「歴史的円安」が凄まじい勢いで進行中! 悪性インフレ、株高、都市部では地価高騰を引き起こす一方、地方では逆に空洞化! 二極化が進み、富裕層が高笑いする一方で庶民はどう「生活防衛」すればいいのか!?〜岩上安身によるインタビュー第1162回ゲスト エコノミスト・田代秀敏氏 第5弾 2024.6.3

記事公開日:2024.6.11取材地: テキスト動画独自
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(文・IWJ編集部)

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 2024年6月3日、岩上安身はエコノミスト田代秀敏氏へ連続緊急インタビューの第5回を行った。

 「歴史的円安」をめぐる田代氏へのこれまで4回のインタビューは、ぜひ以下のURLから御覧いただきたい。

 17年ぶりに解除されたマイナス金利は、あっという間に1%を突破した。株高と都心部の地価高騰も止まらない。

 岩上安身は、「たまたま土地を持ってた人、たまたま株を保有していた人」は、「高笑い。笑いが止まらない」状況だと指摘した。

 しかし、一方で資産を持たない人々はどうか。第5回のインタビューの前半のテーマは、金融資産も不動産も持たない「庶民はどう生活防衛すればいいのか」。

岩上「(この緊急インタビュー・シリーズを)やり始めた時には、いよいよ『マイナス金利解除か』という話だったんですけれども、長期金利が1%超えしちゃいましたね。

 田代さんは、かなり早い段階で、『長期金利2%になったら、借り替え・借り替えで、何とか持たせてもらっているゾンビ企業。ものすごい数あるわけです。そういう企業は、『たちまち倒れていくだろう』と。

 それから、一般人のローンの、一番大きいのは住宅ローンなんですけど。思いがけず多いのは、消費者ローンなんですね。キャッシングとか、カード・ローンとか、サラ金だとか、リボ払いとかね。

 きわめて高金利の買い物をさせられる仕組みであることには変わりないわけですよね。最高の税率17%ぐらいですよね。とんでもないことになるわけです、これ。それから自動車ローン。

 人間は習慣の動物ですから、すべての生活習慣とか、消費行動を、『昨日までとちょっと違うんだ。すごい勢いでいろいろ金利の時代が変わってんだから、ぱっと頭を切り替えよう』と(多くの人は、そういうわけにはいかない)。

 だから大変気をつけるしかないな、と思っているんですね。

 『どう生活防衛すればいいのか』というお話を、前半はさせていただきたいと思っています」

■ハイライト

  • 日時 2024年6月3日(金)17:00~
  • 場所 IWJ事務所(東京都港区)

田代氏「(事業をやっていく以上、資金を借りるのは当たり前だが)今のように、実質的に景気後退が起きてると、本業での利益から利払いができない。つまり、それ利払いしちゃうと、他の賃金が払えないとか、そういうことが起きる。

 そういう企業のことを、『ゾンビ企業』という、と。言い方が悪いですけどね。そういう企業が、さらに追加で借りなきゃいけない」

岩上「だから、借金が膨らんでいく。低金利だったから、頑張ろうで、(利子で膨らんでいくことを)考えなくてもよかった」

田代氏「ほとんど0%の金利だったから。

 おっしゃる通り、元本の返済だけ考えればよかった。銀行からしてもね。それを考えると、一気に(貸した資金を)回収して、倒産させてしまうよりも、存続してもらった方がいいから。追加の融資に応じる場合も少なくないわけですよ。

 その構造が、今ここで(崩れていく)。銀行自身が慌てるわけです。前提が完全に狂ってるわけですよね。0%だった長期金利が、1%(に上昇)。しかも、わずか2ヶ月間ですよね」

岩上「そうですね。超低金利時代が長く続いてきました。

 17年というと、ある程度高齢の人にとっては単なる『ひと昔』ですけれども、若い人にとっては、かなり大きな生活体験を伴った年月なわけですよね。

 (「金利のある世界」の経験がない若い世代の人々が)、単純な『単利』で考えると、『100万円借りたら、毎月1万円ずつ返せばいいんでしょう』みたいな感覚。そうじゃないんですね。『複利』になるんです。

 『複利』というものを、金利が複利で膨れ上がっていくことを、本当に実感しながら、元本を削って削って削って。なんとか、氷塊を崩すようにして削って、返し切るということの苦しさを、実感として理解できていない人たちは、少なくないんじゃないかなと思うんですね。(中略)

 例えば、これから結婚して、住宅を買おうかなと思っている人。25、6歳から30歳ぐらいまでの人は、ざらにいるわけですよ。そういう人たちは、(複利で膨れ上がっていく借金を、身を削るようにして返していくという)経験がないんですよね」

 岩上安身は、身内が不動産を買うというので、金利がつく中で返済するのは、本当に大変なことだと説得している、というエピソードを紹介した。

岩上「日銀による円買い介入。4月と5月に大きく、円安の傾向から円高へ戻したことが2度ありました。

 この時には、おそらく介入したんだろうということで、(神田財務官)テレビカメラに囲まれながら、『申し訳ないですが、今申し上げることはできません』と言っていたんですけど。

 実際には、4月と5月に2度あった円買い介入は、財務省が5月31日に、4月26日から5月29日の為替介入実績を公表したと。介入総額は9兆7885億円。これがどれぐらいすごいかというと、過去最大だった。

 過去最大なんですが、どのぐらいそれで効果が出たのかというと…。

 5月29日に、国内債券市場で長期金利の指標となる新発の10年物国債の利回りが、1.07%まで上がってきたんですね。

 債券価格が下落したけど、さらに30日には、1.1%に上昇。

 2%という数字をひとつ、田代さんは掲げておられる。ある意味の『レッドライン』『イエローライン』だよと言っておられるわけですよ。

 多くの人は中小企業で働き、そして自営業をやり、そして住宅ローンを抱えていたりすると。そういう人たちは『2%』という数字を意識しなさいね、と。僕は、田代さんの警告だと思っているんです。意識しておくべきだと。気がつくと、あ、じわじわ金利が上がってきているじゃないか、迫ってきているじゃないか、と(なってからでは遅い)。

 すでに、『2011年12月以来、約12年半ぶりとなる高水準』に上がってきている」

田代氏「これね。1日で、要するに0.03ポイント上昇してるわけでしょう。これは、もう驚くべきことですよね。この上昇スピード」

岩上「これはどういうことなんでしょうか。

 例えば、日銀が『ゼロ金利政策を解除する』と言いましたよね。解除すると言って、いろいろな政策を、『やめました』といったりしました。『国債の購入だけはやめるわけにいかない』ということではありましたけれども。

 でもその後は、フリーになったと言いますか、市場原理でもう動き出しちゃったということですか?」

田代氏「まず『金利って何か』というのを、よく考えなきゃいけなくて。

 長期金利とは要するに、『新規発行の10年満期日本国債の利回り』なんですね。これは、ちょっと詳しい話は、経済学や金融論の本で確認していただきたいのですけど、国債でも社債でも、債券の利回りというのは、その債券の価格・取引される価格と、逆向きに動くんです。

 つまり、金利がついて利回りが上昇している時は、その債券・国債を含む債券の取引価格は、下落してるんです」

岩上「価格。価値ではなく、価格ですね?」

田代氏「価値というのは、経済や金融の世界では、『価格×数量』のことを、VALUE(価値)と言うんですね。そこにはよく社会学などで考えるような、形而上的な意味は与えてないんです。本当にその『金額』ということなんです。(中略)

 そうするとね。これは恐ろしいことを言ってる訳ですよ。つまり、長期金利、『新規発行10年物の日本国債の利回り』が上昇しているということは、国債の取引価格が下落してるわけですね。

 つまり、日本銀行は長く、長期金利を0%に抑えたということは、いわば、日本国債の価格をマックスのところまで引き上げたわけです。

 そのゼロ金利を解除するということは、金利は上がっていくわけですね。上がってくるということは、マックスまで上げた国債価格が下落することです。それを認めてるってことなんですよ」

岩上「安売りと」

田代氏「安売り。『今よりも、国債は、安い価格で取引されるようにします』と、言ってるわけですよね。『えっ』と思うわけです。

 国債というのは、国の借金の証文ですよね。これを買っているのは銀行だけど、銀行がどうやって買っているかというと、預金から買うわけです。(銀行には)預金者がいるわけですよね。だから、預金者は自分は日本国債なんて1枚持ってないといっても、実は、間接的に御自分の銀行預金は国債に化けているわけですね。

 その(自分の銀行預金が)化けている国債の取引価格が、下落し始めているんです」

岩上「恐ろしいですね」

田代氏「そのことが、『金利が上昇する』という意味なんですね。しかも、これが『日銀の想定を超えて止まらない』ということは、国債の取引価格が想定よりも早く下落しているんですよ。

 下落することは覚悟しているから、ゼロ金利は解除したんですけど。それが『思ったよりも早く下落してる』ということは、端的に言って『日本国債の売り圧力が高まってる』わけです。

 日本国債を持っている人が、売りたいと(思っている)。一番思ってるのは、日本銀行なんです、実は。だって、存在している国債の半分ぐらいは、日本銀行が持っているんだけど、それ以外にも持ってるところはある。

 そこが、『国債を、まだ高いうちに売り抜け抜けよう』と考えたら?

 売り出す量が変わりますよね。そうすると、国債を売る側、つまり国ですよね。それが国債の発行のペースを変えない限り、それは国債価格を押し下げますよね。

 そんなに早く国債金利が上がっていくということは、国債価格が下落するわけですよね。だったら『早く売らなくちゃ』。

 まあ、大きな資産だから、例えば計画があって。『今年は何100億円。来年は何100億円売っていく』と考えていたのが、『いや、来年の分も今、売っちゃいましょう』となると、ますます早く価格は下落しますよね。それは、現象としては、ますます早く金利が上昇していくわけです。

 ただ、『金利が上昇する』と聞くと、『それで銀行の預金金利は増えて、ウハウハになる』と」

岩上「預金者にとっては、どうなんです?」

田代氏「だけど、預金者も、預金してる預金の入った先のかなりの部分は国債なんです。

 だから日本銀行だって、どうして国債を買っているかといったら、それはたどっていけば、預金なんですよ。銀行にあった預金が、さらに日本銀行に預金されていて、それを担保に(国債を)買ってるわけですよね。その重要な入った先の国債の価格が今、『日本銀行の想定を超えて下落してる』と。

 しかも、2011年12月ですよ。『あっ』と、思うわけですよね。いわゆる『アベノミクス』、いわゆる『異次元金融緩和』。日銀の言葉を使えば、『量的質的金融緩和』は、2013年4月4日から始まったでしょう。その前の数字まで、来てるんです、もう」

岩上「自民が『デフレデフレ』と、民主党の政権を批判していた時代に戻っているっていう」

田代氏「本当に人類の経済史上に残る、破天荒な金融緩和によって、長期金利をゼロまで押し込んだわけですよ。で、それが、全部、今、キャンセルされたということですね」

岩上「なるほど。やってきたことがすべて無駄になった、と」

田代氏「その当否は別として。現状は、おっしゃる通り、世界に見られない(日銀のゼロ金利政策が、キャンセルされた)。

 通常、中央銀行は短期の金利、いわゆる『翌日物』とか、短期の金利を操作することで、間接的に長期金利に影響を及ぼそうとするわけだけど、日本銀行はダイレクトに長期金利そのものを、ゼロに引き下げたわけです。

 それを今、解除したわけですよね。それは上がるんだけど、その上がり方が、想定を、多分超えたんだろうと思うんですね。

 まさかそんなことは、言いませんよ、植田総裁も。言った瞬間に、日本国債を持っている人は、みんな売りますから。そうすれば、国債大暴落ですよね。

 だから、冷静な顔をして、冷静にお話しになってるんだけど、大変なことですよね」

(…会員ページにつづく)

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