「山上容疑者は真犯人ではない!? 安倍晋三元総理暗殺事件とウクライナ紛争をめぐる世界情勢の激変はつながっている!?」 ~岩上安身によるインタビュー第1118回 ゲスト 元外務省国際情報局長・孫崎享氏 2023.4.10

記事公開日:2023.4.13取材地: テキスト動画独自
このエントリーをはてなブックマークに追加

(文・IWJ編集部)

 岩上安身は4月10日午後4時過ぎから、予定時刻を1時間強遅れて、元外務省国際情報局長の孫崎享氏へのインタビューをフルオープンで行った。

 当初、インタビューは、「ウクライナ紛争は、今年春から夏にかけてさらなる『激戦』へ!? それとも『停戦』!? 米国の覇権と威光が劇的に低下し、世界で「脱米国依存」が加速する中、日本はどう動くべきか?」というタイトルで行われる予定であったが、孫崎氏のリクエストで急遽、IWJのスタッフが新しくパワーポイントのスライドを1時間強かけて作り直したのであった。

 そして、冒頭から驚くべき話の展開となった。

 孫崎氏は、「今日は、安倍元総理の真犯人は山上容疑者ではないと主張します」と宣言したのである。

 「山上(容疑者)は一言で言うと、オズワルド」

 孫崎氏は、ジョン・F・ケネディ元大統領とロバート・ケネディ元司法長官の暗殺事件を持ち出し、ジョン・F・ケネディ元大統領の犯人とされるオズワルド、ロバート・ケネディ元司法長官の犯人とされるエルサレム出身のパレスチナ系アメリカ人、サーハン・ベシャラ・サーハンの例をあげ、「この二人が犯人ではなく、別に真犯人がいる」というのと同じ意味で、「山上(容疑者)は一言で言うと、オズワルド」だと述べた。

 孫崎氏は、なぜ山上容疑者が安倍元総理暗殺の犯人ではないと言いきるのかを、安倍元総理の体にできた銃創の位置の問題から説明していった。

孫崎氏「(7月8日に安倍元総理が銃撃された後、緊急搬送された奈良県立医科大学付属病院の福島英賢(ふくしま ひでただ)医師の記者会見で)、この人(救急医学教授・福島医師)はものすごく的確にしゃべっている。(中略)銃創が二つ、首の前、鎖骨の上、間隔が5センチくらいで、真ん中よりもやや右、ということを言ったんですね。(中略)これが(安倍元総理の)立っているところなんですね。山上さんが後ろから撃ってくるわけなんですね。一発目ばーんという音がする、後ろからくるわけだから、ここ(首の前)には当たらない」

岩上「当たるわけないですね、背後から貫通したとかいうのなら、わかりますが」

孫崎氏「(病院は)銃創は背後にはないと言っている。(体に当たった)2つの弾丸の1つは心臓に行く。その銃弾がどうなっているかはわからない。もう一発は右から入って左の肩から出ている。

 1発目は後ろから来ているわけだから(首の前の銃創とは)関係ない。2発目も、1発目のあと、半分だけふり返っただけの安倍元総理のこの辺(首の前部)は、後ろに回っていないんです。ということだから、(山上容疑者が放った)2発目も当たっていないんです。もうこれはね、議論の余地がない。だから山上が殺したんではない」

 孫崎氏が、上記の検証で用いたのは、ツイッターに事件当日に投稿された動画である。

 孫崎さんは、山上容疑者は「ダミー」だと断定する。

 断定する一方で、山上容疑者の行動の動機や、その背後に統一教会問題があることは否定しない。

 では、誰が、山上容疑者の行動を把握し、ダミーとして利用しながら、安倍元総理を狙撃したのか?

 孫崎氏の推理は、ここからが真骨頂である。

 孫崎さんは、西側リーダーの中で最も多くプーチン大統領に会ってきた安倍元総理のウクライナ紛争に関する発言を時系列的に並べて、その発言が、ロシアの侵攻直後から、G7のリーダー、元リーダーたちの中で際立って正確であり、まともだったことを指摘した。言いかえると、ロシアとプーチンを「悪魔化」したい米国のキャンペーンの中では、安倍元総理が「浮いていた:ことを意味する。

 2022年2月27日(ロシアのウクライナ侵攻は24日であり、その3日後)に、安倍元総理はフジテレビ『日曜報道THE PRIME』に出演して、プーチン大統領が米国とNATOの東方拡大に不信感を抱いていたことを明らかにした。

孫崎氏「(プーチンが軍を動かしたのは)領土的野心というものではなく、ロシアの防衛・安全保障の観点から(ロシアが)行動を起こしたと解説しているんですよ」

孫崎氏「それから一か月も経たないうちに、ゼレンスキーが日本の国会でビデオ演説をした。この時点で日本で一番力の強い政治家は誰かというと、安倍さんですよ。安倍派の人たちは、ほとんどそれ(安倍さんの考え方)を知っているわけです。フジテレビで発言しているんだから。

 だったら、安倍派の人間は、ゼレンスキーの言っていることだけで話をつけていいわけじゃない、ということはわかっているわけ。それがなんでここ(国会)でもって、(ゼレンスキーのビデオ演説に対し)スタンディング・オベーションになるのか、ということなんです。日本で一番力のある人の、『私(安倍元総理)は、ロシアを全面的に支持するわけではないが、ロシアにも言い分がある、それを理解すべきだ』という声は、(2月)27日から消えるんですよ」

 2022年2月27日に安倍元総理は、フジTV『日曜報道 THE PRIME』に出演し、「NATOが約束を守っていないとプーチンは不満だった」という趣旨の発言をしている。

安倍元総理「(プーチン氏は)基本的な不信感を米国に対して持っている。『NATOを拡大しないはずだったのにどんどん拡大し、ポーランドにはTHAADミサイルまで配備をしているではないか』と。その基本的な不信感の中で、プーチンとしては領土的野心ということではなく、ロシアの防衛、安全の確保という観点から行動を起こしているということだろう。もちろんそれを正当化はしない。彼がどう考えているかを正確に把握する必要はあるだろう」

松山キャスター「首脳会談の中でプーチン大統領から『NATOが約束を守っていない』というニュアンスの発言があったのか?」

安倍元総理「何度か二人だけの時にそういう発言があった。そういう思いは強いのだろう。彼はある意味『力の信奉者』だ」

松山キャスター「バイデン米大統領はウクライナ侵攻前早々に米軍がウクライナで軍事行動を起こすことはないと言った。この発言はプーチン大統領にどう伝わったと考えるか?」

安倍元総理「バイデン大統領もさまざまなことを考えて発言したのだと思う。しかし、プーチン大統領のような指導者を相手にする場合、最初から手の内を示すよりも、『選択肢はすべてテーブルの上にある』という姿勢で交渉するのが普通ではないかと考える」

 もう一つ、孫崎氏が提示した安倍元総理の発言は、2022年5月に行われた英国の経済誌『エコノミスト』のインタビューである。

 安倍元総理は、このインタビューの中で、『ゼレンスキー大統領が、ウクライナがNATOに加盟しないことを約束し、東部2州に高度な自治を与えられれば、戦争を回避できたかもしれない』と発言している。

孫崎氏「問題は、7月8日(安倍元総理暗殺日)に『エコノミスト』は、もう一回、記事をアップしているんですよ。安倍さんは、このインタビューの中で、『(日本は)核兵器を持つべきだ』とかさまざまなことを言っています。『エコノミスト』は、自分たちの記事というものが、安倍さんの殺害と関連したという感覚をもって、(再度)報道したんです」

 『エコノミスト』のインタビューにおける該当部分は以下である。

インタビュアー「あなたはウラジーミル・プーチンと27回ほど会っていますね。現在、プーチン大統領に対処する上で、どのようなアドバイスをしますか?」

安倍元総理「この状況で多くの選択肢が残されているとは思いません。プーチンの人柄を分析する方法はいろいろありますが、彼は力を信じると同時に現実主義者でもあると思います。彼は理想を追求したり、アイデアのために犠牲を払ったりするタイプの人ではありません。

 侵略前、彼らがウクライナを包囲していたとき、戦争を回避することは可能だったかもしれません。(ウクライナ大統領) ゼレンスキーに、彼の国がNATOに加盟しないことを約束させらたり、東部の2つの飛び地に高度な自治権を与えられさせたりすることができたなら。これが難しいことは理解しています。おそらく、アメリカの指導者ならできたはずです。しかしもちろんゼレンスキーは断るでしょうが。

 しかし、私たちがここにいる今、前進する唯一の方法は、ウクライナと一緒に立ち、ロシアの侵略に徹底的に反対することだと思います。 それが、戦後築いてきた国際秩序を守る道です」

 孫崎氏の分析は、米国にとって「不都合な存在」になりつつあった安倍元総理の暗殺事件が何者かによって企てられたこと、ウクライナ紛争をめぐる世界情勢の激変とつながっていることが浮き彫りにしていった。

 安倍元総理の銃撃・殺害事件は、銃撃当日の奈良県立医大の発表と、翌日9日、奈良県警が発表した司法解剖の結果が、真逆のものであったことなど、不審な点があるのは事実である。孫崎氏は、奈良県立医大の発表を信じれば、山上容疑者の位置から安倍氏に致命傷を与えることは論理的に不可能だが、「こういうことはいっぺんには明らかにはならない。いろんな事実が集まって、はじめて結論がでる」とも述べている。

■ハイライト

  • 日時 2023年4月10日(月)15:00~
  • 場所 IWJ事務所(東京都港区)

アーカイブの全編は、下記会員ページまたは単品購入より御覧になれます。

サポート会員 新規会員登録単品購入 550円 (会員以外)単品購入 55円 (一般会員) (一般会員の方は、ページ内「単品購入 55円」をもう一度クリック)

関連記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です