岩上安身は昨6月22日、正午12時から、社民党党首の福島みずほ参議院議員に、9日に成立した「改悪」入管法について、インタビューを行った。
このインタビューは、岩上安身が6月16日に行った、福島議員へのインタビューの続編であり、完結編となる。
16日の1回目のインタビューでは、「2回難民申請をして認められていなければ、3回目申請中でも本国に送還する」という、「改悪」入管法の問題点について、25年にわたって入管法問題に取り組んできた福島議員の経験や、日本の難民認定率の異常な低さ、参院法務委員会での法案審議で噴出した、立法事実をも揺るがす難民審査参与員の審査実態などについて、お話をうかがった。
1回目のインタビューは、下記のURLより御覧いただけます。
6月22日の第2回インタビューでは、21日に閉会した通常国会で、立憲民主、社民、共産、れいわ、沖縄の風が、議員立法で参議院に提出した難民保護法案と入管法改正法案について、可決・成立してしまった政府案との違いについて、また、「改悪」入管法が1年後に施行されるまでに、何ができるのか、といったことについて、お話をうかがった。
福島議員は、政府の「改悪」入管法に反対した理由について、「日本で難民認定制度がまったく機能していない中で、2回目がだめだったら(難民申請が認められなければ)3回目の申請中でも送還するとすれば、難民の人を本国に送り返してしまうことになる。これはまさに、死刑の執行のボタンを押すようなものである」と訴えた。
「改悪」入管法が可決・成立したことで、「当事者が怯えている」として、福島議員は、次のように語った。
「参議院の参考人質疑で、ラマザンさんという20代の若い青年が、発言をしているんです。
日本で生まれた彼の妹は日本でずっと育っているんだけど、彼だけ、日本の特別在留許可が認められているんです。だから、ものすごく心配して、参考人として(国会に)出ることにも勇気がいったと思うけれど、周りのことを心配しているんです。両親を含め、周りが強制送還されるんじゃないかと。
(難民申請をしている人たちは)今、ものすごく暗い顔、真っ暗になっていて、自分は(難民申請を)何回もやっていて、送還されるんじゃないかとか、それでみんな、ものすごく、今、怯えている状況です。
だから、いろんな市民社会の人たちと『守らなければいけないよね』という話をしているところです」。
福島議員は、この法律の正式名称が「出入国管理及び難民認定法」であることをあげ、「出入りの管理に関する法律だから、外国人は管理の対象なんですね。特別在留許可も、裁量の幅が大きくて、ブラックボックスじゃないですか」と述べ、「どこにも人権という概念がないんですよ。それが問題だと思います」と、訴えた。
参議院に提出した野党案については、成立はしなかったものの、政府案と共に審議されたことで、「意義はあった」として、福島議員は次のように語った。
「(野党の)難民保護法案は、難民認定制度について、入管と切り離して、独立した第三者機関を作り、ここでしっかり難民認定していくべきだ、というもの。ここ(第三者機関)で、客観的、中立的に、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)がいうような難民認定をすべきだ、というもの。
もうひとつ、入管法の方は、(入管での長期収容について)司法的チェックをする(現在は入管の行政判断だけで身柄を拘束している)、上限規制をする(現在は収容期間に期限の定めがない)ということを入れた。対立軸は、ものすごくはっきりしていたと思います」。
さらに福島議員は、成立した「改悪」入管法で、新たに「送還忌避罪」という犯罪が作られたことを指摘し、「(2回の難民申請が認められず)3回目申請中でも送還を拒否すれば、送還忌避罪になって、刑務所に行くんですよ、今度は。だから、(危険な人権侵害の待つ)本国に返すか、刑務所に行くかの選択ですよね」と述べた。
その上で福島議員は、次のように語った。
「ほとんどの人は(本国に『帰れ』と言われて)帰るし、帰らなきゃいけない人もいると思います。
しかし、それは、難民認定制度がしっかり機能していて、『難民は難民として保護します』。そして、『あなたは、申し訳ないが、難民ではないからお帰りください』と、そして何であなたは難民じゃないのかっていう説明もちゃんとして、納得してもらう。
この手続きが、ちゃんとしていればいいけど、それがないんですよ」。
インタビューではさらに、ウクライナからの難民を、一般の「難民」と違う「避難民」と区別した上で、日本政府が積極的に受け入れてきたことについて、難民審査参与員も務めた明治学院大学の阿部浩己(こうき)教授の「政治的に選別された人道主義の色合いが濃厚に滲んでいる」という指摘を取り上げた。
これについて、福島議員は次のように語った。
「何でクルド難民を認めないかというと、日本が親トルコ、現政府と仲がいいから、という言い方もされるんですね。だから、とても政治的な色合いが強い。
難民調査官がいて、難民参与員がその(審査結果の)不服申し立てを(審査)する。そこで、『難民不認定だけど難民認定すべきだ』となったケースが、わりと最近、13件あるんです。しかしそれを、政務三役(法務大臣、副大臣、政務官)などが難民不認定にしたケースが13件あるんです。
その国籍を聞いたら、トルコ、ミャンマー、スリランカ、中国でした。4国の割合は教えてもらえなかったんですが、もしかしたら、トルコが多いのかもしれない。今度聞いてみますが。
何が言いたいかというと、親トルコだから、クルド人は何が何でも難民認定しない、ということであればおかしいし、政治状況が変われば『この国は難民にします』となると、まさに『政治的に選別された人道主義になっちゃいますよね」。
このあと、インタビューでは岩上安身が「戦争になれば、島国の日本人は陸路では逃げられない。船や飛行機で国外に逃れ、難民申請した時、これだけ難民を拒んできた日本人を、どこの国が受け入れてくれるだろうか?」という問題を提起した。
さらに話題は、関東大震災の際の朝鮮人虐殺の問題に移った。
福島議員が6月15日の参議院法務委員会で、関東大震災での朝鮮人虐殺をめぐり、当時警察を所管していた内務省が、全国の地方長官あてに発した、朝鮮人が「爆弾を所持し、石油を注いで放火」しているので戒厳令を敷いたという電信文を取り上げ、「外国人を犯罪者扱いにして、(虐殺を)煽ったということと、入管法で、犯罪者予備軍だ、帰れ帰れとやってきたこととどこが違うんですか? 地続きじゃないですか」と追及したことについても、お話をうかがった。
福島議員はインタビューの最後に、次のように語り、今後についての決意を表明した。
「今回の入管法改悪法の議論の中で、『仮放免中で犯罪を犯している人がいる』とか、『犯罪者、犯罪者』っていう言葉をすごく使われたり、『人権より国益』という言葉が質問の中で使われたり、外国人排撃と差別の意識や法政策が、まさに100年経っても地続きとしてあるんじゃないか。
外国人は取り締まるべきものだっていう考え方が、日本の政策のど真ん中、政策、法制度、人々の意識の中に、まだまだある。これを、変えなくちゃいけない。
だから、難民認定制度をちゃんとするとか、諸外国、先進国並みに入管の制度を整えるとか、岩上さんが何度もおっしゃった『法の支配』ですよ、そういったことを、これから、あきらめないでたくさんの人とやっていきます」。