「ノルドストリーム1、2」を爆破したのは米国か否か? そもそも「ノルドストリーム」とは何か!? なぜ爆破されなければならなかったのか!? 岩上安身によるインタビュー第1113回 ゲスト JOGMEC(独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構)調査課長 原田大輔氏 第3回 2023.3.13

記事公開日:2023.3.16取材地: テキスト動画独自
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(文・IWJ編集部)

 岩上安身は2023年3月13日、JOGMEC(石油天然ガス・金属鉱物資源機構)調査課長の原田大輔氏に3回目となるインタビューを行った。今回は、2022年9月に爆破されたノルドストリーム1、ノルドストリーム2にテーマを限定して、原田氏に話をうかがった。

 ロシアから欧州へのパイプラインによる天然ガス輸送は、ソ連時代にさかのぼり、冷戦時代も含めてソ連・ロシアは50年間、欧州にとって安定して信頼できる天然ガスの供給源だったという歴史を確認する中で、原田氏は2022年の「ノルドストリーム」の破壊が、これまで築き上げてきたその信頼関係を壊してしまったとして、次のように語った。

 「去年のノルドストリームの破壊というのは、すごくシンボリックなんです。これまで半世紀(にわたって)築いてきた、供給者(としての信頼)というのが、去年破綻されてしまったんです。欧露の関係が、去年変わったということ。

 ノルドストリームの輸出量を削減したのはロシアですから、ロシア側から変えたというのもありますし、西側がウクライナ侵攻に対する制裁をし、そのカウンター制裁としてロシアも対応しているという側面もある。

 8月までは、まだ復活することができたんですが、それが9月の26日に破壊された。

 これは、信用の問題です。破壊工作の最も重要なポイントは、また同様のことが起こりうるということなんです。プーチン大統領が、ノルドストリームが破壊された2週間後に『アングロサクソンによる国際テロだ』と言ったわけです。彼が言った一つのポイントは、恐れなんです。

 ロシアがやったと思われる方がいらっしゃるかもしれない、それはまだわからないわけなんですけど、彼が言ったのは、この事件によって、『世界中のインフラをいつでも破壊することができるようになった』と。

 じゃあ、誰がターゲットになるかというと、世界で最もパイプラインを持っている国なんです。それはロシアなんです。ロシアは域内に石油と天然ガスのパイプラインが世界6周分もあります。24万キロ以上ですね。

 ノルドストリームは海の中にあったので、狙われないだろうという神話があったんです。安全保障上もわざわざ潜って爆弾を仕掛ける人はいないだろうということだったんですが、破壊されました。

 陸上の世界6周分のパイプラインは、ある程度の爆弾があれば、いつでも破壊できる状態です。プーチン大統領が言ったのはそこなんです。これからロシア国内でも、テロが起きる可能性があるということなんです」

 さらに原田氏は、「天然ガスは制裁対象ではないので、ヨーロッパとしては流してほしいんです。それを破壊してしまうと、ヨーロッパを敵に回してしまうことになる」と指摘した上で、「ノルドストリームは制裁対象でもないのに、なぜ破壊しなければいけないのかということが、大きな疑問として出てくる。誰かが得をする」と語った。

 また、2006年にロシアがウクライナへのガス供給を3日間停止し、欧州がガス不足に陥って、欧米諸国が「ロシアはエネルギー安全保障上の脅威」だと批判した背景について、原田氏は次のように解説した。

 「ウクライナを経由するガスというのは、ウクライナとロシアの関係では、ソ連時代もそうですけど、欧州から外貨が入るので、平和主義でやっているわけではなくて、外貨を獲得できるので必ず流してきたわけです。

 ところがウクライナですとかベラルーシとか、1991年のソ連解体後に新しく生まれた国に対しては、安い価格で供給してきたんです。国力がない、かつ兄弟分ということで。

 ただ、そこの国に、親欧米政権が誕生すると、ロシアは次第に価格を上げ始めたんです。そこで、払えなくなったウクライナは、欧州に流すガスを抜き取り始めた、というのが、(ロシアがガス料金の値上げを始めた)2006年から2009年なんです。

 ロシアは欧州に対してはガスを止めていないんですけど、ウクライナが盗んでしまったので(ガスを止めた)。ウクライナが取らなければ、欧州に対してロシアはずっと流し続けてきたということなんです」

 そして原田氏は、破壊工作が行われたノルドストリームについて「おそらく、半永久的に近い状態で直す目処が立たない」と述べ、「今、我々が目撃しているのは、半世紀にわたって(欧露間を)流れてきた、その信頼関係、お金と天然ガスという商業関係が、去年破綻されたということです」と、懸念を示した。

 また原田氏は、ソ連・ロシアが冷戦時代も天然ガスを「武器」として使ってこなかった理由を、次のように述べた。

 「(武器として使うということが)去年起きたわけですけど、武器として使えば買わなくなるんです。これは『ホールドアップ問題』と呼ばれるものなんですけど、パイプラインで結ばれた国と国は、稼働し始めると生産国の方が弱くなるという性質を持つんです。

 なぜかというと、生産国側はパイプラインのコストを回収するために、お金が欲しいので、流さざるを得なくなる。ところが、買い手の方は、他にも買うことができるので、買い手の方が強くなる。つまり欧州の方が強くなっていくんですね。

 冷戦期というのは、もし一度でも止めてしまった場合には、欧州はもう買わないんですね。今、それが起きているんです。去年初めて起きたことなんです」

 こうした原田氏の解説を聞いた岩上安身は、「にもかかわらず、こうしたノルドストリーム問題のプロパガンダっていうのは、アメリカがずっと言っていることですけど、ロシアが安定的に石油なり天然ガスを供給することによって、川下の国がコントロールされ続けているという言い方をするわけです。これ、逆じゃないですか」と述べ、「冷静に見れば、アメリカのプロパガンダは間違いだ」と指摘した。

■ハイライト

  • 日時 2023年3月13日(月)19:00~
  • 場所 IWJ事務所(東京都港区)

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