立命館大学名誉教授・安斎育郎氏「ロシアには、安全保障上の懸念を根本的に取り除き、二度と、ドンバスの人々を含むロシア語話者に対する民族浄化的弾圧をさせない、という目的がある。だから、『戦争』と言わず『特別軍事作戦』としている。~3.30 ISF主催公開シンポジウム:トランプ政権とウクライナ戦争の行方 ~戦争終結に何が必要か~ 2025.3.30

記事公開日:2025.4.9取材地: テキスト動画

(取材、文・浜本信貴)

特集 ロシア、ウクライナ侵攻!!|特集 IWJが追う ウクライナ危機
※25/4/13テキスト追加

 2025年3月30日午後1時30分より、東京都文京区の全国家電会館にて、ISF主催公開シンポジウム「トランプ政権とウクライナ戦争の行方~戦争終結に何が必要か」が開催された。

 ISF代表理事の岡田元治氏は、開会の挨拶の中で、次のように述べた。

岡田氏「こんなこと言ったら身も蓋もないんですけれども、ウクライナ戦争が終わっても、やつらは次の戦争を作り出すので、どのみち、そして、次の戦争の理由を見つけるというか。理由がなければ、理由をねじ込んで作り上げる、仕込むので、戦争がなくなる世の中というのは、悲しいかな、永遠に来ないと私は思っている。

 常にその犠牲にさらされる貧乏な人々と子供と女の人達は、本当に紛争の現場にされちゃう。その現場の人々がただ可哀想だなと思って、情けなくも眺めているだけという状態です。

 そういう意味で、今日のヨーロッパの現場を、皆さん最も詳しい方々にお話しいただきますので、どんな話が出てくるのか。私もとても楽しみにしております」

 このたびのシンポジウムでは、今も続くウクライナ戦争をテーマに、あらためて戦争勃発の要因と背景、平和実現の条件と方法、そして、急速に変容する世界秩序について考えるものだった。

 シンポジウムは2部構成で進行し、第1部では、立命館大学名誉教授・安斎育郎氏、元外務省欧亜局長・東郷和彦氏、青山学院大学名誉教授・羽場久美子氏、一水会会長・木村三浩氏、そして、アジア・インスティチュート理事長・エマニュエル・パストリッチ氏が登壇し、それぞれ報告を行った。

 第2部では、第1部の登壇者5人によるパネルディスカッションが行われ、その後、質疑応答となった。

 パネルディスカッションは、ISF編集長・木村朗氏からの質問に、パネラーの5人が答える形で進められた。

 木村氏からの「(停戦に向けた条件の中で)ウクライナとロシアが一番妥協しにくい点とは何なのか」との問いに対して、安斎氏は以下のように答えた。

安斎氏「ロシアはとにかく、目的ははっきりしていて、今日のお話をうかがってもはっきりしているように、『安全保障上の懸念を根本的に取り除きたい』ということと、ウクライナにいる親露派というんですか、ロシア語話者に対する弾圧のようなことが起こらないように、『アゾフをはじめとする民族主義者達が二度と、ドンバスの人を含むロシア語話者に対して、民族浄化的な弾圧を加えるようなことをさせない』という、そういう目的があって、『戦争』と言わないで、『特別軍事作戦』としてやっているんですね。

 だから、その2つには徹底的にロシアはこだわるんですね。

 しかも、戦局が今、ロシアに圧倒的に有利な状況がある中で、やっぱり2つのこと。1つは、ドンバスを含めて、さんざんウクライナ政府によっていじめられた人々が、二度とそういう目に遭わないように、ドンバスの地域の戦線の決着をつけるまでは、なかなかやめないと思いますね。

 それから、クルスク。これがウクライナの侵略ですけれども、日本は面白いことに、マスコミがこぞって『越境攻撃』という言葉を使って区別するんですけれども、クルスクからやっぱりウクライナ侵略軍を完全に追い出す。そこまでは、ロシアはこだわると思いますね。それは非常に、ゼレンスキーにとっては、妥協しにくいところであろうと思いますね。

 トランプが出てきて、『いや、領土の割譲もあり得る』ということになって、それをゼレンスキーにも言って聞かせているようではあるけれども、ゼレンスキーが、それをどこまで受けとめて、どこまでのロシアの占領した地域をロシアに割譲するかというのは、まだゼレンスキーの方に忸怩たる思いがあって、なかなかそこは妥協しないんじゃないかという気がしますね。

 だから、多分、一番こだわるとすれば、ゼレンスキーは格好悪い負け方をしたくない。それはアメリカにとってもそうだけれど、アメリカは仲介の労に乗り出したんだから、そういう視点は薄れていると思いますけれども、ゼレンスキーにとっては、もし、戦争に負ける形で、この戦争の決着がつくようであれば、ゼレンスキーは多分、戦争犯罪人として断罪されるに相違ないので、そういう負け方はしたくないんですね。

 ロシアはさっき言ったように、最初から主張している点が、スジが通るような形で決着をさせたい。戦局がロシアにとって、今、有利に進行しているから、それを成し遂げるまではなかなか停戦という、『永続的な停戦』というのには、同意しないのではないかと思いますよね」

 シンポジウムの詳細については、全編動画を御覧いただきたい。

■全編動画 第1部

■全編動画 第2部

  • 日時 2025年3月30日(日)13:30〜17:30
  • 場所 全国家電会館(東京都文京区)
  • 主催 ISF(独立言論フォーラム)(詳細

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