ジャニーズ性加害問題を国連WG糾弾!「日本のメディアは数十年も、もみ消しに加担!」「政府の義務で、実行犯を捜査し、謝罪・金銭補償など被害者救済を確保すべし!」〜8.4 日本記者クラブ主催 国連「ビジネスと人権」ワーキンググループ 会見 2023.8.4

記事公開日:2023.8.8取材地: テキスト動画
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(取材・文、木原匡康)

 2023年8月4日、東京都千代田区の日本記者クラブにて、国連「ビジネスと人権」ワーキンググループ(作業部会)による記者会見が行われ、IWJが中継した。会見は英語での報告に、日本語通訳が付けられた。

 登壇したのは、7月24日に来日し、日本企業における「ビジネスと人権」の問題を調査した、同作業部会議長のダミロラ・オラウィ氏と、同アジア・太平洋地域メンバーのピチャモン・イェオパントン氏である。

 両氏は、政府の各省庁・機関の担当者、国会議員、地方自治体、企業、経済団体、業界団体、 市民団体、労働組合、労働者、市民、人権活動家、学識者、ジャーナリスト、弁護士など、きわめて多方面と会談を行った。企業には、味の素や東京電力などの大企業から中小企業、そしてジャニーズ事務所も含まれる。

 はじめに「日本におけるビジネスと人権の概況」が報告された。「国連ビジネスと人権に関する指導原則(UNGPs)」への日本の取組みを評価する反面、その不徹底と、「人権を保護する国家の義務」「企業の責任」や、司法など「救済へのアクセス」の課題が示された。

 次に、「リスクにさらされるステークホルダー集団」として、女性、LGBTQ+、障害者、先住民族、部落、労働組合の現状と課題が報告された。

 さらに、「テーマ別分野」として、健康、気候変動、自然環境に関する人権上の課題を報告。福島第一原発事故の汚染除去労働等の強制性や搾取的な下請慣行、安全性を欠く労働条件などを指摘するとともに、汚染水処理関連のデータ公表も呼び掛けた。PFAS(有機フッ素化合物)などの水質汚染問題も指摘。加えて、技能実習制度と移民労働者に関する問題、韓国人、中国人労働者へのヘイトスピーチ等の問題も指摘された。

 報告はこのように幅広い分野に渡ったが、最後に「メディアとエンターテインメント業界」のハラスメント等に関して、ジャニーズ事務所の性加害問題が取り上げられた。

 「ジャニーズ事務所のタレントが絡むセクシュアル・ハラスメント被害者との面談では、同社のタレント数百人が性的搾取に巻き込まれるという、深く憂慮すべき疑惑が明らかになった」と指摘。さらに、「日本のメディア企業は数十年にもわたり、この不祥事のもみ消しに加担したと伝えられ」「政府や、この件について私たちがお会いした被害者たちと関係した企業が、これについて対策を講じる気配がなかったことは、政府が主な義務を担う主体として、実行犯に対する透明な捜査を確保し、謝罪であれ金銭的な補償であれ、被害者の実効的救済を確保する必要性を物語って」いると、メディアと政府の責任を追及した。

 さらに、「証言によると、ジャニーズ事務所の特別チーム(または独立チーム)による調査については、その透明性と正当性に疑念が残って」おり、「ジャニーズ事務所のメンタルケア相談室による精神衛生相談を希望する被害者への対応は不十分だとする報告も」あると、厳しく指摘した。

 結びでは、政府に対して、あらゆる業界での人権侵害の被害者救済に向け、独立のNHRI(National Human Rights Institutions 国家人権機関)設置」を求めた。

 同作業部会は以降数ヶ月、情報収集を行い、2024年6月の人権理事会に最終報告書を提出する予定である。

 質疑応答では、ジャニーズ事務所の問題に質問が集中した。

記者「ジャニーズ問題に関して、政府が透明な捜査をする必要性を提言されたが、テレビ局や新聞雑誌、スポンサー企業、広告代理店など、ジャニーズ事務所と取引関係のある企業も、人権デューデリジェンス(※)を行使して、徹底的調査をするよう働きかけるべきではないか? また、自企業も、どんな加担をしてきた可能性があるか、自企業内に調査チームを立ち上げ内部調査をすべきではないか?」。

※IWJ注:人権デューデリジェンスとは、企業活動における人権リスクを抑える取り組み。自社の企業活動において強制労働やハラスメント等の人権リスクや人権に対する負の影響がないかを特定し、そのリスクを分析・評価して適切な対策を策定・実施する。

回答「人権を守る主たる責任はまず政府にある。ただ、指導原則にも書かれているが、あらゆるセクター、業種、規模の企業が、人権デューデリジェンスを行うことが重要だ。私たちはすべての企業、特にこのメディア・エンターテインメント業界にあるすべての企業が、この乱用問題を特定をし、それに対応するための能動的、積極的な人権デューデリジェンスを行うということをうながしたい」。

記者「ジャニーズ事務所のように子ども、児童のタレントを抱える事務所が、性加害を防ぐためには、どのような措置を取るべきだったか?」

回答「指導原則では、調査をする際にはそれが正当な調査であり、透明性のある調査でなければいけないと書かれている。これを担保する必要があり、また関連するすべてのステークホルダーがこの指導原則を守り、すべての人の人権に責任を持つべきだ」

回答「まず、企業が法律を守り、そして人権デューティリジェンスを行うことで、自分たちの事業にどのようなリスクがあるのかを理解することが非常に重要だ。そして子どもと子どもの権利を守っていくことが重要となる。

 企業にもう一つ求められるのが、救済メカニズム、苦情処理メカニズムを作ることだ。過去の苦情、将来発生する苦情を処理できるメカニズムを作ることが必要で、そのメカニズムの設計にはすべてのステークホルダーが関与して作っていくことが必要。また政府としては特に子どもの人権を守る法律の改善が求められる」

記者「ジャニーズの代表の方とお会いしたというのは、藤島社長か? どういった内容の話があったのか?」

回答「ジャニーズ事務所の代表の方とお会いしたというふうに申し上げたが、これ以上のさらなる情報は提供できない。

 内容に関しては、我々として知りたかったのは、今告発されている内容について、それに対してどのような措置が取られているのか、その対応が正当なものなのか、効率的なものなのかということだ。(後略)」

 そのほか、「ジャニーズ事務所性加害の被害者は数百人に上るというが、米国のハーヴェイ・ワインスタイン等のケースと比較してどう評価するか?」「今回なぜテレビ局を調査しなかったのか?」等々、ジャニーズ関連の質問が続いた。

 IWJ記者は、質問を用意して挙手を続けたが、残念ながら指されなかった。

■全編動画

  • 日時 2023年08月04日 15:00~16:30
  • 場所 日本記者クラブ 10階ホール(東京都千代田区)
  • 告知 日本記者クラブ サイト内告知

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