「正しいことを追及するということを日本という国民はやめてしまった!」『同盟は家臣ではない』〜岩上安身によるインタビュー第1133回 ゲスト 元外務省国際情報局長・孫崎享氏 2023.9.14

記事公開日:2023.9.22取材地: テキスト動画独自
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(文・IWJ編集部)

特集 ロシア、ウクライナ侵攻!!
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 9月14日木曜日、午後4時半ごろより、「『同盟は家臣ではない』! 米国に利用される日本は、ウクライナと同じ!」と題して、岩上安身による 元外務省国際情報局長・孫崎享氏インタビューをライブ配信した。岩上安身のインタビューはすでに1133回目となった。

 孫崎氏は、先月8月24日に新著『同盟は家臣ではない──日本独自の安全保障について』(青灯社)を上梓された。ここでいう「同盟」とは、日米同盟を指す。孫崎氏は、「日米同盟」は、相互に平等な関係ではなく、日本が家臣であり、絶対服従を強いられるような歪な関係になっていると批判する。

 孫崎氏の新著の趣旨に沿って、「ウクライナには勝ち目がない」と欧米の有識者に指摘されるようになったウクライナ紛争の現状、そのウクライナ紛争は米国によって仕掛けられた「代理戦争」であること、東アジアにおける日本の「ウクライナ化」の懸念などについてお話をうかがった。

 冒頭、岩上は「アメリカは悪の帝国であると同時に、『性悪の帝国』なんですね。史上最大の『性悪帝国』ですから、『詐欺帝国』でもありますし、こいつと手を切るのは厄介なことです」と述べた。

岩上「日本が(米国による対中国の)ばかなケンカの鉄砲玉になるという、『第2ウクライナ』になるなんてことはあってはならないという思いがずっとあったところに、なんてまあ、ドンピシャな。(先生の新刊は)『同盟は家臣ではない』、そうですよ。『家臣』というよりは、これはただの『鉄砲玉の舎弟』ではないって書いて欲しかったくらいですね」

 岩上は、「アメリカの同盟というのは、戦国大名みたいな立派な構えがあるみたいですけれども、アメリカのやってることはもっと外道ですよ」と述べ、「これ(孫崎氏新著)は、売れなきゃダメですよ! これは皆さん読まなきゃダメですよ」と訴えた。

■ハイライト

■岩上よりIWJの存続危機の訴えとご支援のお願い

  • 日時 2023年9月14日(木)16:00~18:00
  • 場所 IWJ事務所(東京都港区)

 孫崎氏は、「今、時代が変わってきているんですね」米国との関係を真剣に考え直す時期に来ている、と述べた。

孫崎氏「日本にいると、G7というものが世界中を支配している、こう思っているんだけれども。購買力平価ベースで見ると、G7の合計とBRICSの合計は、GDPはBRICSの方が大きいんですよね

 日本の多くの人は、依然としてG7の方が大きいと思っているんだけども、もうG7よりもBRICSの方が大きくなって。そうすると、他の国も『新たに仲間に入りましょう』ということになるから、BRICSプラス6カ国」。

 岩上は、BRICSに加盟を希望している国は40カ国から70カ国あり、「ほぼ、もう全世界ですよ」と述べた。

  • はじめに~ロシアのプーチン大統領が、BRICSビジネス・フォーラムでビデオ演説、西側による経済制裁が世界経済を悪化させたと非難、「重要なことは、我々の協力が、平等、パートナー支援、相互の利益の尊重という原則にもとづいている」ことだと主張!「我々の経済関係の脱ドル化という、客観的かつ不可逆的なプロセスは、加速している」、「BRICS内の輸出入業務に占める米ドルの割合は低下しており、昨年はわずか28.7%にとどまった」と報告!(日刊IWJガイド、2023.8.31号)
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 孫崎氏は「この本は、私はウクライナ戦争を止め、それで台湾(に関係する戦争)に行かない道。こういう本にしたいと思った」と述べた。『同盟は家臣ではない』という題名は、フランスのマクロン大統領の言葉「同盟は家臣ではない」を取り上げたものだという。

 孫崎氏は、今や、G7・欧州の中でも、米国に追従していけばそれでいいというわけではないと、有力な政治家が公に発言するようになった、と述べた。フランスでは元大統領のサルコジ氏も同様の趣旨の発言をしている。

  • はじめに~対米自立・独立外交を堅持するとのマクロン大統領発言に、米紙は「気にするな」と米国と欧州の一体性を強調! 帝国からの独立を求める属国の声を「気にするな」とは、どういう神経か!? 米仏大統領による電話会談で、米国が割愛した「ウクライナ紛争の終結に向けて中国との関係を維持することの重要性」を、フランス大統領府は掲出! 米国とEUの間に「隙間風」が吹く中、EUが「対ウクライナ禁輸措置」へ!? 英紙に対しEU高官は「ロシアに対する新たな制裁は終わった」とコメント! それでもG7は「対露全面制裁」にEUを参加させると意気軒昂!(日刊IWJガイド、2023.4.23号)
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  • 【第2弾! フランスのサルコジ元大統領が『ル・フィガロ』のインタビューで「ロシアは欧州の隣国。欧州の利益は米国の利益とは一致しない」と表明!】フランスのサルコジ元大統領が『ル・フィガロ』のインタビューで「ロシアは欧州の隣国。欧州の利益は米国の利益とは一致しない」と表明! クリミア半島やウクライナ東部、南部を「歴史的にロシア」だと表明し、ウクライナによる奪還を幻想と指摘!「ウクライナは中立国でなければならない」と主張! 欧州で米国・ウクライナへの逆風が吹き始めた!(『ル・フィガロ』、2023年8月16日)(日刊IWJガイド、2023.8.21号)
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 岩上は、孫崎氏の著書から、日本はいつまでも米国を喜ばせるだけの「喜び組」であってはならない、米軍が日本を守るというのは幻想である、中露北朝鮮との関係では外交努力しかないと、ポイントを紹介した。

岩上「『米軍が日本を守る』は幻想です。これははっきり、皆さん、認識しましょう。中国・ロシアに対しては、これは(米軍が日本を)守るというよりは、『イケイケ、やれやれ、武器は導入する、もっと持ってきてやるから、お前が弾け』という話ですよ。ウクライナがやってる(やらされている)のと同じです。

 中国・ロシア・北朝鮮とは、外交努力をすれば武力攻撃を受けない。恐らくここに、今までの膨大なプロパガンダもあるので、受け入れない人も多いと思うんですけど、これ以外に道はないし、このような世界を作らなきゃだめだということですよね。

 敵基地攻撃論を10やったら10倍返し食らうのは当たり前だろう、と。フライ級がヘビー級に飛びかかっていったら、こちらの1発が『コツッ』と当たったところでね、メッタ殴りされますよ」

 岩上は、ウクライナ紛争で「ウクライナの反転攻勢」が完全に行き詰まっている現状、米国のウクライナ紛争への関与、バイデン政権の圧力を受けて日本政府が防衛費増額や防衛装備移転三原則の緩和に着手し、6月にはドイツで実施されたNATOの史上最大規模の空軍演習に自衛隊が参加したことなどを紹介した。

 しかし、日本のマスメディアは、ウクライナ軍の惨状や、米国の圧力についてきちんとした報道をしてこなかった。

岩上「いい加減に、インチキな日本の記者クラブ・プロパガンダメディア、新聞・テレビからのデタラメ情報から目を覚ましてもらいたい。

 (孫崎氏は、安倍晋三元総理が生前、米国がNATOを東方に拡大し、ゼレンスキーが東部2州の自治を尊重しなかったから)『戦争が起きた』、という趣旨の発言をしていた、と明らかにした。安倍総理がこれを言ったということ。(中略)

 僕もJFケネディの暗殺は、オズワルド単独犯行説を信じているわけではない。ただ、注目すべきは、そうやってケネディが殺された後、ジョンソン副大統領が大統領になって、そして米国からの言いがかりの偽旗作戦のトンキン湾事件が起こされ、(米国はベトナム戦争に参戦して)北爆を開始するわけですよね。

 そこのほんの3年ぐらいの流れを見ていると、安倍さんがこのウクライナ紛争に関して『これはおかしいんじゃないか』と正しいことを言っていたら、どういう形であれ、安倍さんは排除されてしまって、岸田内閣になって以降、アメリカ追従でいってしまって、メディアも全部追従で行ってしまっている。

 この状態というのは、やっぱり、重ね合わせると、ものすごく怖いことなのではないかと。あの後、お話をうかがって、じっくり自分で考えてみたんですけれども、怖いように思っています」

 岩上安身がここで述べているのは、安倍晋三元総理の銃撃事件からほぼ1年となる7月6日に行ったインタビューのことである。

孫崎氏「まずね、非常に重要なことは、その次のところにまさに書いてあるんです。基本的に、私は、何も安倍さんの支援者じゃない。ずっと安倍さんを批判してきた。『集団的自衛権』から。

 そのグループに属しているということを、まず考えてほしいんですけど、この安倍さんがウクライナ問題で述べたことというのが、『日本では報じられなかった理由がどうしてなのか』というのを、考えてほしいと思うんです。

 まず、第1に、ウクライナ問題について、さまざまな見解がありました。メディアでウクライナ問題について話を聞くとすると、2つのポイントがあると思うんですね。

 一つは、その人間が社会的に重要な地位にあるかどうか。だから重要な人間であって、その人がウクライナ問題をどう考えているかと言うんだったら、これは報道する価値がある。これが一つですね。

 もう一つは、事実に一番近いことがわかっている可能性のある人間。

 この2つのクライテリアがあると思うんですね。そうすると、去年の3月ぐらい、日本の政治の中では最も力の強かったのは、安倍さんなんです」

岩上「間違いない」

孫崎「岸田さんに対して、安倍派100人が『もう支持しない』と言ったら、すっ飛ぶわけですから。

 だから、日本の国内において、最も力のある人の発言をなぜ(報道)しないのかという問題が一つ。

 それからもう一つは、情報というのは、一番重要なのは1次情報ですよね。プーチンが何を考えているか、ということであれば、誰の見解よりもプーチンに会って聞いた人の見解がまず重要であると。

 それを一番知っているのが安倍さんなんだから。27回ぐらい、直接話を聞いている。その人の、プーチンの考え方ということを示すことなく、筑波大学の先生であるとか、そういうようないい加減な人たちがプーチンを何を考えているかということをしゃべったんです」

岩上「ああ、中村さん(中村逸郎筑波大学名誉教授)ね。中村さんは名前をずっと出さなきゃだめですね。いい加減、中村は批判対象にしないと。『MBS』ずっと(中村氏を)使い続けています。本当におかしい」

孫崎氏「どの視点から見ても安倍さんの発言を報道しない理由はないんですね。『報道しない理由がないにもかかわらず、報道してこなかった理由は何か』ということを1度考えてみていただきたいんですよね。

 そうすると、最も力があって、最も1次情報(を持っていて)一番知っている。これを報道しないという理由は、出てこないんですよ。

 唯一は、『安倍さんよりも強いアメリカと異なっているから、出さない』というそれくらいで。日本の今のメディアというものが腐りきっている」

岩上「そして政府も腐りきってる」

孫崎氏「日本で一番力のある人の発言も抑える。そして、日本で一番、1次情報として入っている人の情報も押さえる。これに多くの国民が騙されている、というこの構図を、まず知るべきだと、もう」

岩上「やっぱり、安倍さんが言ったことは、いろいろな形で残されているじゃないですか。残されているもの。BANされたりとか」

孫崎氏「残されているというんだけど、例えば私は講演に行きますよね。

 で、『安倍さんが日本のテレビでこういうことを言いました』、あるいは、『イギリスのエコノミストでこういうことを言いました。これを知っていますか?』と聞くんですよ。

 100人ぐらいいると、知ってる人は2人ぐらいしかいないんですよ。分かります?

 ここで知っている人に『じゃあ、あなたどうして知っているんですか』と聞くと。『いや、孫崎さん、あなたの発言で知っています』みたいな形で、もうこの事実は知られてない。

 その知られていない理由が何だったかっていうことを真剣に考えるとね。いかに、日本のマスコミというものが、アメリカに牛耳られているかということがわかります」

岩上「アメリカは、戦後3度4度にわたる戦争をしています。日本、それから朝鮮戦争、ベトナム、それから、アフガニスタン、イラク。

 そして今度、再度戻って中国と、あるいは北朝鮮との戦争を、日本にやらせるという。ふざけた奴らです。安倍さんは、正気だったんですよ。驚いたことに、ですけれども。

 でも安倍さんは正気で、きちんと時間をかければ、そう学習能力は速くなかったかもしれないけれども、やっぱりちゃんと、当たり前のことを当たり前に理解する人だったんだ。

 それをちゃんと言うだけの、それなりの腹もあった人だったんだ、ということに関しては、推さなきゃいけないと思うし、安倍言動というのを広める運動するべきだと僕は思っていますし、IWJでもできることはします。

 もちろん安倍の余計なことは、どうでもいいですよ。『あんな人たちに負けない』とか。こういうことが、でも、安倍さんと同様のケネディ暗殺事件から、ベトナム戦争の北爆につながった歴史を、みんなに学んでもらいたいんですよね」

孫崎氏「そしてもう一つ追加的に言うと、こういう発言があった。

 そして、それは我々から想定するとアメリカへの配慮であるということを想像するんだけれども。

 これに対して、今度は日本の『エコノミスト』が、去年の5月ぐらいに書いていること。それは、NATO・G7で『最大の敵はロシアである』という形をまとめようとしている。それに岸田さんが参画しようとしている。その岸田さんに(安倍さんは)後ろから弓を引くそういうことをしているんだ、という記事があるんですね。

 もう一つ。それだけじゃなくて、それに対してその人が言っているのは、『岸田政権の米国通の一部は怒りを隠さない』と言っているんですよ。と、いうような形で、もう既に岸田さんの岸田政権のある一部は、安倍さんの行動に対して怒りを隠せない。(安倍さんを)『後ろから弓を引く』、そういう人物として位置づけていたということも重要な事実です」

 孫崎氏は「岸田政権の米国通の一部は怒りを隠さない」というくだりについて、上述の7月6日の岩上安身のインタビューで、『レコンキスタ』に発表した論考を詳しく紹介している。

岩上「安倍政権の時に、長いこと岸田さんは外務大臣をやりました。あの外務大臣としての動きと、それから岸田さんが(政権を)禅譲された途端に変わって、岸田政権がそう動きだしたのかということ、『スイッチ』が早かったのか。

 それとも、安倍さんがいる時でも、こっそりと岸田という人は、『僕はハト派の振りをしてますけれども、いざとなったら、皆さん(米国)の言うとおり動きますからね』ということを撒いていたのか」

孫崎氏「撒いていましたよ」

岩上「岸田政権になって、突然(対米追従)になったわけじゃないんですね。だから、岸田(の態度は)2つあったから、どっちの岸田なのかを鮮明にしながら、お話をうかがいたくて。

 やっぱり、岸田さんは面従腹背だったみたいなところがあるってことですね?」

孫崎氏「(岸田政権が)発足したすぐ直後から、極めて鮮明に『アメリカの言う通りに動く』ということを言ってましたから。

 今度、林(芳正外務大臣)さんが辞めたじゃないですか。そして上川さん、新しいの持ってきたじゃないですか。というような形を見ると、林さんはやっぱりちょっと違ったんですよね。アメリカ追随だけじゃない。

岩上「(林氏は会見でも)ぼんやりぼんやり、曖昧あいまいに回答する人です」

孫崎氏「というような形で、(林氏は)少し全面的(に米国追従)でないようなものを含んでいるということは、アメリカも察知して。

 結局、彼を外しているということだから、岸田さんが、本当はどういう人間であるか、どういうことを考えているか、ということは、確実に安倍政権の時にチェックしていると思います」

 新たに外務大臣に就任した上川陽子氏は、ハーバード大学ケネディスクール卒業、米国のトップクラスの環境で、政治学・国際関係学を学んでいる。

 孫崎氏は、こうした岸田政権の動きは、ウクライナ紛争が始まってからだと指摘した。孫崎氏は、2021年の後半から、NATO軍がプーチンを戦争に引き込もうとしていたが、安倍氏は戦争になってから「この問題をしゃべらなきゃならない」「我々はちゃんと物事を見なきゃいけない」と明確な形で言った、と述べた。

孫崎氏「21年の9月ぐらいから、アメリカがものすごく、ロシアを誘導するような動き、挑発した。この挑発はそんなに世界的に知られている事実ではなかった、その時は」

岩上「その時に全空間、西側の全空間が黙り込んだわけです」

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