2025年2月14日、岩上安身による黒龍會・アジア新聞社会長田中健之氏インタビューの第4回を初配信した。
田中氏は、2024年10月に、『天使の並木道~ウクライナ人がウクライナ人をジェノサイドし続けた8年間の記録 2014~2022』(ヒカルランド)を編集・上梓した。
同書は、ウクライナでユーロマイダン・クーデターによって親欧米政権ができた2014年から、ロシアによるウクライナへの軍事介入(プーチン大統領の「特別軍事作戦」)までの間に、ウクライナ東部のドンバス地方で、ウクライナ民族主義者(ネオナチ)やウクライナ軍によって、同じウクライナ国民であるロシア語話者に対して行われてきた、差別、虐待、ジェノサイドを記録した、ロシアやウクライナのジャーナリストによる膨大な量の写真を中心に構成されている。
インタビューの第1回から第3回は、ぜひ以下のURLから、会員向けサイトのアーカイブをご視聴いただきたい。
第4回インタビューでは、まず「マリウポリの悲劇」について、田中氏に話をうかがった。
マリウポリは、ウクライナ東部ドネツク州にある、アゾフ海に面した港湾都市。2014年にユーロマイダン・クーデターが起きると、マリウポリでは、キエフ政権から独立してドネツク人民共和国の成立を支持する住民が、多数を占めた。
しかし2014年6月に、ドネツク人民共和国の部隊と、ウクロナチ(ウクライナのネオナチ)であるアゾフ連隊との戦闘の末、マリウポリはキエフ政府軍の支援を受けたアゾフ連隊によって陥落し、キエフ政権側の支配地域となった。
2022年2月に始まったウクライナ紛争では、ロシア軍に包囲されたアゾフ連隊が、アゾフスタリ製鉄所の地下に立て籠もって抵抗したが、2022年5月20日に、ロシア国防省がマリウポリの完全掌握を発表した。
インタビューでは、2022年にマリウポリが解放された時の写真を中心に紹介した。
続いて紹介したのは、2014年7月27日の「血の日曜日」と呼ばれる、ウクライナ軍による住民虐殺である。
この日、ウクライナ軍は、ドンバス地方ドネツク州のゴルロフカ市中心部をロケット「グラート」(クラスター爆弾)で砲撃し、4人の子供を含む20人の民間人が殺害された。
それ以来、7月27日は「追悼の日」とされ、「血の日曜日」と呼ばれている。
インタビューでは、ウクライナ軍によって殺害された民間人の写真を紹介した。田中氏は、「2014年に、これはまさに、ウクライナ軍がウクライナの国民を砲撃しているわけです」と述べ、「軍が、市民を殺した」「民間人ですよ。ジェノサイドですよ」と強調した。
ウクライナ軍によって殺害された中には、生後10ヶ月の子供とその母親もいた。23歳のクリスティーナ・ジュークさんは、生後10ヶ月の娘キラちゃんを腕に抱きしめたまま殺害され、死後、「ゴルロフカのマドンナ」と呼ばれるようになった。
田中氏によると、ドネツク人民共和国では、7月27日は「ウクライナ軍の攻撃によって尊い命を落とした子供達を追悼する日」とされているとのことである。
2014年6月8日、ウクライナ軍(キエフ軍)はドネツク州北部のスラビャンスクを、ミサイルと砲撃で無差別攻撃した。この時、砲弾が命中した民家にいた6歳のポリーナ・スラドカヤちゃんは、全身に破片が飛び散って死亡。ウクライナ軍による最初の子供の犠牲者となった。
ドネツク人民共和国では、2014年以降、2023年8月までに、237人の子供が、ウクライナ軍によって殺害されたことが確認されている。
田中氏は、「私は2014年から報道を見ていました」と述べ、次のように語った。
「(ウクライナ軍は)狙って、幼稚園、小学校、老人ホーム、病院を狙うんですよ。一番弱者がいるから。毎日ですよ。
その報道を、ずっと見ていました。日本でも報道されたはずなんですけれども、全部消されている。おかしいんですよ。
『記憶にありません』って、よっぽど日本国民のほとんどが、脳軟化症が痴呆症になったのか、わからない。だって、そんな昔じゃない、たった10年ぐらい前の話。
ニュースで連日やっていて、『ウクライナで内戦みたいになった』と。どちらが悪いということは、ニュースではわからないけれども。だけれども、(ニュースは)ありましたでしょう?
そういったものを、何で国民が全部忘れちゃうのか。意図的に忘れるんでしょう。検索しても出てこない。おかしいでしょう」。
さらに田中氏は、2014年以降のドンバス紛争での、ネオナチによるロシア系住民への虐殺行為を、次のように語った。
「この頃は、毎日砲撃されるわけですよ。買い物(に行くのが)が危ないので、マイクロバスを借りて、部落単位で買い物に行くわけですね、お年寄りが。そこへ今度は、ネオナチがロケットランチャーを撃つんですよ。
マイクロバスを吹っ飛ばして、生き残った人間を、今度は拳銃で、みんな頭を撃って殺していくんですよ。
それで、『ロシア軍がやった』と。装備も似ていますからね。ロシアがやったみたいに工作をして、動画を撮るんですよ。
それで西側に持っていって、『ロシアにやられた』って言うんです」。
田中氏は、「相当、虐殺事件をやっていて、全部ロシアのせいにしている。それで、アメリカの映画会社とかとくっつく(流させる)んです」と指摘した。
さらに田中氏は、現在のウクライナ紛争では、ウラジオストクや、ハバロフスク、サハリンなどの極東ロシアに移民したウクライナ人が、ロシア軍として特別軍事作戦に参加して、ウクライナ政府のネオナチの軍隊と戦っていると指摘し、「国家同士の戦いじゃない。民族戦争でもない」と断じた。
著書のタイトルにもなった「天使の並木道」とは、2017年8月27日に、ドネツク人民共和国のカリーニンスキー地区の公園に建立された、犠牲になった子供達を慰霊する碑の名前である。
田中氏は、「子供達の悲しみ、この悔しさを絶対に忘れてはいけないから、本のタイトルをここから取った」と明らかにし、「私の本は、ある意味、亡くなった子供達を追悼する意味でも出している」と語った。
インタビューの後半では、「ドンバスで行われた、ウクライナ軍による戦争犯罪と人道に対する罪」や、「ウクロナチ(ネオナチ)に乗っ取られたウクライナ政府」について、田中氏にうかがった。
さらに、「人種・民族・言語的理由による差別」と題し、2017年以降キエフ政権が、公共部門や教育、メディアにおいて、ウクライナ語以外の言語の使用を禁止する法律を制定し、ロシア語話者を迫害してきたことや、ネオナチ政権が、ナチズムに勝利したソ連時代の歴史を改竄している事実を検証した。