2025年7月29日、「岩上安身によるインタビュー第1201回ゲスト 一水会代表・木村三浩氏(前編)」を撮りおろし初配信した。
このインタビューが行われた直前の7月23日、トランプ米大統領が突然、トゥルース・ソーシャルで「日米が相互関税15%で合意した」と発表した。
「私達は今、日本との巨大な取引を完了しました。
おそらく、これまでで最大の取引です。
私の指示のもと、日本は5500億ドル(約86兆円)を米国に投資することになります。
米国は、その利益の90%を受け取ります。
この取引によって、何十万もの雇用が生まれることになるでしょう。これまでに類を見ないことです。
おそらく最も重要なのは、日本が自動車やトラック、コメ、その他の農産物などを含む貿易に国を開放するという点です。
また、日本は米国に対して15%の相互関税を支払います。
米合衆国にとって非常にエキサイティングな時代であり、特に、日本という国との素晴らしい関係を今後も常に維持していくという点において、非常に重要です」。
- ドナルド・トランプ米大統領のトゥルース・ソーシャルへのポスト(2025年7月23日)
このトランプ大統領のポストは、奇々怪々である。
日本が、86兆円もの対米投資をするというが、原資はどこから出すのか? 86兆円のうち、「真水」(実際の現金支出)はいくらなのか? 投資は、単年なのか、それとも複数年なのか?
また、投資に対して、「その利益の90%を米国が受け取る」とは、どういうことなのか? 文字通りに受け取れば、ボッタクリではないか!?
「日本が自動車やトラック、コメ、その他の農産物などを含む貿易に国を開放する」というが、どのような形で「開放」するのか? すでに関税率0%の米国車に、日本の市場を「開放」するとは、何をするのか?
IWJは、すぐに経産省に直撃取材したが、経産省も、合意の内容については「まだ精査しきれていません」とのことで、「本当の真意については、ちょっと、トランプさんに聞いていただかないとわかりません」と答えた。
- トランプ大統領が15%の相互関税で日米合意したとトゥルース・ソーシャルにポスト! そのポストには、日本への誤解や強要もある! IWJは、経産省に、このポストの内容について緊急取材! 交渉にあたった赤沢経済再生担当大臣は「ジャパン・インベスト・アメリカ・イニシアティブ」という協定を結び、日米2国間だけでサプライチェーンを構築すると発表! 半導体、医薬品、鉄鋼、造船、重要鉱物、航空、エネルギー、自動車、AI、量子等の10分野に5500億ドル(約86兆円)を政府系金融機関が投資! この資金源はどこから捻出するのか? しかも、その投資から得られる利益の9割を米国のものとするという奴隷的協定!
(日刊IWJガイド、2025年7月24日)
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岩上安身は、「何が『相互関税』か。少しも相互性がない、トランプの一方的関税だ」と指摘し、合意内容は「奴隷的、屈辱的な、不平等協約であり、米国隷従の極み」だと批判した。
その後の報道では、ホワイトハウスが公表した「ファクトシート」で、日本がボーイングの航空機100機を購入することや、米国製の防衛装備品を、毎年、数十億ドル追加購入することなどが、明らかにされている。
- Fact Sheet: President Donald J. Trump Secures Unprecedented U.S.-Japan Strategic Trade and Investment Agreement(The WHITE HOUSE、2025年7月23日)
木村氏は、「ポンコツ兵器を買わされたり、農産物にしても、薬漬け、保存料漬けのものを、『開放された』といって、こっち(日本)に回される、という懸念がありますね」と指摘した。
さらに木村氏は、「ぼったくり、押し売り」だという岩上安身に同調し、次のように述べた。
「投資するにしても、『ここは儲かりそうだ』ということで、投資をしましょうと。そして、リターンがあると。
『これは、いい商品で、いいクオリティーだ。いい研究部門だ。これは、みんなの共通の利益になる』ということで、(投資を)やるわけだから、儲かったもの(利益)の9割を(米国が)持って行っちゃったら、普通の投資家は、投資しませんよ。
それを、じゃあ日本政府が、どういうような決定条件を出すのか、特別会計だというならば、どこから出すのか、これを多年度でやるのか、どうなのか、というのも、これから出てくる」。
なお、米国との交渉にあたった赤沢亮正経済再生担当大臣は、生出演した7月26日の『NHK』のニュース番組「サタデーウォッチ9」で、投資について、「JBIC(国際協力銀行)など政府系金融機関が、最大5500億ドル規模の、出資や融資、融資保証を提供する」とした上で、「出資が占める割合は1%か2%になる」と述べ、投資期間については、「トランプ大統領の任期中」だと表明した。
木村氏は、「米国内も、(経済は)ガタガタなんだと思います」と述べ、「この(日本からの投資の)86兆円も、トランプにしてみれば、何とか日本から取ってやったという、追い剥ぎみたいなもの」だと語った。
木村氏は、「知り合いの米国人から聞いた話」として、米国務省の人員削減や、米軍の民営化の例をあげ、「ホワイト・プアな人達も増えていて、『シビル・ウォー(内戦)は、もう始まっている』」ことが、「『トランプ関税』の側面・背景にあるのではないか」との見方を示した。
一方で、「ただ、そのやり方は、とんでもないですよ」と指摘した木村氏は、「一応、(日本は米国の)同盟国だというシステムになっているんですけれど、同盟国でも何でもないですよ。もう、こっちはATMみたいなもので、やられちゃっているわけだから」と、強調した。
その上で木村氏は、現在の日本の対外貿易割合が、米国よりも中国の方が多いことを指摘し、「リスクとなるアメリカとの貿易を徐々に減らしながら、アメリカからの圧力をはねのけられるように、段階的に、アジアやロシアとの貿易体制を、これから作れるかどうかが大事だ」との考えを示した上で、「(米国に)軍事依存で囲われているから、(米国依存から)抜け出せない。戦後80年のこの年に、これをいい教訓として、これからどう生かすかということが、本来、問われなきゃいけない」と訴えた。
木村氏は、「トランプ大統領の任期があと3年あることを見据えて、一時的に86兆円の対米投資を搾り取られても、今後は、アメリカからの依存を少しずつ減らして、リスクを回避していこうという戦略的な考えを持っているならば、今回は仕方がない。これから先の対米自立の、ロードマップをつくる上での、高い勉強になると思う」と述べた。
木村氏は、「自民党や政府の中に、それだけの腹を持っている人物が、どれだけいるか、わからないが、今は(米国に)何も言えないのだったら、高い勉強になったかもしれないけれど、先を見据えて、(対米自立を)やるしかないんじゃないか」と訴えた。
トランプ関税のような無法な恐喝、カツアゲ外交に屈する必要があるだろうか!? 米国にこのように国民の血税を巻き上げられて、国民は黙っているべきなのだろうか!?
左右を問わず、政党と国会議員と、日本国民は、こんな米国からの搾取を受け入れるべきではないはずである!
こんなカツアゲ外交を押しつけられて、これを「経済安全保障」などという、泥棒を用心棒と呼びかえるような倒錯に、いつまで自分で自分を騙し続けるのだろうか!? 反対の声を上げるべき時ではないだろうか!!



































