【第586号-第589号】岩上安身のIWJ特報!急速な円安は「アベノミクス」の経済的帰結!? 日本はこれからどうなるのか?岩上安身によるエコノミスト田代秀敏氏インタビュー (その3) 2023.3.1

記事公開日:2023.3.2 テキスト独自
このエントリーをはてなブックマークに追加

(文・IWJ編集部)

特集 ロシア、ウクライナ侵攻!!
※全編は会員登録すると御覧いただけます。サポート会員の方は無期限で御覧いただけます!→ご登録はこちらから

 日銀の黒田東彦(くろだはるひこ)総裁は、2022年9月22日の金融政策決定会合後の会見で、当面は政策金利の引き上げも、フォワードガイダンス(金融政策の先行き指針)の変更も考えていないと強調した。

 さらに、変更は「2~3年はない」と踏み込んだため、その発言直後から円が急速に売られ、会見中に一時1ドル=146円に迫る円安となった。

 この円安を受けて、政府と日銀は1998年6月以来の円買いドル売りの為替介入に踏み切り、円は一時1ドル=142円まで上昇したが、翌23日には円安に転じ、24日0時には143.31円に戻ってしまった。週明けも143~144円付近で推移している。

 なお、黒田総裁は9月26日、政府・日銀による22日の介入は「適切であった」と評価し、「今でも(1ドル)142円から143円ぐらいで動いているので、介入の効果がなくなったということはない」と述べた。

 その上で、フォワードガイダンスの変更はないとした22日の発言について、「現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定している」という政策金利のフォワードガイダンスは感染症にひもづいたものであり、「必ずしも2~3年という長期ではない」と一部を軌道修正した。

 岩上安身は2022年9月26日、東京都内のIWJ事務所で、9月16日に行われたエコノミストの田代秀敏氏への緊急インタビューの続編として、緊急インタビュー第2弾を実施した。

▲エコノミスト・田代秀敏氏(IWJ撮影、2022年9月26日)

 田代氏は、22日の黒田総裁の発言に関して、「(指針は)当面の間、変更しない」とした際、記者から「当面とは、いつまでか」と聞かれ、官僚が作った想定問答集に答えが見つからなかったのだろうと推測し、こう続けた。

 「適当にごまかせばいいものを『2~3年』って言っちゃったんです。それは、びっくりで。だって、来年(2023年に日銀総裁の)任期が切れるのに、それを超えた期間について言及したんだから、『もう1期、やるつもりかな』と考えますよね。そうしたら、『円は売りだ』となりますよ。あまりにも不用心だった」

 岩上安身は、日銀の単独介入があった翌23日、米国の大手経済紙の『ブルームバーグ』が、「現在の為替市場の問題は1980年代を想起させるが、1985年のプラザ合意のように各国がドル高の是正に共同で取り組む兆しはない」と報じていることについて、「なぜ、今回はできないんでしょう?」と尋ねた。

 田代氏は、「プラザ合意っていうのは、秘密協定だった。5ヵ国の財務大臣がニューヨークに密かに集まった。日本の竹下大蔵大臣も、ゴルフウェアを着て『ゴルフに出かけます』と車に乗って、その足でニューヨークに向かった。合意の発表は華々しくやったが、公式な記録は残っておらず、今も多くの部分が秘密だ」と説明した。

 「だから、本当のところはよくわからない。とにかくアメリカが必死だった。80年代には、先にインフレーションが起きたんです。これを鎮めようと超高金利政策をとる。その結果、ドル高が起きたわけですね。(プラザ合意の)この時は、すでにインフレーションを抑えた後だから(是正が可能だった)。

 今は目の前で、インフレーションが起きている。アメリカにとって、インフレーションを抑えるってことは最大のテーマ。それに役立ってるドル高を、是正するという発想は、どこにもない」

 さらに、1985年を考える時には、その10年前、ベトナム戦争のサイゴン陥落(1975年)を視野に入れるべきだと田代氏は言う。

 「アメリカがベトナムで敗北するわけですよね。あれほど未曾有の大戦争を仕掛けて、取るものがなかった。その結果、アメリカはものすごいインフレーションが発生する。今、ロシアがウクライナでやってることの、何倍もの規模の大戦争を行って。たくさんのアメリカ兵も投入して。すべて敗北しました」

 岩上安身は、「戦争とインフレって、平時で忘れがちですけど、結びつくわけですね。日本も、そうであったように」と応じた。

 1985年のプラザ合意によって、確かにドル高は是正された。その裏返しで急速な円高が起きたが、軌道変更は有効だった。しかし、今回の為替介入は規模が違うし、(財務省の)決意が違うと田代氏は言う。

 そして、「当時の大蔵省の、実際にその為替介入を行なった人などの(回想)を読むと、もう駄目だと、市場に押し返されると思う瞬間は何度かあった、と。その時に、兆円単位のお金を投入して切り抜けていく場面が何度もあったと。それくらい、ものすごい不退転の覚悟でやった。今回は、そんな気はなかった。

 そうなると『短期筋にとっての好機』となる。(今の)マーケットのトレンドは、とにかく円を売って、ドルを買う、でしょ。その時に、日本の財務省と日本銀行が手をあげて『円買います』と言ってるんだから、それはみんな、売り浴びせますよね。短期の投機筋にとっては、もう本当に、鴨がネギじゃなくて、黄金を背負ってやってきたという事態ですよね」と分析した。

記事目次

  • 9月22日、黒田総裁の会見中に1ドル=146円近くになった円。日銀が24年ぶりの為替介入に踏み切っても、たった2日で元どおり!
  • 1985年のプラザ合意は秘密の合意! 本当の中身はわからないが、ベトナム戦争で消耗した米国はドル高の是正に必死だった!
  • 為替介入した結果、日本国債の価格は下落、国債10年物は商い不成立! 日本の財務省は実は何もできないと市場に知れ渡っている!
  • 都心に林立するタワーマンションは、「超低金利状態がずっと続くはず」「住宅ローン金利は変動しない」という思い込みの裏返し!
  • 今のゼロ金利、マイナス金利は異常事態! これが未来永劫に続くなら、日本は資本主義をやめるということ!?
  • ものすごい円安と物価高騰でのたうちまわる今の日本がゼロ金利政策の代償! だが、安倍政権下では禁句だった「持続不可能」
  • 常に戦争に関わっている米国。インフレ抑制のためなら超高金利政策も! パウエルFRB議長は来年も再来年も「金利を上げる」!?
  • 円安で「買い負け」する日本。大トロも日本酒もおいしいものは海外へ! 日本円より中国の人民幣が勝つ時代に!
  • 日銀の「円買いドル売り介入」で無関心層までマーケットに参入、急激に売られる円!「日銀は藪を突ついてしまった」

9月22日、黒田総裁の会見中に1ドル=146円近くになった円。日銀が24年ぶりの為替介入に踏み切っても、たった2日で元どおり!

(前略)

岩上「マクロ経済の話なんていうのは、一部の人を除いては、なかなか話題に上がらないんですけれども、今、日本の経済というのは大変な状況にあるということを、緊急的にお伝えするインタビューを、前回、エコノミストの田代秀敏さんをお招きして、お話をうかがいました。

 しかし、それではなお、終わらず、今日、お忙しいところをご無理言いまして、第2弾ということで、その後編をさせていただきます。ということで、田代さん、よろしくお願いいたします」

田代秀敏氏(田代氏)「よろしくお願いします」

(中略)

第586-589号は、「まぐまぐ」にてご購読も可能です。

[※「まぐまぐ」はこちら ]

(…サポート会員ページにつづく)

アーカイブの全編は、下記会員ページより御覧になれます。

サポート会員 新規会員登録

関連記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です