2023年5月22日、午後6時より、東京都千代田区のスペースたんぽぽ(たんぽぽ舎)にて、山口大学名誉教授(政治学博士)の纐纈厚氏を講師に迎え、新ちょぼゼミシリーズ「台湾有事と自衛隊」が行われた。
纐纈氏は、講義の冒頭、日本が置かれている状況について、次のように語った。
纐纈氏「例によって、話があちらこちら飛びますけれども、やっぱり、この話の前に(G7広島)サミット(2023年5月19日~21日・於広島市)の話を少しさせてください。(中略)
総じて、このサミットの評価をめぐっての話なんですけれども、結論的に言うと、『平和のまち広島』が、戦争に油を注ぐ、そのきっかけを作る街になってしまった。いわゆる、『グローバルサウス』と言われる、インド、インドネシア、ブラジル等々の国が、わざわざ広島に呼びつけられたのか、自ら自主的に出向いたかは別にして、ある種の『踏み絵』を踏まされた。
そういう図式というのが、非常に際立ったサミットであって、同時的に、世界がこれだけ多極化・多層化しているにもかかわらず、そういう国際のリアリズムというものを真逆の方向性をもって、アメリカは強引に束ねていこうとしているという、その流れが非常に浮き出たサミットであったと思います。
一方、中国のメディアがそこに非常に関心と、それから警戒心をあらわにしていることはご存じの通りだと思いますし、それから、ちょっと内々の話でいうと、新任の中国大使にもこの間面談してまいりました。4月でしたけれども、そこでもやはり、(中略)非常に流暢な日本語を話される方ですけども、余りにも、対米従属ぶりが顕在化している。そういう中で、どうやったら、自立的な、あるいは、日本的な安全保障政策を紡ぎ出すことができるのか? 本当に、みんなで考えなきゃいけない。
その『みんな』でという中に、日本とかアメリカとか、心ある欧米諸国民の多くの方も入っていることになると思います。もちろん、ロシアのプーチンも侵略戦争をやっているわけですから、これはもう待ったなしに、我々は断固批判の目を向けなきゃいけないことは言うまでもない。が、ただただ、経済制裁や軍事制裁をすることによって、この戦争が終わるわけではない。
私は、ロシアの専門家とずっと話しているときに、『この戦争はいつまで続くと思うか』って、ちょうど半年(前)ぐらいに聞いたときに、『いや、これは5年から10年は続く』と言っていました。私は、最近出した本の中には、せめて3年か5年って書きましたけれども、どうやら、それはうれしくない誤りだったと思います。
非常に耐える力、耐性の強いロシアに対して、経済制裁というものはほとんど効き目がない。ロシアの経済成長率、この1年で鈍化していない、どころか、場合によっては、プラスと試算できるようなものができているという。
それを『底力(ていりょく)』だと言って、驚くわけではなくて、非常に、ある意味では長期戦を敷きやすい国家であるということがわかっていたんですけれども、そこら辺、耐性のない中国は、戦争が非常にできにくい国である、ということもわかっているわけですね。
そういう意味でいうと、この戦争を終わらせるチャンスというのは、実はいくらでもあるのに、この広島サミットで、あれだけのメンバーが一応そろっているわけですから、場合によっては、プーチン、習近平両氏に対して、招聘をするという、プラスアルファで、1(いち)がゼレンスキー大統領だったんですけども。
あと、プラス2(に)で、ロシア、中国の二人を呼び寄せて、それで会談をやるという、そういう非常に大胆な戦略的な外交戦略というものを本来取れるべき、あるいは取るべき岸田政権が、ただただアメリカの意のままに、アメリカの描いたシナリオ通りにやってきたと。
それから、もう一つ非常に明白だったのは、先般、岸田さんがキーウ、ウクライナを訪問したときに、『しゃもじ』を持って行った。広島の『しゃもじ』を持って行ったということで、ちょっと話題になりましたけれども、もちろん、段ボール箱一箱にしゃもじを持っていたんですけれども、実は、もう一つの段ボール箱には札束が入っていたって言うんですね。
それは、本物のお金っていう意味ではありませんよ。もちろん、軍事支援・経済支援をめちゃくちゃやってきて帰ってきた。で、そのときに、(サミットに)ぜひ来てくれと。『いや、やっぱり戦地を離れられない』と言ったんだけれども、アラブに行ったついでに、リアル参加ということに、ゼレンスキーは踏み込んだわけですね。(中略)
私は今回の広島サミットについて、いろいろなところで同じようなことをしゃべっていますけれども、非常に汚点のサミットと言わざるを得ない。というふうに思っています」
台湾有事、自衛隊の問題についてなど、纐纈氏の講義の詳細は、ぜひ全編動画を御覧いただきたい。