2025年6月11日、「岩上安身によるインタビュー第1195回ゲスト エコノミスト・田代秀敏氏 第2弾 後編」を初配信した。
田代氏へのインタビュー後編は、「生き延びるのは誰か」という問いから始まりまった。
2025年5月28日、『BBC』は、カナダのマーク・カーニー首相が「経済統合の深化、そして安全保障・軍事での緊密な協力にもとづく」、カナダとアメリカの旧来の関係は終わったと述べたと、報じた。
田代氏は、カーニー首相は、優秀な金融専門家で、カナダの中央銀行総裁を務め、あまりにも優秀だったので、イギリスの中央銀行の総裁までやった人物だ、と紹介した。もちろん、外国人がイギリスの中央銀行総裁を務めるなど初めてのことであったと、付け加えた。
そのカーニー首相が、アメリカとカナダの同盟の終焉を宣言したのだ、と田代氏は強調した。
田代氏は、カーニー首相の発言とあわせて、4月16日に『ユーロ・ニュース』が報じた、フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長が、「我々が知っていた西側はもはや存在しない」との発言を、「西側の終焉」を示唆する「歴史的発言」と表現した。
田代氏「フォン・デア・ライエン(欧州委員会委員長)が、『我々が知っていた西側「The West」は、もはや存在しない(The west as we knew it no longer exists.)』と。これは、私は正真正銘、度肝を抜かれましたね。
だって、ヨーロッパの政治の頂点に立ってる人が、これは元々、ドイツの『ツァイト』という新聞に答えたのが、当然転載されて『EUROニュース』(2025年4月16日)に載ってたんですね。本当にヨーロッパのトップの中のトップがね、『The West、西側』っていうものは、もうないんです、と。もう『西側』はないわけね。
だから、日本は『西側』の位置にいると言っても、『西側』はもう、ないんです」
- ‘The West as we knew it no longer exists,’ von der Leyen says amid Trump tensions(euro news、2025年4月16日)
田代氏「よく『欧米』とかね、『米欧』とか(ひとくくりに)言うけど、それはもう、フォン・デア・ライエン委員長閣下が『やめてください』と言う。私達は、あれ(米国)とは違うんです、と」
岩上「(欧州は)アメリカとは違うし、日本ももちろん混ぜていないし」
田代氏「そう。だからもう、日本人が勝手にね、欧米とかいうのはやめてくださいと。これはすごいね。歴史的発言だと思う。本当に。なぜか日本のメディアはどこも報じなかったけど」
岩上「SNS経由や何かで、これは広がったりはしてましたけれども、でもこれの深刻さをちゃんと解説してないですよね」
田代氏「これは本当にね、もう歴史の大転換ですよね、本当に。一番は、これ言ってることと怖いのは、結局、例えば『ユナイテッド・ネーションズ』っていうのを、安全保障理事会のつくり方っていうのは、明らかにこの『西側』が、多数を占めるように作ったわけですよね」
岩上「国連の安保理ですね」
田代氏「要するに、常任理事国のうち3つは西側だってことで」
岩上「そうですね。つまり、アメリカとフランスとイギリスってことですよね」
田代氏「でも、それはもう壊れちゃったと。G7も、もっとすごくてね。これも、『西側プラス日本』という組み合わせになってるはずなんだけど、『西側はない』って言ってるわけです。
言えるのは、おそらく、トランプがG7に行くか行かないかっていうのは、常にもめるよね。あんまり行きたくないと思う」
岩上「もう、G20には行かないって言ってますよね。G20はボイコット」
田代氏「もう面白くもないし。でもG7は、もっと面白くないよね。もっと言えば、これはG7会合っていうのを、ヨーロッパの側がもうやめるかもしれないですね。意味ないじゃないですか、アメリカがそう言うんだったら」
岩上安身は、日本の岸田前総理や石破総理、外務大臣は皆、「西側と協調」と言い続けてきたが、もはや意味をなさなくなった、とコメントした。
その上で岩上安身は、「西側の終焉」というが、これは「トランプ」という、歴史的にも特異な大統領のために起きている一時的な事象なのか、しかし、経済などのファンダメンタル(特に米国の財政赤字)が変わってしまった今、大統領が変わればまた変わる、というわけにはいかないのではないか。むしろ、だからこそ、トランプのような大統領が出てきたと考えるべきなのかと、田代氏に問いかけた。
田代氏は「アメリカ社会が変わったから、トランプが出現できた」と答え、トランプ自身は1980年代からずっとああいう人だったのだから、と付け加えた。
田代氏は、「米国とカナダの同盟関係の終焉」、そして「西側の終焉」を、日本人はもっと真剣に受け止めるべきだ、と指摘した。
田代氏「だから、これはもっと、日本人がもっと真面目に考えないと。日本の立ち位置って何ですか?『西側の一員です』と。でもその『西側』はないんです」
岩上「アメリカが同盟国である、という話(は終わった)」
田代氏「それは日本側がそう思っているだけで。既に、だって、アメリカで日本人の留学生もビザを取り上げられて、強制送還されているじゃないですか。それは、明らかに、ドイツ人より扱い悪いですよ。ドイツ人やフランス人の留学生が、ビザ取り上げられたっていう話は聞いたことないから。
それからすれば、日本も既に、アメリカからすれば『仮想敵国』の扱いですよね。トランプは確か、2018年に、安倍晋三が当時首相だった。やってきた安倍晋三に、『アイ・リメンバー・パールハーバー』と言ったと、『ワシントン・ポスト』が報じて。
これをホワイトハウスも、日本の総理官邸も、否定してないですよね。認めてもいないけど。もし虚偽だったら、それは猛然と否定しますよね。
実際、その『ワシントン・ポスト』が出した写真見ると、その後、庭をね、トランプが先に、後ろから安倍晋三が歩いてるんだけど、安倍晋三がものすごい形相で歩いてる。手がグーなんですよね。
よほどのことを言われたんでしょう、というのが想像つきますよね」
田代氏は、ベトナムやマダガスカルなどにとんでもない高関税をかけているトランプ関税のデタラメぶりを指摘し、1980年代で頭の止まっているトランプ大統領には、現在の中国企業がグローバルに展開していることなど想像もつかないのではないか、と推測した。
田代氏は、「真面目な話、トランプによる攻撃から、世界みんなで共同して守らなければ」となるし、トランプ大統領とホワイトハウスがどんなにデタラメでも、何も考えてない状態でも、「怖いのはこっち(米国の財政危機)」だと述べた。
田代氏「アメリカの財政危機の混乱が来ますよね。特に日本なんて、もう本当にアメリカ国債がデフォルトしたら、おそらく日本国債は道連れですよね。だって、日本が米国債の最大保有国でしょ。売れないでしょ。もう暴落寸前だったら、もう誰も買ってくれないから」
岩上「早く(米国債を)売らなきゃいけないじゃないですか」
田代氏「でも怖いのは、そうなってくると、日本がこう、一応日本人が好きな言い方をすると、世界最大の対外投資国です。純投資国なんですね。
つまり、日本から投資した金額引く日本への投資額の差というのが純投資額なんだけど、日本に投資する国はあんまりないからで、これはあんまり自慢にならないんだけど、言えるのはたぶんそれを日本は巻き戻すだろうな、ということ。
つまり外国に置いている日本の資産を、アメリカ国債がダメになっちゃったら、他のやつを戻そうとするだろうと。その前に売っちゃいますよね。だから、世界各地で日本よりも先に売り抜けるという報道が出ると、これ、世界中で大暴落が連鎖しますよね。
米国債がクラッシュしてしまえば、最大保有国である日本は、最大の被害国なんだから」