8月3日、夜8時半ごろから「安倍元総理殺害をきっかけに統一教会問題が再燃! 韓国最大の反日カルトと自民党とがズブズブの関係の不可解!!『多国籍企業』のような宗教組織の正体とは!? 岩上安身による北海道大学大学院文学研究科・文学部 櫻井義秀教授インタビュー 第2回」を、IWJ事務所から中継した。櫻井教授にはZoomでお話しいただいた。
櫻井教授には先週7月29日、第1回のインタビューを行っている。今回はその続きである。統一教会問題は複雑で大きな問題なので、今後もシリーズとして櫻井教授にお話をうかがう予定である。
冒頭、岩上安身が、安倍元総理銃撃事件をきっかけに再燃した統一教会問題についての問題意識を述べた。
岩上「韓国最大の反日カルトと、愛国者の党であるはずの自民党が、ズブズブの関係にあるって、おかしいじゃないかと。これが一番不可解で、それをやっぱり突き詰めければいけない。
しかも、これは単なる宗教じゃなくて、企業のような利益追及組織になってるんですよね。宗教の皮かぶったコングロマリットその正体は一体、何なのか」。
櫻井教授は、従来の宗教研究は、現役信者にだけヒアリングをするというものであったが、それではバイアスがかかってしまうから、否定的な評価をする脱会信者の話も聞かないといけないと述べた。櫻井教授は現役信者と脱会信者の二方向からヒアリングをする「三角測量法」で研究を進めたと言う。
その研究の集大成は、櫻井教授と中西尋子氏による『統一教会 日本宣教の戦略と韓日祝福』をお読みください。
- 櫻井義秀・中西尋子(2010)『統一教会 日本宣教の戦略と韓日祝福』北海道大学出版会(J-STAGE書評・PDF)
岩上「私は8月には63歳になるわけですけれども、(統一教会は)私の人生に重なるくらいの年月、この国で定着し、はびこってきたわけです。
日本は『金のなる木』にされてるわけです。これが非常に腹立たしい。『金のなる木』で、多くの人が犠牲になり、その生き血を吸った挙げ句、それをぶくぶく注ぎ込んで自民党がでかくなるという、どういうことだと。自民党は愛国者の党とは、とても言えないぞと、これが一番腹が立ちます。
統一教会はもう一つ勝共連合という形を持っておりまして、日本のあらゆる『街宣右翼』というのは、勝共連合と一緒になってマイクでがなりたてていたりするわけですよ」。
岩上は、「街宣右翼」にインタビューをすると、韓国に対して厳しい見方をする人たちなのに、勝共連合は統一教会じゃないか、韓国発の反日カルトだというと、誰もまともに答えられなかった、という実態を明らかにした。
岩上は「ガンガン街宣をやっている連中も、何も突き詰めていないままやってるという印象なんですよ」と述べた。
櫻井教授も「党の統一教会の幹部も、自民党の政治家も、組織の中に入ってしまうと、その集団の固定的な思考方法であるとか、手段とかパターンに慣れてしまって、なぜそうやってるのかも、わからなくなってしまう」と、岩上に同意した。
櫻井教授は、安倍元総理の銃撃事件があって大事件と化した統一教会問題だが、「野次馬的な報道に問題がある」と述べた。
櫻井教授は、まず第一に、現在の報道には「問題を拡張しすぎ」であるという問題があると指摘しました。「容疑者の動機解明ということで、若者、非正規労働、無差別衝動的殺人など種々の議論が出回っているが、これは問題を拡張しすぎであり、意味がない」というのです。
櫻井教授「例えば『朝日新聞』が、これはテロではないかと。戦前の陸軍将校が日本社会を糺すといういうようなテロは良くないんじゃないかという見解を出してきたんですね。
それ(テロ説)は、もう2日目には裏切られて。統一教会の話である、と。ところが、その後も統一教会本体の話はしないんですね。山上容疑者の生育歴の問題であるとか、青年となってから20年、不安定な就業の中でいろいろ働かざるを得なかったとか。
いわば、この世代の『ロストジェネレーション』だとか、『就職氷河期』だとか、いろんなことが言われています。この世代特有の『生きづらさ』とか」
岩上「(山上)容疑者はひとつの明確な意志をもって、彼固有のストーリーや動機があった。この動機について、ある程度辿れるだけの彼自身の言葉って残されているんだけど、そこからダイレクトに聞くんじゃなくて。
例えば他の差別殺傷事件のような、秋葉原事件のような、死刑になった加藤被告の話と重ねあわせて、若者の阻害や格差の話にしてしまう。社会学的な話に広げすぎてしまっていて。『無敵の人』みたいな言葉が出てきています」。
岩上は、失うものがないような状態にある人間「無敵の人」の、無数に予備軍がいて、そういう衝動的な殺人と一緒くたにされてる感がある、と述べた。
岩上「彼は本当に、いわゆる『無敵の人』だったんだろうか。そうじゃなくて、固有のストーリーがあり、固有の動機があるのではないか。(略)問題を拡張しすぎないで、論じるべきではないのか、と、先生はお考えなんですね?」
櫻井教授「そうです。私は専門が社会学なのですが、今、報道されているものは全然社会学的じゃないですよ。そういった背景を持っている人は何千何万といるんですが、その人たちがこういうことをやったか。まったく違うんですよ。
環境がそういう行為を規定するとはまったく言えないわけなので、その人個人が抱えている具体的な問題があるわけで、そこから聞いていないんですよね。
それをあえて避けているような感じがするんです」。
第二に、櫻井教授は「宗教と政治」の関係などと、一般化することで、論点がボケてしまう、と指摘した。
岩上「この間、大臣会見で、これだけ問題があって、反社的な行動を起こしていたら、宗教法人の認可取り消しっていうのはないのかって言ったら、それは答えられないみたいことを言うんですよ。
答えられないと、ほかの専門のところに言ってくれと大臣がいうから、文化庁の、専門セクションにもうしつこく聞いたんです。すると、我々は許認可するだけであとは検討しない、と。その後、どんなことが起こったかっていうことは関係ないんですよね。
でも実際には、取り消されているところあるじゃないですか。オウム真理教とか、法の華とか。犯罪的なことをやっているのに、統一教会については検討しない、信教の自由という憲法問題があるといけないとか。(略)
宗教一般対政治一般だと、ちょっと自分は答えられないという話になりますが、今問題なのは『統一教会と自民党』ですよ。そこにしっかり絞り込まなきゃいけないんじゃないかと思います」。
櫻井教授「一般論的に答えることで、自分たちは何もできないと言ってるんですね。
しかし、よくよく考えると、宗教法人法の中に、公益宗教団体は公益活動もできると。公益活動と称して実はそうでないような場合に関しては、所轄庁が解散請求をすることができて、それを裁判所でちゃんと判断をして、解散を命じることができる、ということがちゃんとあるんですよ」。
櫻井教授は、具体的には、3分の1が学者、3分の1が法律の専門家、3分の1が伝統宗教・新宗教の代表者からなる20人くらいの宗教法人審議会があり、そこで統一教会のように問題のある団体の活動について議論することは制限されていない、と述べた。
櫻井教授「そこで議題に入れてもらうことは可能なんです。そういう具体的な手続きとか措置があるわけなので。宗教一般ではなくて、こと統一教会の問題に関してどうするのかっていうことだけの話なんです。
これをストレートに答えたくない人は、宗教と政治の関係とか、わざと総論にして、反論できないようにする。この煙幕の張り方はおかしい」
岩上「具体的に統一教会の問題であり、統一教会と関係を持った自民党、自民党と似た傾向も強い維新とか。それらの人たちの関係ですよね」。
櫻井教授は第三に、「肝心な問題は、統一協会をどうするのかということに尽きる。ここに収斂しない議論はやったところで意味がない」と指摘しました。この3番目の課題が一番難しい、と補足した。
櫻井教授はここのところは、統一教会関連団体と政治家の関係、誰があった、この首長さんにあった、といった報道ばかりだと嘆いた。
櫻井教授「関係がありました、反省しています、いや、居直ってますって。反省してもらってもしょうがないんです。この先、何をするのかということを、なぜ聞かないのかっていうことです。
これだけの問題がある団体に対して、政治家として、立法府にいる人間として、何をするのかってことをなぜ聞かないのか。
関係を問いただすだけじゃなくて、この団体に対してどうするのかってことをどうして聞かないのか」。
野党では共産党と立憲民主党が調査委員会を立ち上げているが、櫻井教授は、具体的に調査をして、国会や文科省もこのままでは動かないので、文科省を動かして宗教法人審議会などに働きかけて「次の一手」をどうするかというところまで突き詰めないといけない、と指摘した。
岩上もIWJも、今、統一教会と関連があったとされる政治家に取材をしているが、行政にどう働きかけていくか、という質問もあわせてしていかないといけないですね、と答えた。
インタビューではこの後、岩上安身による櫻井教授への2018年のインタビューの要点を振り返り、文鮮明氏と統一教会について詳しくお話をうかがった。
特に、山上容疑者が「人類の恥」と統一教会を名指しした理由でもある、文鮮明氏の淫欲の深さや素行の悪さ、さらにセックスと宗教行為を結びつける「血分け」について、掘り下げてお聞きした。
ぜひ、全編動画で御覧ください。
2018年のインタビューは以下である。