「ウクライナは、自分が持ってるアセットをうまく使えば、ロシアと渡り合えたはず」 ~岩上安身によるインタビュー第1114回 ゲスト 独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構 調査課長 原田大輔氏 第4回 2023.3.23

記事公開日:2023.3.27取材地: テキスト動画独自
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(文・IWJ編集部)

特集 ロシア、ウクライナ侵攻!!
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 岩上安身は23日午後7時から、JOGMEC(石油天然ガス・金属鉱物資源機構)調査課長の原田大輔氏に、4回目となるインタビューを行った。今回は、ノルドストリーム2建設史を軸にお話をうかがった。

 ロシアはソ連時代から半世紀にわたって、欧州に安定的に天然ガス輸送をしてきた。原田氏は第3回のインタビューで、第2次大戦からの欧州復興に、ソ連・ロシアのガスが貢献したと述べ、2022年の「ノルドストリーム1、2」の爆破事件は、欧露の信頼関係の崩壊を象徴する出来事だったと、指摘していた。

 1990年代2000年代には、ロシアから欧州に送られる天然ガスの8割から9割はウクライナを経由していた。ソ連崩壊とともに、ウクライナは独立国家となったが、ウクライナはパイプラインの中継国家としての立場を利用して、ガス代の不払いや不正な抜き取りを行ってきた。

 ウクライナのガス問題に手を焼いたロシアと欧州は、ウクライナを経由しない「ウクライナ外し」パイプラインを計画、第1弾の「ノルドストリーム1」が2011年から稼働しはじめた。

 2019年には、第2弾となる「トルコストリーム」が完成、同時に中国に天然ガスを送るパイプライン「シベリアの力」が完成している。

 原田氏は、最後の第3弾となる「ノルドストリーム2」も予定では2019年に完成するはずで、そうすればロシアにとっては、天然ガス輸出に関してエポックメイキングな年になるはずだった、と指摘した。

 しかし、既存の通過国特権の既得権益を持っているウクライナやポーランドが、「ノルドストリーム1、2」に対して強く反対していた。

 さらに、2006年のシェール革命によって膨大な石油・ガスの生産が可能になった米国は、ガスの輸出先を求めていた。ロシア産天然ガスがパイプラインで欧州に供給され続けていれば、米国が欧州市場でシェアを大きく拡大することは困難である。米国もまた、「ノルドストリーム1、2」を阻止したいと考えていた。

 米国は2017年に、「ノルドストリーム2」の着工を阻止すべく第1弾制裁「米国の敵対者に対する制裁法(CAATSA、カッツァ)」を発動した。

 これに対してドイツをはじめとする「ノルドストリーム2」建設推進派が「対露制裁を米国の経済的利益と結びつけるべきではない」と米国の制裁を押し切って「ノルドストリーム2」の着工にこぎつけた。

 米国は2019年、ロシアにとって天然ガス輸出のエポックとなるはずだった2019年末に、第2弾制裁を発動し「ノルドストリーム2」事業から欧米企業を撤退させ、完成直前の「ノルドストリーム2」の建設阻止に成功した。

 ロシアから欧州に供給されてきた天然ガスについて、原田氏にうかがった。

 原田氏はロシアからウクライナ経由で西側に流れて行く天然ガスの総容量が142BCM(1BCMは10億m3)であったのに対し、ウクライナ外しの3本のパイプラインは容量を合計すると、141.5BCMとなり、ウクライナ経由とほぼ同量に相当すると指摘した。

原田氏「2006年、2009年にウクライナ供給途絶問題、これはウクライナがガスを抜き取った問題ですね。このあと作り出したプロジェクトというのが、『ノルドストリーム』の最初の1で、55(BCM)、『トルコストリーム』が31.5(BCM)、『ノルドストリーム2』が55(BCM)を足すと、142(BCM)になるということです。

 これ(ノルドストリーム2)が最後のパズルとして用意されたということで、ここまで出来上がったわけなんですけど、今、この2つ(ノルドストリーム1、2)が破壊されたということですね。

 元々の意図というのは、ウクライナを『なきもの』にするのではなく、『生き殺し』にしていくということですね。

 この(ウクライナが受け取る)トランジット料が、これ(ノルドストリーム1、2)が出来上がってくると下がっていくわけです。ウクライナ経由で流さないといけない量というのは、最高で140(BCM)ぐらいまであったわけなんですけれども、それがどんどん下がっていって、今、40(BCM)まで下がっています。

 そういう状態を生み出すことで、ロシアとしては、ウクライナに言うことを聞かせる、『こっち(ロシア)をちゃんと見ないと駄目だよ』と。

岩上「まあ、そうはいっても、ウクライナの欧米への憧れというのは強かったわけですから、なびくわけではないでしょうけどね。EUに入った途端、EUレベルの生活ができる、みたいな幻想が、そうとう振り撒かれていたと思うんですけれども。

 でも、幻想としてでも、旧ソ連邦の付き合いのところじゃなくて、憧れの、『リッチなヨーロッパの中に入りたい』っていう、そういう気持ちがあったのはまあ分からなくはないんですけど。

 現実問題として、欧州(に入れば)、欧州が払ってるコストを自分たちで払わなきゃいけないよねってなったら、彼ら(ウクライナ側)は文句を言うんですよね。そんなバカな話はないと思うんですけど」

 自由主義経済で動いているEUの一角に入れば、それまで旧ソ連のよしみで欧州の5分の1ほどの破格に安い価格でロシアから天然ガスを買っていたウクライナも、欧州並みのガス代を支払わなければならなくなる。しかし、ウクライナはガスの値上げに頑強に抵抗した。

岩上「ウクライナは一体どうしたかったんでしょうね」

原田氏「ウクライナは、自分が持ってるアセットをうまく使えば、ロシアと渡り合えたはず。

■ハイライト

  • 日時 2023年3月23日(木)19:00~
  • 場所 IWJ事務所(東京都港区)

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