<スクープ!>オレンジ革命から米国はウクライナの権力監視団体等に100万ドルで買収工作! ウクライナで弾圧されている人々の生の声(2)中編~ウクライナ左翼連合リーダー、ヴァシリイ・ヴォルガインタビュー! 2022.6.15

記事公開日:2022.6.15 テキスト
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(文・IWJ編集部 文責・岩上安身 2022年6月10日加筆・アップ)

 ウクライナで実際に弾圧に遭っている人々の生の声を聞くことで、ウクライナ社会の抱える大きな問題の実相を明らかにするシリーズ第2弾の「中編」である。

 ウクライナ紛争を拡大させず、一刻も早く停戦を実現するには、「ロシア=悪魔の加害者 vs ウクライナ=善なる被害者」という硬直した構図から脱却し、戦争の根本原因を探求する必要がある。そして、西側マスメディアの作り出した偏向したストーリーではない、本当の事実にもとづく現実を把握し直すことが重要である。

 ウクライナ社会内部からの声に耳を傾けることは、そのための、大きなヒントを提供してくれるはずだ。

 シリーズ第2弾では、ウクライナ左翼連合リーダー、ヴァシリイ・ヴォルガ氏の声に耳を傾ける。同氏は、ロシアの軍事作戦が始まってから、ウクライナ政府によって拉致され、現在、行方不明になっている。

 本記事では、NEW COLD WARのサイトに2018年11月26日に掲載されたヴァシリイ・ヴォルガ氏へのインタビューの全文仮訳「中編」を掲載する。

 インタビューでヴォルガ氏は、親欧米派が勝利した2004年「オレンジ革命」では、米国から100万ドル(約1億3000万円)もの賄賂で親欧米派支持を依頼されたという衝撃的告白をしている。ヴォルガ氏は断ったが、「複数の公人が金を受け取ってマイダンに行った」とし、「人民革命の本質を垣間見た」と語る。

 オレンジ革命での敗北後に返り咲いたヤヌコヴィッチ大統領の政権で、ヴォルガ氏は金融サービス市場規制国家委員会委員長に任命されるが、収賄容疑で逮捕される。しかし最大の理由は、不正を摘発し、大統領が関与する腐敗、偽造、窃盗という「クレプトクラシー(泥棒)体制」を批判したからだという。

 ヴォルガ氏は、現在のウクライナの政治家たちを「欲しいのはお金だけ」と批判。特に、「オレンジ革命のジャンヌ・ダルク」あるいは「美しすぎる政治家」などともてはやされ、ウクライナ最大の資産家(オリガルヒ)の一人でもあるユリア・ティモシェンコ氏について、「彼女は金のためなら誰でも殺します」と断じている。

 ヴォルガ氏は親露派のヤヌコヴィッチ元大統領の手腕を評価するが、政権が腐敗していたことも事実で、国民の不満がたまったために、「それを米国が見事に利用してマイダンを煽り」「ネオナチはその波に乗った」と、ユーロマイダン・クーデターとは何であったか明らかにする、という。

 繰り返し言及される権力の腐敗や「民営化」と称しての国有財産の「私物化」は、ロシアとウクライナが共通して抱えてきた根本的問題である。しかし、オリガルヒが政治的権力までも握り、不当な利益をむさぼり続け、外国からの介入を招いたウクライナと、プーチンらがオリガルヒ(新興財閥)をシロヴィキ(政治権力)を用いて抑え込み外国・外資の介入を許さず、荒々しいやり方ながら主権国家であり続けることができたロシアとの分かれ目となっている。

 詳しくは、ぜひ記事本文を御覧いただきたい!

 また、シリーズ第1弾も、ぜひ下記から御覧いただきたい。

記事目次

▲ヴァシリイ・ヴォルガ氏インタビューを掲載したNEW COLD WARのサイト
https://newcoldwar.org/interview-with-vasiliy-volga-the-leader-of-the-ukrainian-union-of-left-forces/

「オレンジ革命」勃発! 東西ウクライナで異なる意見!「すべては政治的嗜好の地図に従っていた」!

 以下からインタビューの「中編」となる。

 「ヴォルガ(※インタビュアーのハリナ・モクルーシナ氏がつけた見出し)

 『組織(前編で言及した権力監視の非政府組織「フロマドスキー・コントロール」のこと)は沸騰し始めました。西ウクライナではある意見。以下の『』内はヴォルカ氏の語った言葉が、東ウクライナでは別の意見になり、すべては、政治的嗜好の地図に従っていたのです。私は、「私たちは市民団体であり、政治はしない」と主張しました。

 私たちの仕事は、人々が選ぶ権力者をコントロールすることであり、法律の範囲内で、憲法の範囲内で、当局を市民的にコントロールしながら仕事をしなければならないのです。もし私たちがどちらかの側に立てば、権力構造を構築するための参加者になってしまいます。これは許されないことです。

 マイダンが、本格的に動き出しました(※原注1)。私はマイダンを歩き、人々と話し、憲法を破ってはいけないと伝えました。私は聖書と憲法を持って、聖ペテロを引用しながら歩いていました。どんな権力も神からのものであり、権力に反対するものは神の意志に反対するのだ、と』

※原注1)マイダン、あるいはいわゆるオレンジ革命は、2004年11月から2005年1月にかけてキエフ(キーウ)で行われた、2004年ウクライナ大統領選挙の不正疑惑に端を発する一連の大規模な抗議行動である。
2回目の選挙では、『親ロシア』ウクライナを代表するヴィクトル・ヤヌコヴィッチが、親欧米の野党候補ヴィクトル・ユシチェンコに3%という僅差で勝利した。
 ユシチェンコ支持者と欧米の選挙監視団は、ヤヌコヴィッチ側による多くの不正選挙の証拠を公表した。西側からの強い圧力により、ウクライナの法律にはそのような規定がないにもかかわらず、再度決選投票が行われ、ヴィクトル・ユシチェンコが勝利した」

▲オレンジ革命。2004年11月22日、オレンジ色の服を着たデモ隊がキーウ(キエフ)の独立広場に集まっている。(Wikipedia

▲ヴィクトル・ヤヌコヴィッチ第4代ウクライナ大統領。(Wikipedia、Administration of the President of Ukraine

▲ヴィクトル・ユシチェンコ第3代ウクライナ大統領。(Wikipedia、Secretariat of the President of Ukraine

米国が100万ドルで親欧米派支援を依頼! ヴォルガ氏は断ったが「複数の公人が金を受け取ってマイダンに」! 「人民革命の本質を垣間見た」!

 「『すべてが絶望的でした。私は何度か逃げ出さざるを得ず、警察に助けてもらったりしました。そしてある日、米国大使のピファーが私に電話をかけてきました(※原注2)。彼は私とザハロフ[イェウヘーン・ザハロフは有名なハリコフ人権団体の代表で、長年の人権活動家―インタビュアーのハリナ・モクルーシナ(以下HM)による注]と他の数人の人権活動家を呼び出したのです』

※原注2)スティーブン・ピファーは、1997年11月から2000年10月まで駐ウクライナ米国大使を務め、マイダン当時は国務省の欧州・ユーラシア局でロシアとウクライナを担当する国務副次官補として勤務していた。

▲スティーブン・ピファー元駐ウクライナ米国大使(Wikipedia、Heinrich-Böll-Stiftung from Berlin, Deutschland

▲イェウヘーン・ザハロフ氏(ikipedia、Наталка Зубар

 『私たちはあるレストランで会いました。100万ドル(約1億3000万円)の賄賂の申し出を受けたのは初めてでした。私の組織を発展させるための資金としてです。以前にもルネサンス(※原注3)など、さまざまな助成金を申請しましたが、うまくいきませんでした。

 ピファーは、私の組織がマイダンに参加するならば、つまり、ヤヌコヴィッチに反対してユシチェンコのために参加するならば、100万ドルを提供すると言ったのです。

 私は断りました。いつか、この賄賂が調査されるのを見たいものです。キエフ(キーウ)のレストラン、ペルヴァック(Pervak)(※訳注1)の1階に、大使館の職員が集まっていました。後で知ったことですが、会合に出席した複数の公人が金を受け取ってマイダンに行ったそうです。その時、いわゆる人民革命の本質を垣間見たんです』

※原注3)ウクライナの国際ルネッサンス財団は、ジョージ・ソロスが資金提供するNGOネットワークでオープン・ソサエティ財団の一部である」
またジョージ・ソロス氏は、5月24日に開かれた世界国際フォーラム年次総会(ダボス会議)で、「文明の存続のためプーチン大統領をいち早く倒さねばならない」とプーチン大統領を批判している。

▲ジョージ・ソロス氏(Wikipedia、Niccolò Caranti)

※訳注1)キーウのレストランPervakは、日本大使館の「キエフ案内」にも「メニューの種類が豊富。ランチは値段の割にボリュームがあり、お勧め」と紹介されている。
https://www.ua.emb-japan.go.jp/jpn/sidebar/kyiv_guide20150529.pdf

ヴォルガ氏逮捕! 理由は、大統領が関与する腐敗、偽造、窃盗というクレプトクラシー(泥棒)体制を批判したため!

 以下は、インタビュアーの社会学者ハリナ・モクルーシナによる解説である。

 「ヴァシリイ・ヴォルガは、『フロマドスキ・コントロール』を基盤に、自らの政党、左翼連合を設立した。2010年にヴィクトル・ヤヌコヴィッチがウクライナ大統領に選出されると、ヴォルガは経験豊富な政治家・経営者として、金融サービス市場規制国家委員会の責任者に任命された。

 2011年7月、賄賂受領の意図の疑いで逮捕された。裁判にかけられ、5年の実刑判決を受けたが、2015年1月、刑期満了前に釈放された。

 その直後、ウクライナのウェブサイトRBKのインタビューに応じたヴォルガは、逮捕の理由について、国家委員会の委員長として数十億の不正や国内の保険市場の不正を摘発したこと、政党『左翼連合』の党首として、(ヤヌコヴィッチの)与党『地域党』が党員数を増やし、政治的影響力を高めるために行っていた不正行為、同党との合流を拒否したことなどを説明した。

 しかし、その(逮捕の)最大の理由は、ソ連崩壊後のウクライナで展開された全面的な腐敗、偽造、窃盗というクレプトクラシー(泥棒)体制を、常に率直に批判してきたからだとヴォルガは考えている。大統領が全権を掌握するウクライナの政治体制の弱さゆえに、例外なくすべての大統領が、この包括的で熱烈で全面的な窃盗に関与したのである」

▲ハリナ・モクルーシナ氏(同氏フェイスブックより

「美しすぎる政治家」にしてウクライナ最大の資産家の一人ユリア・ティモシェンコ!「彼女は金のためなら誰でも殺します」!

 以下から、再びヴァシリイ・ヴォルガの発言になる。

 「ヴォルガは、現在の政治的なウクライナのエリートについてこう考えている(※インタビュアーのハリナ・モクルーシナがつけた見出し『』の中はヴォルガ氏の発言)

 『私はこのウクライナの政治家たち、トゥルチノフ(オレクサンドル・オルチノフ(Oleksandr Turchynov)、現ウクライナ国家安全保障・防衛会議長官―HMによる注)やポロシェンコ、ユリア・ティモシェンコ(※訳注2)をすべてよく知っています。私はポロシェンコと2年半にわたって密接に仕事をしました。彼らは皆、自分たちの利益を追求します」

▲オレクサンドル・オルチノフ元ウクライナ国家安全保障・防衛会議長官。(Wikipedia、U.S. Department of State)

▲ウクライナ第5代大統領ペトロ・ポロシェンコ氏(任期2014年6月7日 – 2019年5月20日)。(Wikipedia、Photo Claude TRUONG-NGOC

※訳注2)ユリア・ティモシェンコは、ウクライナの第10代首相、第13代首相。オレンジ革命でヴィクトル・ユシチェンコを支持する女性政治家として注目を集め、好意的な報道が欧米諸国で行われた。「美しすぎる政治家」などとして日本メディアでたびたび取り上げられ、もてはやされた。ウクライナで最大の保有財産を持つ資産家(オリガルヒ)の一人としても知られる。
2011年8月5日、ガス資源に関する汚職行為でウクライナ警察に逮捕され、2014年2月22日、ヤヌコーヴィチ政権崩壊とともに釈放された。
ティモシェンコ氏をもてはやし、オレンジ革命を賛美していた2004年時点から、日本を含む西側メディアの「偏向」は始まっていたといえる。

▲ユリア・ティモシェンコ元ウクライナ首相。(Wikipedia、president.gov.ua)

 「『私はティモシェンコがどのように行動するかを見ました。彼女は非常に強く、残酷な人間です。彼女はビジネスにおいて残酷な振る舞いをしました。彼女は金のためなら誰でも殺します。彼らが欲しいのはお金だけです。私たちのように、本当に必要なものを満たすための手段としてお金が欲しいのではありません。

 そうではなく、彼らは、言葉の最も広い意味で『空間の占有』の方法としてお金を認識しているのです。彼らは、権力としてお金を必要とするのです。彼らにとってのお金は強迫観念であり、パラノイアであり、麻薬であり、権力を強化し、増大させる方法なのです。

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https://note.com/iwjnote/n/nc2ab76454719

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