業績や将来性に対する評価だった時代は前世紀までで終わっており、今世紀に入ってからは会社の業績・将来性と株価はリンクしていないと、田代氏は、これまでのインタビューの中でも、繰り返し指摘してきた。
日本株の株価高騰について、田代氏は、「日本企業の株は、もはや、外国の金融機関による投資商品」であると指摘し、「円安ドル高が進むと、輸出企業の業績が良くなることが好感されて、輸出企業の株式が買われて日経平均株価が上がるなどと言っているのは、ファンタジー」だと、次のように解説した。
「日本の株式というのは、極端に円ドル為替相場に影響されます。
日本の株価というのは、その時の為替レートで、ドルに変換されて(外国の金融機関に)表示されているわけです。
元の日本円で表示されている価格が変わらなくても、円安が起きれば、ドル表示されている株価は下がります。
プロの金融機関は、下がった時こそ、買い進むわけです。
そうすると、元の日本円建てでの株価が変わっていなくても、円安が進行して、ドル表示されている株価が下がれば、(AIによって)買いが自動的に入ります。そうすると、株価が上昇します。
今、歴史的な勢いで円安が進行しているから、その裏返しとして、歴史的な勢いで日経平均株価が押し上げられているのです」。
さらに田代氏は、「高市早苗総理の『積極財政』を市場が好感した」などというストーリーが「ファンタジー」であることは、「日本国債の価格を見れば明らか」だと指摘し、次のように述べた。
「財政に関しての評価というのは、株式じゃなくて、国債に対して出てくるはずです。国の借金の証文である国債の値段と、その裏返しである金利、それこそが、唯一、高市政権が唱えている経済政策への評価を、マーケットがどう下しているかという内容になるわけです。
それで言うと、実は日本は今、大変な危機的事態なのです」。
田代氏は、「1700年以降の世界の覇権国(1904年までは英国、1905年以降は米国)の1人あたりGDP(購買力平価建て)に対する日本の比率」というグラフを示し、1990年のバブル崩壊以降、下がり続けている数値が、現在は、「1970年、高度経済成長の最後の時期ぐらいの水準まで来ている」と述べた。
田代氏は、このグラフで数値が急激に下がっているのが、近世以降、近現代では、江戸時代末期と第2次世界大戦末期と現在との3回であることを示し、「これはもう、何か適当なことをやってお茶を濁してたんじゃダメだということ」「(明治維新や大日本帝国の解体のような)レジームチェンジが必要」だと、危機感を訴えた。
今回の短い選挙期間中に、1度しかなかったテレビでの党首討論である2月1日のNHK『日曜討論』を、高市総理がドタキャンし、「敵前逃亡」したのは、1月31日に川崎での選挙演説で「円安で外国為替資金特別会計(外為特会)の運用もホクホク状態だ」と発言し、批判を浴びたからだといわれている。
田代氏は、「これは、本当に腰が抜けるような発言」だと述べ、以下のように解説した。
「外国為替資金特別会計というのは、為替介入をするためにプールしているんです。例えばドル売り円買いをするために、ドルをプールするのがここなんです。
そのドルは、実は日本国債発行して集めた資金で買ってるわけです。多くが(現金ではなく)米国債なんです。
バランスシートの中で、最初は、(日本の『借金=日本国債』と、それを使って購入した『資産=米国債』が)同じ金額で、両方あるわけですね。
ところが、円安が進むと、米国債の、あるいはもし現金があるとしたら、米ドルの現金の、円建て表示額が増えるでしょう。それが、剰余金になるわけですね。この剰余金は、翌年度の一般会計に組み込まれます」。
「で、それを『ホクホクだ』と言ってるんだけど、問題は、それは来たるべき、いつかやる大規模為替介入のための原資を積み立てているわけじゃないですか。
それが円安で、日本円建ての評価額が増えたからといって、何かいいことがあったんですか?
それは、逆に言うと、もうそろそろ、外為特会で積み上げた外貨を使う時が近づいたのかな、という感じですね。
どうしてこんなに(高市総理が)笑っていらっしゃるのか、私にはわからないぐらい、怖い話ですよ」。
こうした高市総理に対する金融界の評価について、田代氏は、高市総理の円安容認発言に対して、2月2日にみずほ銀行が発表した、みずほ銀行国際為替部チーフマーケット・エコノミストの唐鎌大輔氏によるレポート「高市演説を受けて~危うい現状認識~」を紹介した。
- 高市演説を受けて~危うい現状認識~(みずほみずほマーケット・トピック、2026年2月2日)
https://www.mizuhobank.co.jp/forex/pdf/market_analysis/econ2600202.pdf
この中で唐鎌氏は、「今回の高市発言が、円安容認だったかどうかは本質的な話ではない」とした上で、「それよりも『為替が修正されれば、日本企業の行動変容が劇的に期待できる』という前時代的な価値観が温存されている可能性の方が気になった」「さらに言えば、外為特会が果たして有事の際に温存されておくべき弾薬と理解されているのかどうかも気がかりであった」と述べている。
その上で唐鎌氏は、「とりわけ前者(※為替修正による企業の行動変容への期待)については、既に2013年以降のアベノミクスを経て失敗が立証されている理屈である」と指摘し、「日本企業の対外直接投資ブームは本来、逆風であるはずの円安基調と共にあったことを思い返すべき。為替だけで企業の行動変容は起きない」「また、外為特会は将来の通貨防衛に際し、投機筋と戦うための有限な原資だからこそ『弾薬』と形容されるのである。目的外利用は禁忌」だと論じている。
このレポートについて田代氏は、「マーケットでみんなが思っていることを、『危うい現状認識』だと、素早く文章にまとめてくれた」と評価し、「もっといえば、端的にキャピタルフライト(日本から海外への資本逃避)が起きると、銀行は考えますよ」と指摘して、以下のように解説した。
「もともとアベノミクスは、金融緩和をやって『円安になれば、日本企業は生産拠点を日本に戻して、日本の国内での雇用が増えて、国内投資が増える』と言っていたんだけど、そうはならなかった。
それどころか、円安が進めば進むほど、日本企業、特に大企業は、海外に生産拠点を移していきました。
今や、生産拠点をどんどん海外に移していった結果、海外で生じた利益を、日本に戻さない。海外でプールして、海外でまた再投資するという仕組みになりました。
ドルならドルのままで、ユーロならユーロのままで持っているという風になって、その結果、ずっと長期的に、円は下がっていったわけです。
それを、『日本企業の対外直接投資ブームは本来、逆風であるはずの円安基調と共にあったこと』を、長い間見てきたじゃないか、と言っているわけです。
そして、『為替だけで企業の行動変容は起きない』ことも、学んだはずだと。
アベノミクスの失敗を、自ら立証したのに、なぜ、経営学部卒業の高市総理は見ていないのか、というのが一つ。
さらには、外為特会は、将来の通貨防衛、つまり為替介入に際して、投機筋と戦うための限りある原資である『弾薬』なのに、それを『ホクホクだ』と言っているということは、『景気対策に使う』と言ってるわけじゃないですか。それは、厳禁ですよ。
日本は、為替介入するために積み上げた、『虎の子』の外為特会を、景気対策のために使うわけ? そうすると、『弾薬庫』が、どんどんなくなっていくわけじゃないですか。それこそ、投機筋の思うつぼですよね」。
田代氏は、「この人(高市総理)は、通貨防衛するという意味をわかっているんだろうか」と疑問を呈し、「やすやすと、為替レートについて言及すること自体、すでに総理大臣の資質が、十分すぎるぐらい疑われる。国の制度を理解していないんじゃないか」と、懸念を表明した。
































