岩上安身は、現代イスラム研究センター理事長・宮田律(みやた おさむ)氏へのインタビューを行い、2024年12月30日に初配信した。
現代イスラム政治の専門家である宮田氏は、中東情勢についても多くの著書を執筆されている。2024年4月には、ガザ紛争についての最新刊『ガザ紛争の正体~暴走するイスラエル極右思想と修正シオニズム』(平凡社新書)を上梓され、2025年1月16日には、新著『イスラエルの自滅~剣によって立つ者、必ず剣によって倒される』(光文社)が発売された。

▲現代イスラム研究センター理事長・宮田律氏(IWJ撮影)https://bit.ly/3QQRFyz
12月10日付『ワシントン・ポスト』は、「ウクライナが、150機のドローンとそのオペレーターをシリアに派遣している」と報じた。日本ではほとんど報じられていないが、シリアのアサド政権を崩壊させた反政府組織は、ウクライナのドローンで武装していたのだ。
ウクライナが支援した反政府勢力のシリア解放機構(シャーム解放機構、HTS)は、イスラム原理主義(ジハード主義)のアルカイダ系組織・ヌスラ戦線が中心となって構成されている。
2024年12月8日にシリアのアサド政権の崩壊すると、イスラエル軍はシリア全土を空爆し、シリアの軍事基地を破壊。さらにゴラン高原の非武装緩衝地帯を超えて、シリアに地上侵攻した。
ロシアによるウクライナへの軍事介入を「国際法違反」だと非難した米国のバイデン政権は、同じく国際法違反であるはずの、イスラエルによるシリアへの電撃越境作戦には、強い支持を表明している。
シリア上空の防空力を排除したことで、イスラエルは、爆撃機や戦闘機をシリア上空を安全に飛ばせるようになり、イランの核施設を一直線に攻撃する可能性が高くなったと報じられている。
宮田氏は、「イスラエルが次、何を狙っているかというと、イランへの攻撃を狙っていると思うんですよね」との見方を示し、今回のシリアの政変では、「アルカイダ系の武装集団に、イスラエルが金を渡していたという話もある」と指摘した。
西側諸国から大量の武器支援を受けながら、その半分しか前線に送られていないというウクライナから、実は中東へドローンが流され、世界中からテロリストとして扱われているアルカイダに、イスラエルの資金が届けられて、イスラエルの利益のために、精力的に、シリアで暴れまわり、アサド政権の転覆のために「協力」していたことが次第に明らかになっている。
宮田氏は、「今のシャーム解放機構は、基地が(イスラエル軍に)やられても、眺めているだけっていう連中で、別にシリアの基地を守ろうともしない」と述べ、イスラエルによって破壊されたシリアの軍事力だけはまだしも、イスラエルに対する抑止力になっていたが、「全部きれいにやられた」と指摘した。
シリアのアサド政権の崩壊によって、イスラエルの侵略と支配地域の拡大を阻止する邪魔者がまたひとつ、いなくなった、ということになる。