「安倍総理の靖国参拝は、文化的・モラル的な意味での『敗戦』である」
靖国問題の世界的な専門家3人による記者会見が、2月5日、日本外国特派員協会で行われた。
元外交官で、現在京都産業大学教授である東郷和彦氏は、会見の中で、昨年12月26日の安倍総理の靖国参拝を、「外交的な大失敗」だと断言した。
(取材:IWJ 松井信篤、記事:IWJ 野村佳男)
特集 戦争の代償と歴史認識
「安倍総理の靖国参拝は、文化的・モラル的な意味での『敗戦』である」
靖国問題の世界的な専門家3人による記者会見が、2月5日、日本外国特派員協会で行われた。
元外交官で、現在京都産業大学教授である東郷和彦氏は、会見の中で、昨年12月26日の安倍総理の靖国参拝を、「外交的な大失敗」だと断言した。
記事目次
■ハイライト
東郷氏は、尖閣問題では中国の強権的な行為に国際世論は一斉に反対していたが、安倍総理の靖国参拝一つで、日本は尖閣への国際的な支持を失ってしまったと指摘。「あのタイミングでの靖国参拝は、文化的・モラル的な意味での敗戦である」と、日本の国益を損なった安倍総理の行動を強く批判した。
日中両国が戦争になることを米国が望んでいないのは明らかであり、米国の同盟国である日本が中国を挑発するのは「非常識」だと、東郷氏は語る。抑止のための防衛力強化に走るのではなく、信頼に基づいた対話こそが必要だと主張した。
東郷氏は、戦没者を祀る場としての靖国神社の歴史的意義を認めつつ、そのためには靖国神社の再構築が必要だという立場だ。
再構築を阻む問題として、東郷氏は「戦争責任」と「遊就館(ゆうしゅうかん)」を挙げた。村山談話は侵略戦争については謝罪したが、戦争指導者が赤紙一枚で国民を兵隊として招集した責任について触れていないことが問題だと述べ、戦争指導者の戦争責任について日本の立場を明確にすべきだと語った。
1972年の日中国交正常化において、「日本の戦争指導者は日中両国民の共通の敵」という理解が定着したことから、A級戦犯が合祀されている靖国神社への参拝に中国が反応するのは自然なことであると説明。また、靖国は純粋に戦没者の慰霊施設であるべきで、遊就館における戦争の展示は不必要だと主張した。
東郷氏は、総理大臣の仕事は、靖国神社をモデルチェンジして、A級戦犯合祀以来参拝を自粛している天皇も参拝できるようにすることだと論じた。
(…会員ページにつづく)