内閣府が安倍元総理の国葬に法的根拠がないことを明言! 旧統一教会名称変更問題では文化庁宗務課が「調査中」と記録を出さず~8.9 立憲民主党 国対ヒアリング ―内容:「国葬問題」及び「旧統一教会と政府与党との関係」 2022.8.9

記事公開日:2022.8.11取材地: テキスト動画
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(取材・文、木原匡康)

 2022年8月9日(火)午後4時過ぎより、衆議院本館で、立憲民主党国対ヒアリングが野党合同参加で開催された。

 テーマは「国葬問題」と「旧統一教会と政府与党との関係」の2つ。

 「国葬問題」に関しては、内閣府の富永健嗣大臣官房安倍晋三国葬儀事務局参事官と、内閣法制局の乗越徹哉第一部参事官、森下雄介第一部参事官から、「旧統一教会と政府与党との関係」については、文部科学省の柳澤好治大臣官房総務調整官と、石崎宏明文化庁宗務課長からヒアリングを行った。

 「国葬問題」に関しては、事前に野党側から、国葬決定の理由、経緯、法的根拠、実施形態、予算について説明を要請。内閣府の富永参事官は、吉田茂元総理の国葬や中曽根康弘元総理の内閣・自民党合同葬儀、安倍晋三元総理の国葬に関する閣議決定等の資料を提出した。

 しかし今回の国葬を決めた理由については、「岸田総理が記者会見で説明した最長の在任期間、非業の死、震災復興等の功績、諸外国の弔意等」と説明した。また、法的根拠については「儀式を行うのは内閣府設置法が明記する『行政の裁量の範囲内』」であり、「閣議決定が根拠」と説明した。式の内容他は検討中とした。

 これには、野党議員から疑問が噴出した。立憲民主党・無所属会派の米山隆一衆議院議員は、内閣府設置法の条文は「『事務の所掌』に過ぎない」と指摘。他の条文に「国民の祝日(の事務の所掌)」があるが、「事務の所掌」を根拠に国葬を作れるなら、「内閣府が閣議決定で勝手に国民の祝日を作れるのか」等と追及した。

 これに対して、富永参事官は改めて、法的根拠はなく「閣議決定が根拠」と明言した。

 立憲民主党の小西洋之参議院議員は「そもそも岸田政権が考える国葬とは何か」「政府が説明した『国が行う国家の儀式』の『国』に、国民や国会も含まれるのか?」と質問した。

 これに対して富永参事官は「『国』の範囲は定義されてない」等と回答。小西議員は「国民・国会と国葬の関係を答えられない。岸田政権が国民と国会を無視している」と非難した。

 続けて小西議員は「内閣府の総務課長から『「国」は当然、国民や国会が含まれる』と説明された」と種明かしした。「であるなら、国民や国会が行う葬儀にもかかわらず、なぜ内閣の判断だけで決めていいのか?」「内閣は、どうやって、いつ、国会から了解を取ったのか?」と追及したが、富永参事官は明確に答えられず、回答は宿題となった。

 さらに小西議員は、実は「国葬が適切だとして政府がまとめた文書がある。なぜその文書を提出しないのか?」と指摘した。これについて、当該文書を内閣法制局で審査したのがわずか2日間だったとの言質を、内閣法制局の乗越参事官から取り、経緯説明と文書の提出を宿題とした。

 「旧統一教会と政府与党との関係」では、旧統一教会の名称変更を認証した経緯について、前回8月5日のヒアリングで、以下が文化庁宗務課への宿題となっていた。

 「1997年時点で宗務課で議論した時のメモ等」「その後の18年間の空白期間で、相談等がどのように行われたのか、97年から2015年までのメモ等」「2015年に大臣に2回報告した時の応接録」「宗教法人法29条削除について」「黒塗りの変更理由は、宗教法人側がOKを出せるのではないか、法人に確認」「97年の宗教法人側との応接録」「2015年6月2日の申請直前の応接録」。

 石崎宗務課長の回答は、宗教法人法29条削除の理由を除き、すべて「調査中」というものだった。なお、宗教法人法29条には、認証に関して再審査、訴願する場合のことが規定されていたが、「昭和37年に『訴願法』という、行政不服を行う法律が廃止され、行政不服審査法に一本化されたことに伴い、これらの規定は不要ということで、16条、17条とあわせて削除になった」とのこと。

 立憲民主党の大串博志衆議院議員は、末松信介文科大臣が8月8日の会見で、「旧統一教会側が名称変更の申請にあたり、『受理しないのはおかしい』という弁護士の意見を文化庁に伝えた」と回答したことを指摘。「調査中」という石崎宗務課長の回答との矛盾を指摘した。

 さらに重ねて、複数の野党議員が、統一教会が大きな社会的問題を引き起こしているにもかかわらず、なぜ名称変更を認証したのかを追及した。

 日本共産党の田村智子参議院議員は、「先日の前川喜平元文科事務次官のお話の中で、最初に名称変更の相談があった頃は、解散命令も検討していた」「そのままになって、被害は膨らみ、安倍元総理の銃撃事件までつながった」と指摘した上で、次のように強く訴えた。

 「文科省は、解散命令まで検討していた時期から、行政対応がどうだったのかを真摯に自己検証すべき。行政手続き上、何が出せるかというようなことではない」「2015年当時の下村文科大臣も説明してほしい、黒塗りを解いてほしいと言っている。それは自己検証が必要だから。そういう案件として資料を提出してほしい」。

 大串議員は「(18年間続いた受理しない)方針が、2015年6月2日の申請受理で、大きく変わったことに皆さん疑念がある。その直前に何がしかの意思変更が文科省の中であったのではないか。そこに何がしかの政治の力が働いているのではないか」と疑問を呈した。

 その上で大串議員は「2015年6月2日以前のことは、まだ調査中と繰り返されて闇の中だ」「ところが8月5日の記者会見で、末松文科大臣は明確に『文部科学大臣が政治的な判断を行ったものではない』と明言した。政治的判断が行われたとすると、2015年6月2日より前のはずだが、そこは調査中と言われているにもかかわらず、なぜかそこだけ明確に言われて(否定して)いる。どういう根拠で言われているのか?」と、文科省側の矛盾を突いた。

 これに対して石崎宗務課長は、「宗教法人法では、そこに判断を行う余地がないので、判断してないと言ったのではないかと推認する」と答えた。

 ヒアリングについて詳しくは、ぜひ全編動画を御覧いただきたい。

■全編動画

  • 日時 2022年8月9日(火)16:00~
  • 場所 衆議院本館 第4控室(東京都千代田区)

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