日米地位協定について、孫崎享氏「『改定してくれ』と言うのではなく、我々が具体案を出して『これで行け!』と要求するんです」~11.17 アメリカ大統領選挙と分断する社会~激動する世界の行方 ―登壇:孫崎享氏(元外務省国際情報局長)、木村三浩氏(一水会代表)、原口一博 衆院議員ほか 2024.11.17

記事公開日:2024.11.24取材地: テキスト動画
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(取材、文・浜本信貴)

 2024年11月17日午後1時30分より、東京都文京区の全国家電会館にて、ISF独立言論フォーラムの主催により、「<ISF公開シンポジウム>アメリカ大統領選挙と分断する社会~激動する世界の行方」が開催された。

 米国大統領選と連邦議会選が、トランプ氏と共和党の圧勝で幕を閉じた。

 このシンポジウムでは、「本当の闘いはこれからである」として、鳩山友紀夫氏(元総理大臣)(ビデオメッセージ)、孫崎享氏(元外務省国際情報局長)、浜田和幸氏(元参議院議員)、原口一博氏(立憲民主党・衆議院議員)、木村三浩氏(一水会代表)、船瀬俊介氏(文明評論家)、そして、奥野卓志氏(ごぼうの党代表)の7名が登壇し、2025年1月20日のトランプ氏の大統領就任式までに起こり得る事態などについて、あらゆる角度から検証が行われた。

 孫崎氏は、「米大統領選挙評価」と題し、次のように述べた。

 「公に出ている情報でも、確実にトランプが勝つ可能性はあるということがわかっていたと思うんですね。

 それは、多くの日本のメディアというのが、『全米一斉』の世論調査だけを見ていたわけですけれども、非常に大きな意味合いを持つ7つの選挙区の調査、そして私が非常に重要視しているのが、賭け率(オッズ)なんです。人が、競馬であるとか、一生懸命に賭ける時の情報は、相当真剣に集めますから。

 その賭け率が、途中から大きく変わってきたんです。トランプ優勢に変わってきた、ということもあって、私自身は、鳩山さんに『トランプが勝つ』ということを述べていたので、驚かれなかったんだろうと思います。

 それはそれとして、この大統領選挙というものが、非常に世界政治が大きく変わる中で起こってきたというところは、私は注目しておかなきゃいけないことだと思うんですね。

 第2次世界大戦が終わってから、ソ連の崩壊が終わり、そしてごく最近まで、ソ連の崩壊の後、『一極支配』になりました。

 その『一極支配』というのは、アメリカがすべてを決定する。それに従わない国は、経済制裁を受ける、あるいは首脳を交代させられる。

 これは、私が述べているんじゃなくて、ケネディ・スクールの初代学長のアリソン(米国の政治学者、グレアム・アリソン)が述べていることなんです。

 アメリカの言うことを聞かなければ、政権交代まであるんだという状況があったと思いますけれども、それが今、変革してきているんです。

 その変革の一番大きいものは、『中国の台頭』だろうと思います。どこまで皆さんがご存じかわかりませんけれども、購買力平価ベースで見ますと、中国は、圧倒的に、今アメリカを抜いているんです。

 さらに、将来の動向を見るために、研究開発というのは、非常に重要なんですけれども、研究開発も、中国は今、アメリカを大きく抜いています。

 という中で、アメリカは、この中国の台頭をいかに止めるかということが、外交の最優先になってきたと思います」。

 孫崎氏はまた、石破政権と『日米地位協定』について、次のように持論を展開した。

 「幸いなことに、石破首相は『日米地位協定』の改定ということを言いました。すぐに、一斉に、アメリカが潰しに来ました。

 『ワシントン・ポスト』が書きましたし、それから、マイケル・グリーン(米政治学者)が『選択』の巻頭に書きましたし、というような形で、4人か5人、反対(の声)をあげました。

 今まで日本の首相で、『地位協定』(の改定)ということを明言した方は、岸総理以降は、ほとんどおいでにならなかったと思うんですね。で、石破首相は、ここまで(米国からの)激しい反発があるとは、思っておいでにならなかったかもしれない。

 おいでにならなかったかもしれないけれども、この機会をとらえて、私達は『地位協定』の改定というものを、全国的に展開できる可能性があるんじゃないかと、こう思っているんですね。(中略)

 ドイツとNATO、ここに『地位協定』があるんですね。ドイツとNATOの『地位協定』の『ドイツ』という字を『日本』にする。『NATO』を『米軍』にする。そして、その条文そのものを、改定案として、石破氏に届ける。

 『改定してくれ』と言うんじゃないんですよ。『地位協定改定が必要だ!』と言うことじゃないんです。我々が具体案を出して、『これで行け!』と要求するんです。

 それを、沖縄の議会で決議してくれ、ということを申し上げたんですね。

 かなり反響があって、4月にたぶん、宜野湾と、もう一ヶ所、米軍と非常に関係のある地域で、それをやってくれ、という話になっているんですけども。

 今のような形で、石破氏が本当に『地位協定』をやるつもりがあるかどうかは、わからない。だけど、この機会をとらえて、今まで、日本のどの首相もやらなかったこと、それを私達がつかまえて、『この案で行け』ということを言った時にですね、米国もそう簡単に『これはだめだ』ということは、言えない。

 じゃあ、外務省と防衛省がどうなるか。

 今の地位協定と改定案のどちらがいいかと言った時に、今の地位協定がいいなんて言えない。

 ということで、やったらどうかということを、申し上げたいと思っているんですね」。

 孫崎氏は最後に次のように述べて、報告を終えた。

 「私が見ていると、石破さんの周りには、あまり情勢を正確に伝える人がいないんじゃないでしょうかね」。

 シンポジウムの詳細については、ぜひ全編動画を御覧いただきたい。

■全編動画 前半

■全編動画 後半

  • 日時 2024年11月17日(日)13:30~17:30
  • 場所 全国家電会館(東京都文京区)
  • 主催 独立言論フォーラム(ISF)(詳細

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