2025年2月19日午後5時より、東京都千代田区の参議院議員会館にて、「戦争をさせない1000人委員会」と「立憲フォーラム」の共催による院内集会が開催され、外務省元国際情報局長の孫崎享氏による講演「トランプ政権とわたしたち――日本の進むべき道」が行われた。
孫崎氏は講演で、国際政治の現状について、最近意見交換を行った、中国の国営通信社『新華社』の記者の言葉を引用しつつ、以下のように自身の認識を述べた。
「世界の大きな流れの中で、トランプを考えなければならない。
今、世界は、第2次大戦が終わった時、そしてソ連が崩壊した時、それと同じような重要な局面に来ている、と。それは基本的には、第2次世界大戦以降の一極支配、これがもうアメリカの国内から崩れている。
この崩れているアメリカをどうしようか、ということが、トランプの一番の大きなポイントであって、じゃあトランプが、関税とかそういうことでやろうとしていることというのが、アメリカ国内を立ち直らせることができるのかどうかというと、それは必ずしもできないけれども、それくらい追い詰められた中で彼が動いていることなのだ、という説明を、まず最初に(『新華社』の記者から)されました。
そのポイントは、私も述べていることだと思うのですけど、今、本当に世界情勢は大きく変化する中なのです」。
また、孫崎氏は、米国の政治学者で、ハーバード大学ケネディ行政大学院の初代院長グレアム・アリソン氏の言葉を引用し、ソ連崩壊後の世界の変化について、以下のように説明した。
「冷戦というのは、いったい何だったのか?
アメリカ圏とソ連圏とが2つがあって、そして、アメリカ圏というのはどうなのか、ソ連圏というのはどういうものなのか。
(アリソンは)『勢力圏とは、他人が服従することを求めるか、支配的影響を行使できる空間だ』と。同盟と言っても、対等の関係であるなんて、彼は言っていないのです。
『日米同盟というものの基本は、アメリカに言われたことをしっかり実施すること』なんだと。
そして、『冷戦の終結とは、全世界が、事実上の米国の勢力圏になった。強者・米国は、依然として自分達の意思を押し付け、世界の他の国は、米国の規則にしたがって行動することを強いられ、さもなくば、壊滅的な制裁から完全な政権交代に至るまで、莫大な代償に直面することになった』。
ところが、今、起こっていることは、『中国とロシアが米国の利益と衝突しても、パワーを行使しようとしている』と。
その中にトランプ大統領が出てきた、ということなんですね。
だから、『世界を牛耳っていたアメリカが、世界を牛耳ることができなくなってきた。それは、アメリカの国内の経済等々が崩壊し始めてきている。ここにトランプが出てきた意義があるのだ』。こういう説明なのですね。
トランプ政権は、第1次の政権と、今と、まったく違うと思います。第1次の時を考えてみて、ちょっと記憶を新たにしていただければいいんですけれども、あの時、ホワイトハウスを牛耳っていた、あるいは運営していたのは誰か? 娘のイヴァンカ、そして娘婿のクシュナーだったんですね。
他の人が協力しなかったからなんですよね。何もトランプファミリーが全部牛耳りたいから、クシュナーとかイヴァンカがやってたんじゃない。ワシントンのアウトサイダーとして入ってきたんですね。それに、ワシントンの既存勢力は協力しなかったのですよね。
だから今、彼(トランプ)が報復しているわけです。次から次へと連邦政府の人事を、CIAとか、あるいは検察、すべての権力機構に対して、攻撃をしかけているのは、(彼らが)協力しなかったからなのです。
ということで、第1次(トランプ政権)は本当に、安全保障の面であるとか、国内政治の問題であるとか、やりたいことをさせてもらえなかった。
ところが、今、ご存じのように、政権移行チームがあって、そして、新しく就いた(大統領に就任した)ときに100の大統領令を出したんですよね。
100の大統領令というのを調べていきますと、そんなにすべてがすべて、すごいものを書いているわけではない。基本的な政治姿勢、それをプラットフォームとしてあげているものも、中にはある。だけど、100の大統領令を出したのは、戦後初めて。
ということは、100のものを書ける人材を、もう既にそろえているってことなのですね」。
孫崎氏の講演の詳細については、ぜひ全編動画を御覧いただきたいい。