岩上安身は2023年11月28日、エコノミストの田代秀敏氏に、24日に次ぐ連続インタビューの第2回を行った。
イントロダクションとして、岩上安身は、田代氏のご専門である中国経済に触れながら、「中国経済が世界全体に関与したため、(田代氏は)世界経済エコノミストになっています」と、中国経済の現在の世界経済における位置と、それが国際関係に持つ意味について、このインタビューの視点や狙いとも重なる論点を提示した。
田代氏は、この話を受けて、次のように述べた。
「電化製品は、中国は全世界の40%を作っています。その20%を国内で消費し、残りを海外に出しています。中国経済は世界と密接にリンクしているわけです。中国でそういう電気製品を作るためには、世界中から部品や素材を調達しているわけです。
そこに、アメリカが手を突っ込んでみたら、世界が大混乱になってしまって、今、世界的インフレーションになってきたわけですよね。これは、日本は大変なことになってしまって、日本はインフレーションの起きる条件はないのに、インフレーションが起きてしまっている。生産性が高まったわけでもないし、新たに需要が発生しているわけでもない。ただ、物価が上がっているという恐ろしい時代になっています」。
この田代氏の話は、現在の日本経済が、米国による中国制裁とロシア制裁という二重の制裁の影響を直接受けてしまっていることを指摘したものだが、問題は、大手メディアが、この日本のインフレーションの根本原因について、「批判を伴った言及」を、一切できないことである。言及するメディアも、それがあたかも「自然現象」かのごとく、良くても、「悪者」の中国とロシアを懲らしめているのだという、現実を直視しない議論ばかりだ。
バイデン政権に、日本人の生活を蝕まれている自覚がまったくないのである。
岩上安身は、田代氏の話を受けて「一つは円安であり、もう一つはエネルギーを輸入する国家だから」と、インフレーションの原因に触れながら、エネルギー輸入国という点で、中国経済と日本経済が同じ特徴を持っている点を指摘した。
さらに、ウクライナ紛争以降、ノルドストリーム爆破やロシア制裁と、それに対応したロシアのエネルギー戦略の転換などにより、世界のエネルギーの流れが大きく変化したことに言及し、エネルギーは世界の生産活動の起点にあるため、このエネルギーの流れの世界的な変化が、中東のありかたとリンクすると述べた。
冒頭で、中国、アメリカ、中東といった3つの国際関係における、現在のメインプレイヤーが出てきて、大きな図柄が描かれてゆくことになる。
岩上安身が、ノルドストリーム爆破による欧露分断に触れながら、ウクライナ紛争において、アメリカが、ウクライナをヒットマンに仕立てておいて、戦況が危うくなり、イスラエル支援が大切になってくると、もうウクライナ支援はしないという姿勢を見せ始めている点を、「やくざの世界にも劣る」と批判すると、田代氏は、ギリシャ債務危機の時の話題で、こう応えた。
「それは、いつものアメリカのパターンです。
たとえば、ギリシャ債務危機です。もともとはギリシャに国家的財政の帳簿を上手くごまかして、こうやったら、バブルを起こせますよと知恵をつけたのはゴールドマンサックス(ユダヤ系金融機関)でした。それで、ギリシャ国債が飛ぶように売れて、とんでもない値段がついたわけです。
ところが、次に、ゴールドマンサックスは、これはインチキなんですよというレポートを出したのです。みんなびっくりして一気に売りに出ました。そのときには、ゴールドマンサックスは、空売りも仕掛けているし先物売りも仕掛けているから、下がれば下がるほど大儲けになります。国債が上がるときにも儲けて、下がるときにも儲けたのです」。
ここから、「現代のユダヤ人問題」へと二人の対談は入っていった。
現代の米国において、バイデン政権のブリンケン国務長官とイエレン財務長官に象徴されるように、支配層は政治も経済も、メディアも、エンタメもユダヤ人に握られている、という事実があり、そのユダヤ人による米国支配が、現在のガザでのイスラエルのジェノサイドを後押ししている。また、そうしたユダヤ人の影響力を指摘することが、現在、タブーではなくなりつつある。
これまでのように、ユダヤ人に対して批判めいたことを口にすると、即、反ユダヤ主義のレッテルを貼られて、言論の場から退場させられるという状況が変わってきている。
岩上安身は、この点について、こう述べた。
「金融の世界もユダヤ人が牛耳っているところがあって、ゴールドマンサックスもユダヤ系金融機関なわけです。(中略)
ユダヤ金融機関が、すべてを牛耳っているという話は陰謀論になります。ユダヤ系金融機関の中には、勝ち組があったり、負け組がある。ただ、その勝っている金融機関がかなりえぐいことをやっているのも事実です。それを指摘するのは反ユダヤ主義ではないと思います。そういう指摘がもはやタブーではなくなってきたのです。(中略)
(ユダヤ系と言っても)イスラエルとシオニズムにどれだけ親和性を持っているか。イスラエルを建国したこと自体が神に背くという発想をするオーソドックス(正統派のユダヤ教徒)もいます。シオニストの発想は、非常に好戦的で帝国主義的で植民地主義的です。さらに、アメリカを使うということに何の躊躇もありません。アメリカの富は公平に分配されるべきなのに、イスラエルに傾斜的に使わせろと圧力をかけていることが明らかになってきました。これは大きく世界を変えることになるかもしれません」。
岩上安身は、アメリカとイスラエルを中心とした「シオニズム」の本性が、今回のイスラエルによるガザのジェノサイドで、世界中に明らかになったことの世界的な影響について、述べた。
このあと、二人の対談は、11月11日に行われたアラブ連盟(21ヶ国・1機構)と「イスラム協力機構(OIC)」(56ヶ国・1機構)による、イスラエルの空爆や地上侵攻を強く非難し停戦を要求した合同首脳会議に言及しながら、シオニストとそれに連帯する西側諸国の、世界情勢の「読み間違い」という重要な問題に入っていく。
さらに、中国とイスラエルが、イスラエルの最先端の科学技術系大学、テクニオンを通じて、すでに強固な人的・経済的な関係があるなど、大手メディアが決して伝えない情報が盛りだくさんとなっている。