【第568-571号】岩上安身のIWJ特報!「長期化するウクライナ紛争~米国の代理戦争の代償」「米ドルの黄昏とアテナイ覇権喪失の教訓」(第4回後半)岩上安身によるエコノミスト田代秀敏氏インタビュー 2022.10.1

記事公開日:2022.10.1 テキスト独自
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(文・IWJ編集部)

特集 ロシア、ウクライナ侵攻!!
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 2022年2月24日にロシアがウクライナに侵攻し、すでに半年以上が経過した。ロシアを非難する米国は、ウクライナへ大量の武器支援を続けており、そのためもあって停戦は実現せず紛争は長期化。いまだに収束の目処も立っていない。

 一方、米国主導で実施したロシアへの経済制裁は、穀物価格や原油価格の世界的な上昇を招き、回り回って制裁している側の米国や同盟国の一般の市民の暮らしを直撃している。

 長引く紛争が世界経済に与える影響が懸念される中、岩上安身はエコノミストの田代秀敏氏に、2022年5月5日、5月12日、5月20日、5月30日と4回にわたるインタビューを行った。

▲田代秀敏氏(IWJ撮影)

 4回目のインタビューとなった5月30日、田代氏は古代ギリシャ世界で起きたアテネ帝国の衰亡の歴史が、現在の米国の姿と重なりあうことを「米ドルの黄昏とアテナイ覇権喪失の教訓」というテーマで解説した。

 今回も引き続き、民主主義の祖と謳われたアテネの崩壊プロセスが、現代への示唆に富むことを、米国の金融状況などを踏まえながら語っていただいた。

 歴史から学ぶ意義について田代氏は、「こういう判断をすると間違えるのだ、ということを見ておくのが正しい。ヘーゲルが言うように、為政者は歴史からは何も学ばない」と話す。

 古代ギリシャ世界で、ペルシャの専制主義からギリシャの民主主義を守ったアテネは、強大な軍事力とともに、アテネの通貨を同盟国の共通通貨とすることで、経済的にも圧倒的な覇権を持っていた。

 しかしそのアテネの繁栄の持続のためには、「他国の民主制を抹殺することも辞さなかった」という、帝国主義を必要とした。

 やがてアテネの自由と繁栄を守るための帝国主義に、不満を持つ同盟国が反乱を起こし、アテネとスパルタという、古代ギリシャ世界を二分する大戦争に発展する。

 「民主主義の暴走」により、無謀な戦争を繰り返したアテネは、最後はペルシャと手を結んだスパルタに敗退する。

 軍事力と金融の力で覇権国家となった米国もまた、「凶暴なデモクラシー」により、1776年の建国以来戦争を繰り返してきた。フィナンシャル・タイムズのコラムニスト、アラン・ビーティーは「冷戦時代、米国は民主主義を標榜しながら、収奪や大量殺人に手を染めるならず者政権を世界各地で擁立したり、支援したりしてきた」と指摘する。

 米国のデモクラシーは、すでにアテネのデモクラシーの韻を踏みだしていると田代氏は言う。

 「アメリカ帝国が崩壊したら世界秩序が根底から覆り、大変な混乱を招く。どうやって安楽死させるか。延命ではなく、安楽死させて、アメリカを普通の国にするということを、全世界の国際政治学者は必死になって考えるべきだ」と訴えた。

記事目次

  • 同盟国を虐待、恨みを買ったアテネは帝国主義的支配をやめられない!「やめたら同盟国に滅ぼされるから」!
  • 戦争を知らない子どもたちが「戦争で一獲千金」を狙う。だから、デモクラシーは戦争を起こす!
  • 一度、痛い目を見たペルシャは、軍隊を出さずにスパルタに資金提供。「今、米国がウクライナにやってることと似てる」! 『代理戦争』の起源!?
  • 1776年の建国以来、ほとんどの期間で戦争をしているアメリカは「アテネの韻を踏んでいる」
  • 米国の経常収支は大赤字! バイデン政権でさらに破滅的な勢いに。「いつ、これを踏み倒すのか」
  • 実は脆弱なアメリカ金融帝国。レーガン政権下のドル高で米国の製造業は壊滅状態、これまで 四苦八苦で維持してきた!
  • 経済面では米国の影響力は強くない。できるのはドルを使った金融制裁などネガティブなことだけ!
  • 米国の「気まぐれなデモクラシー」でロシアへ経済制裁した結果、ガソリン価格が高騰、悲鳴あげる米国市民!
  • 米国が経済制裁に「ドルの力」を利用すれば、ドル弱体化へ! 米国の技術利用禁止は中国独自の技術開発を促進!
  • あれほどの古典的叡智を生み出したアテネが陥った覇権国の罠! 「覇権が彼らの頭をバカにしてしまった」
  • 今後の課題は「アメリカ帝国の延命」ではない! どうやって「安楽死」させるかを考えるべき
  • 米国の戦争は公共事業。ロシアや中国との争いを避けたら軍事予算の維持にUFOを仮想敵に!?
  • アメリカ帝国が自滅する時、従属国日本はどうする?主人に殉じて心中か!?「ポスト」の 新時代に向けて日本は自立の準備を!

同盟国を虐待、恨みを買ったアテネは帝国主義的支配をやめられない!「やめたら同盟国に滅ぼされるから」!

 

▲アテナイの民主制は侵略・戦争の刺激剤(2)

田代秀敏氏(以下、田代氏)「次、行きましょう。『事実、ギリシア都市国家の戦争の全歴史を通じて、敵であれ、味方であれ、アテナイが絡んだ戦争ほど多数の戦死者を出した例はない』」

岩上安身(以下、岩上)「なるほど」

田代氏「さすがね、すごい学者です。諸所の戦争をずーっと調べ上げて、何人が死んだとか、何人がどうしたとか、そういうことをね、古代ギリシャ語で書かれた碑文などを、ずーっと研究してるわけです。現地に行って発掘してという、もう本当にすごい大学者です。

 で、『古代では、民主制は軍事侵略と戦争に対する抑止力としてではなく、刺激剤として機能した』」

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