2025年8月18日、「岩上安身によるインタビュー第1204回ゲスト 一水会代表木村三浩氏 第2回(前編)」を初配信した。
8月15日(日本時間8月16日)に、米国アラスカ州アンカレッジの米軍基地で、ドナルド・トランプ米大統領と、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の会談が行われた。
- アラスカでの米露首脳会談で、『もし自分が大統領だったら戦争は起こらなかった』と述べたトランプ大統領の言葉を、ロシアのプーチン大統領が、「真実だ」と断言!「ウクライナ紛争の永続的な解決には、根本原因のすべてに対処」する必要を訴えたプーチン大統領だが、その中身について、『N.Y.タイムズ』はプーチン氏が「ドンバスの割譲と、ロシア語がウクライナで再び公用語とされることの保証と、ロシア正教会の安全保障を求めている」とスクープ! トランプ氏は、「停戦できるかどうかはゼレンスキー氏次第」「単なる(即時)停戦合意ではなく、戦争を終わらせる(恒久的な)和平合意」を進めると、ロシア側の主張をほぼ受け入れ!?
(日刊IWJガイド、2025年8月18日)
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今回の第2回インタビューは、このアラスカでの米露首脳会談の直前に行われた。第2回インタビューの前半では、このアラスカ会談について、岩上安身と木村氏が考察し、議論した。
岩上安身は、このアラスカ会談について、「僕はすごく胡散臭いと思ってます」と述べ、その理由を次のように語った。
「どういうことかというと、話がトランプ主導でしょう。
それから、プーチンが、これ、一応はアメリカ領土に入るわけですよ。その危険性ということも、随分言われています。だって、(米国は)人を殺すことを何とも思ってない国だから。
そういうことも言えるんですけど、トランプ大統領が『ウクライナ危機を、とにかく停戦しろ』と言ったんだけど、プーチン大統領は『いや、しませんよ』って言ったわけですよ。当たり前ですよね。
で、『選択肢を議論する』って言うんですが、これ、結局領土交換ということになる。
ウクライナと欧州抜きで会談するということに、ゼレンスキーも、それから(米国の)民主党も、みんな反発しているわけですね。
もちろん、NATOと言っても、NATOの一番上の司令官は、米軍人ですから、そこは言わないですけど。
それで、発表する直前の記者会見で、このウクライナ紛争について、『これは起こってはならなかった戦争であり、私が大統領であれば決して起こらなかったでしょう』とか、『これは私の戦争ではなく、バイデンの戦争です』と、責任を全部バイデンに押し付けた上で、『一部を取り戻す。一部を交換する。領土の交換が行われる』と、領土効果について言及した。
たしかに、一時、ウクライナ軍がロシアの領土内に入りました。クルスクに。だけどあれは、全部包囲したあげく、殲滅しちゃいました。だから、(ウクライナには)交換するような領土が、どこにもないわけですよ。だから、これはナンセンスだと、はっきり、まず、言い切っているわけですよね。
あと、当たり前なんですけど、そこが本当にウクライナ人の領土で、そこをロシアが奪ったんだとしたら、統治も難しいし、返さなきゃならないでしょうって話になるんだけど、そこ(現在ロシアが占領しているウクライナ領土)のほとんどが、昔からのロシア領で、『ノヴォ・ロシア』と言われたところであり、何世紀も前までさかのぼる話で、ほとんどロシア語話者が住んでいるわけです。
そして、このウクライナという人工的な国は、30数年前に独立したんだけど、ウクライナ語話者とロシア語話者とが、2対1ぐらいの比率でいるわけですよね。残りはタタール人とかもいるわけで、まあ、木村さんの方が詳しいかもしれないけど。
そうしたら、ロシア語話者が9割以上じゃないですか。あとはタタール人とか。タタール人こそ、一番古い人達だからね。でも、それを言っていたら、どんどんさかのぼっていって、民族の交差点みたいなところだから、キリがないんですけど。
簡単に言って、ロシア人の土地で、そして、2014年のユーロ・マイダン以降、ずっと(ウクライナ政府がロシア語話者住民を)虐殺してきたんじゃないですか。
ガザみたいなことをしてきたのは、ウクライナ政府なのであって、いまだに公用語としてロシア語をしゃべることを許さないし、ロシア語文化を禁止しているし、ロシア語(を用いること、教育も含めて)は全部、犯罪なんですよ。
そのロシア人に、人権を認めてないし、ひどい話ですけど、年金も払ってないわけですよ。
そういうことを、何にも西側は責めないじゃないですか。
そして、その上で、それを改めない限り、『返す』なんてできるわけがないし、『帰りたい』なんて思うわけがない。だって生きていけないんだもの。
ゼレンスキーは、ちゃんと、はっきり言っています。自分の言葉で。
『ここはウクライナだ。ウクライナ人の土地だ』と。『ロシア人は、いらない』と。で、『ロシア語は、使わせない』と。『嫌だと言うんだったら、出て行け』と言っています。
で、1000万人ぐらい難民になったんですけど、ほとんどの人がヨーロッパへ行ったと思っているんですけど、一番多いのは、100万人くらい、ロシアへ行ったんですよ。それぐらい、やっぱりロシア人の人口が多いわけですよ。
だから、本当は、スイスとか、ベルギーとか、複数言語・複数民族国家になるべきだったじゃないですか。それをやらなかった。そのツケが回ってきたわけで、じゃあ、ウクライナ語話者だけで(国家を)作りたいんだったら、じゃあこのぐらいの(中西部の)3分の2であって、こっち(東部の)3分の1ぐらいが、ロシア語話者の国、もしくは、ロシア連邦に入りたいって彼らが言うんだったら、じゃあロシア連邦に入るのでいいじゃないですか、という、線引きのラインだと思うんですよね。
で、今、ちょうどそこのラインに来てて、最大の要衝のポクロフスクで、激戦をやっているんですけど、もうそろそろ陥落しそうなんです。
ここを陥落しちゃうと、八方に道路が伸びていて、兵站の要衝なんですね。だから、前に飛び出しちゃっているウクライナ軍は、もうこれから、兵站が行かなくなるんですよ。
そして、後から来る人達(ウクライナ軍)は、ここを通らないといけないですよ。しかも、(ウクライナ軍の)陣地がないので、ロシア軍は、『無人の野を行くがごとく』になっちゃうわけですよ。
だから、「まあ、このくらいのところでいいんじゃないの』と、僕個人は思うし、キリがないから。
ただ、それは、ウクライナ側も、ちょっと姿勢を正さないと。
『我々は、ウクライナ民族国家を作りたかった』『ウクライナ人としてやりたい』と。
だけど、『ロシア語話者を粛清したり、虐殺したりしたことは、悪かった。だけど、俺達も犠牲を出したんだから、もうここらで手を打って、今(ロシア軍の占領下に)あるところは、ロシア語話者の国なんだから、もうそれでいい』という話ができるんだったら、会話になると思うんですけど、でも、そんな気はないでしょう」。
これに対して、木村氏は、「昨日あたりから、ゼレンスキーも呼ぶんだとかいう話になってきている」と指摘し、「ゼレンスキーが来るなら、プーチンは行かないだろう」との見方を示した。
その上で木村氏は、「結局、プーチン大統領が来ないということで、またロシアを悪くさせるようなプロパガンダなのかな、とも思っている」と、懸念を示した。
他方で木村氏は、「ゼレンスキー氏が来ず、プーチン大統領とトランプ大統領の話ができれば」との条件で、次のような見解を示した。
「これは、『領土の交換』ということではなくて、『もともと、ロシアの人が住んでいた土地なんだ』ということで妥結するということ。
それで、『その前に停戦だ』とした時にですね、トランプの顔を立てて、空域のミサイルとか、ドローンとか、そっちの方面での部分的な停戦を、お互いちょっとしてみましょうよと。
しかし、この領土は絶対に、ロシアの国のものですよと。
それは、さっきおっしゃったように、ここからさらにさらに先でやられちゃったら、ウクライナはもっと小さくなるんですから、それがわかった上で、ゼレンスキーにしてみれば、『我々は、これを放棄するわけじゃない』と。『あくまでも継続協議で、一時的に、今、これはトランプの顔を立てて、ロシア語話者のものと認めるけど、これは一時的なものだ』というふうに、継続協議にしていく可能性もあるのかなと思う」。
岩上安身は、「ちょっと疑わしいのが、ゼレンスキーを呼ぶというのが、罠じゃないかというのが一つある」とした上で、以下のように続けた。
「もうひとつ罠があって、実は、NATOの最高司令官というのは、常に米軍の軍人なわけですよ。
これが辞任して、もう司令官を辞めると。つまり、『もう、欧州は、欧州でやってくれ』と。米軍は関与しないかのようなアナウンスを、実はしたんです。
したんですけど、今、NATO軍が何をしているかというと、ほとんど報じられてないんですけれども、特にNATOの中でもドイツ軍がイケイケなんですが…。
ウクライナの西側は、ポーランドに接しているわけです。で、ポーランドから向こうは、全部NATOですよね。そして、ウクライナが落城すると、今度はポーランドが最前線になってしまうから、どうしようと思っているわけです。
巻き込まれるのは嫌だと。だけど、戦わなければいけないかもしれないと。
だから、(NATO加盟国の中で)一番先に(軍事費)GDP5%を達成したのは、ポーランドなんですけど、いかんせんポーランドの武器でやるわけじゃないので、今、最前線、ここの国境地帯に、NATO軍、主として米軍がダーッと、配備されているんですよ。
で、今度は、ウクライナがあって、ここ(ウクライナの北)にベラルーシがありますよね。この上(北)に、バルト3国がある。
バルト3国のリトアニアの、その向こうに、カリーニングラードという(ロシアの)飛び地があるわけですね。ここは、バルチック艦隊が寄港するんですけど、ソ連時代は、リトアニアもベラルーシも全部ソ連だったから、何の問題もなかったんだけど、ここが今、リトアニアを介さないと行けないんだけど、そこが、鉄道を封鎖しているんですよ。
ここはもともと、ケーニヒスベルクという、ドイツの土地だったわけです。で、ドイツはここに野心があるわけですよ。すぐこちら(西側)がドイツになるわけですけどね。
それで、(ロシアから)ここに行くための通過点にあるリトアニアに、ドイツ軍は、NATO軍じゃないですよ、ドイツ軍単独ですよ。ドイツ軍は、第2次大戦後、初めて、派兵したんですよ。大量の陸軍が、ここに入っているんです。
だから、ここ(カリーニングラード)に行くには、間を挟んでドイツが邪魔する。そういう布陣を敷いている。
だから、一方で、『俺達米軍は関与しないからな』と言っても、NATOを動かしているのは、実質、米軍ですから、米軍とドイツ軍がどこまでやるかなんですけれども、完全に、見方次第では、(ウクライナ紛争は)終わるのかな、という見方もあるんですけど、終わらないで、ぐずぐずしたまま。
しょうがないから、ロシアはある程度、攻めていかないといけないじゃないですか。攻めていって、いったんはとにかく(ウクライナ政府を)降伏させない限り、この人(ゼレンスキー)は出ていかないわけだから、どんどん攻めていくというところで、『いや、もうここから先は、攻めさせないぞ』と言って、NATO軍が、どっと入ってくる可能性もある。
今、準備してあるんですよ。それで、大演習をしているんです。そして、ロシア、ベラルーシも、それを迎え撃つ演習をしているんです」。
この岩上安身の発言を聞いた木村氏は、「それは、むしろ、ロシアを挑発していますね」と、驚きを隠せなかった。
このあと、岩上安身は、8月8日に米国が突如、アゼルバイジャンとアルメニアの和平を仲介したことをめぐり、ジョージア、アゼルバイジャン、アルメニアの3ヶ国と、ロシア、イラン、トルコ、イスラエルといった、周辺国との関係や、その背後に、ロシアの弱体化を目論む米国が、早くから青写真を描いていたといった話題についても説明した。
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(日刊IWJガイド、2025年8月14日)
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(日刊IWJガイド、2025年8月15日)
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また、米露首脳会談がアラスカで行われる理由について、岩上安身は、北極海航路をめぐる利権や、米露の直接的な利害関係の調整が行われるのではないか、との見方を示した。




































