2025年9月15日、「岩上安身によるインタビュー第1206回ゲスト エコノミスト田代秀敏氏 第4弾 前編1」を初配信した。
インタビューの第4弾では、前半で、8月31日と9月1日に中国の天津で開催された、上海協力機構(SCO)プラス首脳会議と、9月3日に北京の天安門広場で行われた、日中戦争勝利80周年と第2次世界大戦終結80周年を記念する軍事パレードについて、検証した。
前編1では、このうち上海協力機構プラス首脳会議を振り返った。
上海協力機構プラス首脳会議が、中国の天津で開催されたことについて、旧帝国主義列強クラブのメディアではなく、まさに中国と同様、大英帝国に侵略され、植民地にされた経験のあるインドのメディアである『ファースト・ポイント』は、「天津は復興と戦略的野心の象徴」であり、「列強に分割統治された植民地時代の屈辱を晴らす舞台として選ばれたのではないか」という解釈を報じた。
この『ファースト・ポイント』の考えに同意した田代氏は、次のように補足説明した。
「世界史で習った通り、ここ(天津)は、1858年の天津条約(※清と英仏露米が締結した、第2次アヘン戦争の講和条約。開港の拡大、外国公使の北京駐在、領事裁判権の確立、キリスト教の公認など、中国の半植民地化が進んだ)の締結地ですよね。(中略)
それともう一つは、天津を選んだというのは、ある意味画期的で、アロー号事件(※1856年に清が、イギリス国旗を掲げたアロー号の乗組員を拿捕した事件。第2次アヘン戦争のきっかけとなった)、第2次アヘン戦争ですね。
その時に、この天津で国際会議が開かれて、清の王朝は、ロシアと、アメリカと、イギリスと、フランスと、それぞれ、賠償金の条約を結んだ。
この中に、ロシアが入ってるんです。
その天津で、上海協力機構の元首の会議をやるというところに、(歴史を深く理解し、知っている)プーチンが来た、というのは、びっくりした。
これは、本当にロシアは、中国に全面的に依存するしかないんだなというのが、暗黙にわかりますよね」。
この田代氏の発言に対して、岩上安身は、次のように応じた。
「そういうかつての列強の中で、『我々は、あの帝国主義は繰り返しませんよ』ということを明確に言ったのは、言うならばロシア帝国の負債を負っているロシアだけなんですよ。
西欧は一言も謝りもしないし、(同じく中国をしつこく侵略した)日本も十分謝罪したのか、あるいは補償したのかと言ったら、それはしてないわけですね」。
田代氏は、さらに、以下のように、日本のメディアを批判した。
「日本のメディアは、『天津は貿易港であって、開かれた中国を象徴する』と。
そうかもしれないけれど、歴史を見なかったのかなというのは、びっくりですよね。
ここが、天津条約の締結地であるということに、誰も触れなかったですよね」。
上海協力機構首脳会議には、西側の中国包囲網である「クアッド」の一角を形成する、インドのモディ首相も参加した。
インドは、ウクライナ紛争後もロシアから石油を輸入し続けていることで、8月27日、米国のトランプ政権から、対露制裁の一環として、25%の「2次関税」を追加で課せられた。これにより、すでに発動済みの「相互関税」の25%とあわせて、50%になった。
ところが、天津でモディ首相は、ロシアのプーチン大統領と手をつないで登場し、両者が深い絆で結ばれていることをアピールして、世界中に大きく報じられた。
これについて田代氏は、次のように指摘した。
「『BBC』は、うまいこと言いましたよね。モディが、プーチンとここまでの親密さを見せつけることで、『トランプに対して、中指を立てた』と。本当にそうですよね。
インドに行ったこともないし、インド人の誰かと話したこともないような日本人達が、何か妙にインドに過剰な期待とか幻想を押し付けて、中国を叩く一番大きい駒になるんじゃないかと踏んでいたら、どうも全然違ったかなと。
『インド太平洋』というのは、どこからそんな言葉が出てきたんだ、という。太平洋って、『インド』と頭に付くんですか、とびっくりした。
ああいうのも、日本人が勝手に思いついたんだけど、まず、インド人が使わない。インドの新聞やメディアで、『インディアン・パシフィック』という言い方を、1回も見たことがないですね。
結局、インドはインドであって、(日本人が)自分達が思っているようなインドではない、ということが、明確にわかっちゃったから、そうすると、(政府も、メディアも、保守系論客やYouTuberらも、ことごとく)黙ってしまう」。
上海協力機構(SCO)首脳会議での演説で、プーチン大統領は、SCOが「真の多国間主義」を体現しており、「時代遅れの欧州中心モデル、欧州大西洋モデルに取って代わるものだ」と訴えた。
このプーチン大統領の発言と対比させる形で、岩上安身は、2022年10月に行われた、欧州外交アカデミーでのジョゼップ・ボレルEU外務安全保障政策上級代表(当時)の、おそろしく差別的な演説を紹介した。
ボレル氏は、「ヨーロッパは庭園だ」と述べた上で、「世界の他の地域は、庭園とは言い難い。世界のほとんどはジャングルであり、そのジャングルが庭園に侵入するかもしれない」と、欧州以外の地域や、国家や文化や、人々に対し、危険な外来種や野蛮な蛮族の侵入の危険性があるかのごとく語った。
田代氏は、このボレル氏の発言が、式典での挨拶であったことから、「つい口が滑ったのではなく、ちゃんと原稿があって、それを読んでいる」と指摘した上で、次のように語った。
「2022年の時点で、こういうことを平然と話す人間達が、こういう重要なポストについていて、そのまた取り巻いているスタッフも、当然、エリートの中のエリートですよね、EUの各国から選ばれた。そういう人達の中で、これを言ったらまずいですよ。
実際、これ、あとで謝罪しているんですね。でも、謝罪しているけれど、主張は曲げないで、ただ、『表現がよくありませんでした。ごめんなさい』ということを言っているわけ。
だから当たり前だけど、やっぱり問題にはなったわけですよね。
これ、本当に、ユーロセントリズム(ヨーロッパ中心主義)ですよね。
それが、今の時点でできたというのが、たいへんびっくりで、ああ、なるほど、これはナチズムが台頭するはずですよね。
これを下品にすると、ナチズムです。これは、尊大な白人エリート主義です。
それを、ヨーロッパの中の下層の、沈殿物みたいな人達が(発言・実行)すると、それはもう、ナチズムとして復活してくるんだろうということが、よくわかりますよね」。

































