調査報道機関「TOWARD FREEDOM(自由に向かって)」(以下『TF』)は2022年4月12日、ウクライナの兵役拒否者への直撃インタビュー記事を掲載した。「ウクライナ人が武器を望んでいる」と主張して、大量の兵器を供給し続ける西側政府のプロパガンダがあふれる中での、貴重な情報としてIWJが全文仮訳してご紹介する。なぜ彼らは武器を執ろうとしないのか?
記事が明らかにしたのは、密告が横行するナチスの全体主義さながらの恐るべきウクライナ社会の現実である。
ウクライナ政府が戦争を煽り、世論も一見それを支持している。記事はまず、ドンバス戦争の集団ボイコットを呼びかけて逮捕されたルスラン・コツァバ氏の起訴猶予への、ウクライナの「人権保護団体」の反発に、反戦活動が歓迎されない様子を見る。
そして『TF』が話を聞いた人物、匿名の「パベル」氏が語るのは、軍やNATO、政府に抗議や反対をすれば、すぐに、市民の誰もが、「左翼」さえもが、ロシアのスパイとして密告。ウクライナ保安庁が武装した民族主義者を送り込み「処理」させるという実態だ。
また、強制的兵役に反対するウクライナ平和主義運動(UPM)リーダー、ユリイ・シェリアジェンコ氏。彼は、徴兵逃れの刑罰が無制限に増大し、国外脱出を企てた「戦闘年齢」の男性2200人が拘束され、死体で発見された者もいること、交通違反や泥酔でも強制的に徴兵される現状を語る。社会は軍事化し、「ネオナチ」が「国を守る者」として認識され、「アゾフ大隊」が、子ども向けのサマーキャンプを運営しているという。まるでヒトラー・ユーゲントのように。
さらにシェリアジェンコ氏は、ドンバス戦争停戦のミンスク合意は、ウクライナ軍と分離主義武装勢力の双方が破ったと指摘(ただし記事はロシア侵攻直前の数日、最初の攻撃はウクライナ軍が行ったと指摘)。西側の無制限な兵器供給を懸念するとともに、そこで大儲けする米国武器企業の元役員がオースティン米国防長官だと指弾する。
革命的労働組合「ボロツバ」のアレクセイ・アルブ氏は、2014年の「オデッサの虐殺」の責任を問われ、指名手配されたが、それは真実ではなく、当局の操作だと訴える。そして、「ウクライナの何百万という人々は、極右当局を支持しないが、逮捕、拷問、拉致を恐れている」として、拉致され、行方不明になった多くの反対派著名人の例をあげた。
こうしたウクライナで弾圧されてきた人々の生の声を、まとまった形で紹介するのは、日本ではIWJが初めてかもしれない。日本では、プーチンとロシアを過剰に悪魔化する一方、ゼレンスキー大統領閣下を英雄視する。ウクライナ擁護のバイアスがかかった報道や言論で埋めつくされていて(左翼やリベラルさえも含めて)ゼレンスキー独裁のもとの現在の実像がほとんど伝えられていないのが実情である。
詳しくはぜひ、記事本文を御覧いただきたい!
「ウクライナ人が武器望む」の西側プロパガンダの中で、兵役拒否者の直撃インタビューをIWJが全文仮訳! なぜ彼らは武器を取らないか?
1952年に創設された進歩的な調査報道機関「TOWARD FREEDOM(自由に向かって)」(以下『TF』)が、2022年4月12日に、注目すべき記事をサイトに掲載した。ウクライナの兵役拒否者へのインタビュー記事である。
米英独仏などの西側諸国は、ウクライナに武器を供与する理由を、ウクライナ人自身がそれを望んでいるから、という理由で正当化してきた。日本を含む西側のマスメディアも、ことごとくこうした政府の方針を支持し、宣伝につとめてきた。
たしかに、ゼレンスキー大統領は、機会さえあれば「武器を送れ!」と叫んでいる、彼を見ていると、彼を大統領に選出してしまったウクライナの有権者達は同じ考えなのだろうと思い込みがちである。
しかし、ウクライナ人と一口に言っても、ウクライナにはこの戦争に反対する兵役拒否者たちが存在する。
ウクライナの兵役拒否者たちはなぜ武器を執ろうとしないのか。その理由を『TF』は、匿名の兵役拒否者に直撃インタビューすることで、探り当てている。
このインタビューで明らかになったのは、西側が守ると宣伝している自由と民主主義、法の支配などはウクライナには微塵もなく、密告と問答無用の逮捕・拘束が横行するナチスの全体主義さながらの驚くべき現実である。
こうしたウクライナ社会の現実を直視せず、「ロシア=悪魔の加害者 vs ウクライナ=善なる被害者」という硬直したドグマで、この戦争を語ることは、西側によるウクライナへの武器供与と経済制裁を正当化し、戦争のエスカレーションと長期化に加担するばかりか、ウクライナ社会で横行している残忍な人権弾圧をも隠蔽し、加担することになるだろう。
日本のテレビなどは、連日のように、ネオナチ組織であるアゾフから映像資料の提供を受け、そのクレジットを入れながら映像とともにアゾフの主張をたれ流している。こうしたネオナチのアゾフのプロパガンダへの同調は、ウクライナ社会の現実から視線をそらし、人権弾圧の「共犯」に自らなるようなものだ。罪深いと言わざるをえない。
IWJは、この『TF』の記事を全文仮訳した。