米国主導の対露制裁がもたらした大矛盾!「ロシアは『主権のない国』である日本を見てない!」~岩上安身によるインタビュー第1109回 ゲスト 独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構 調査課長 原田大輔氏 第2回 2022.12.27

記事公開日:2022.12.31取材地: テキスト動画独自
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(文・IWJ編集部)

特集 ロシア、ウクライナ侵攻 !!

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 12月27日、午後19時半から、「米国主導の対露制裁がもたらした大矛盾! ロシアへの制裁に参加した西側諸国がエネルギー資源高騰で苦しむ一方で逆に制裁不参加の国々が潤っている!?」と題して、岩上安身によるJOGMEC(独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構)調査課長 原田大輔氏インタビュー 第2回を、IWJ事務所よりお送りした。

 ウクライナ紛争の背景には、ロシアの最大の輸出品である原油・天然ガスの扱いをどうするかというテーマがひそんでいる。12月5日には、G7、EU、オーストラリアが、ロシア産原油の価格上限設定措置を発効させた。

 ロシアによるウクライナ侵攻後、繰り返し行われてきた対露制裁は、世界経済に暗い影を落としている。特に、エネルギー資源のほとんどを輸入に依存している日本にとって、原油・天然ガスの市場の動向は、エネルギー安全保障の問題に直結する。

 原田大輔氏は、1997年に石油公団へ入団。その後はロシアを専門のフィールドにし、2006年からはモスクワに赴任、2012年には、グープキン記念ロシア国立石油ガス大学で修士課程を修了。まさにロシア事情と石油・ガス問題に精通された専門家である。

 冒頭、ロシア産原油の価格上限設定措置発効ののち、新しく飛び込んできた、日本のエネルギー安全保障を揺るがしかねないニュースについて、原田氏にうかがった。

 『スプートニク』は25日、ロシア国家エネルギー安全保障基金のイーゴリ・ユシコフ主任分析官「上限価格設定に参加した国で唯一影響を受けるのは、ロシア産原油の輸送方法が海上のみの日本だけ」だと述べたと報じた。

岩上「この『影響を受けるのは日本だけ』っていうのは、日本だけではないのかもしれないですが、日本が影響を受けるよというのは、あながち嘘ではないということになりますよね?」

原田氏「やはり、『スプートニク』は官製メディアなので、日本に対してメッセージを送っている。『あなたたちが対露制裁をおこなったから、あなただけが損するよ』。

 なぜかと言うと、欧州はパイプラインでの原油の輸入というのは時限的に認めているんですね。スロバキア、ハンガリーですとか、ポーランドですとか。

 でも日本は海上輸送だけだから、『あなたに影響が来るんだよ』ということを言ってるんだと思うんですね。

 『だけ』というのはちょっと言いすぎなんですけれども、確かに日本は(制裁に)参加しているということで、影響が出てくるということになると思いますが。

 どれぐらい影響があるかというと、まさに、この上限設定に(参加する国に)対しては(原油を)『出しません』とロシアは言っていまして。

 おそらく今日か明日には、(ロシア)大統領令が出る予定になってます。上限設定を導入した国に何をするかということの対抗策ですね。おそらくそれはこの(原油輸出を)禁じる方針ということが盛り込まれることになっていくと思われます。

 ただ、日本政府はがんばって『サハリン2』の原油については、免除というのをアメリカとヨーロッパから取りつけているんです。アメリカからは9月30日まで、ヨーロッパは6月5日まで、『サハリン2』の原油はそこまでは輸入してもいいよということになったんですね。

 なぜかというと、『サハリン2』は原油がメインではなくて、天然ガスがメインなので、原油を止めてしまうと天然ガスを止めないといけなくなってしまう。そうすると、日本は輸入できなくなってきてしまう。

 天然ガスはまだ制裁対象じゃないということで、そこを認めてもらったんですけど」

 原田氏は、日本のロシア産原油の輸入の内訳を見ると、『サハリン1』の原油生産量は『サハリン2』の5倍から6倍の量があること、そのほかに東シベリアからの原油も入ってきていると解説した。

 2021年に日本が輸入した原油全体の中でロシア産原油の割合は3.6%、日量で10万バレルたらずにすぎない。その50%は東シベリア、40%が『サハリン1』、10%の『サハリン2』であった。

 そうしたごくわずかの『サハリン2』の原油、LNGの副産物として産出されるためにセットで購入するべき原油くらいはいいだろうと「お目こぼし」いただいたというわけである。

原田氏「ですから、(ロシアが日本に輸出しないとしても)これは代替できないわけではないということですね。

 ただ、岩上さんがおっしゃった通り、これ(ロシア産原油)は、日本のエネルギー安全保障を考える上で、供給源の多様化(に寄与しています)。

 中東にあれだけ依存していたら、あそこで何か戦争が起きたときに全部止まってしまうという時に、やっぱりロシアはこれまで、供給源の多様化にすごく寄与してくれた国だったわけです。

 ですから3.5%、3.6%は小さいように見えるけれども、これは大きい時には8.8%まで2015年にはいっていまして」

岩上「そこまでいった実績もあるんですね」

原田氏「あるんですね。その時は、中国が『爆買い』をする前で。(3.5%まで下がってしまったのは)中国が買っていってしまった訳なんですけど」

岩上「買い負けしたんだ」

原田氏「そうなんです。やはり安いというのもあって、買い負けしてしまったのと、中国とロシアとの間の長期契約が国で結ばれているということもあって、残念ながら追いつかなかったわけですが。

 どんどん下がっていってるんですけど、それでも3.6%というのは、それなりに日本のエネルギー安全保障には寄与してきたということが言えるんだと思いますね」

 原田氏は、たとえ、ロシアが石油を止めるぞと日本を脅すのであれば、現在のロシア産原油の輸入を代替することは十分可能であり、原油の輸入には困らないと述べた。

 岩上安身は、岸田総理が16日に閣議決定した「安保3文書」に触れ、「中国・ロシア・北朝鮮」を「懸念・脅威」と明記してしまったが、原油を9割以上中東に依存度している日本において、仮に「台湾有事」が発火してマラッカ海峡などのチョークポイントが締められてしまえば、あっという間に日本は干上がってしまう、政府はエネルギー安全保障をどうするのか、何を考えているのか、と問題提起をした。

■ハイライト

■【インタビューピックアップ】ウクライナ紛争は2014年から始まっていた! ユーロマイダン・クーデターに関与した米国の傲慢さが紛争を引き起こしている!!

  • 日時 2022年12月27日(火)19:30~
  • 場所 IWJ事務所(東京都港区)

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