2025年9月17日、「岩上安身によるインタビュー第1206回ゲスト エコノミスト田代秀敏氏 第4弾 後編1」を初配信した。
今年1月にトランプ大統領が就任して以来、それまでの円安から一転、円高へと移行した。
「現状、円高になる理由は、あまりない」という田代氏は、以下のように解説した。
「円がそんなに強くなる理由がないのに(円高になっているのは)、これは逆なんだ、これはドル安なんだということです。
実際それは、アメリカの10年国債利回り、つまり長期金利の推移を過去5年で見ると、随分上がっています。今、高止まり状態に来てるわけです。
日本の10年国債の利回り、長期金利は、今1.5%くらいですよね。
それに対して、アメリカは、4.256%なんです。これはすごいですよね。
債券の利回りが上昇するということは、裏返しで、債券の価格は下がっているんです。アメリカ国債が、それだけ値下がりしているわけです。
ということは、ありていに言って、売り圧力の方が強い」。
さらに田代氏は、金の価格が1年で2800ドルから3800ドル以上に上がっているグラフを示し、こう述べた。
「金というのは、利回りがないですよね。金って、安定しているわけですよ。
なのに、その金の価格が上昇してるということは、これは金を買おうとするドルの価値が下がっているということなんですね。
金1オンスに対して、それを手に入れるのにいくら必要ですか? と言った時に、2800ドルだったのが、3800ドルになっているわけですから、それだけドルの価値が下がった。金を標準にすれば、下がったと考えられますよね。これは、もちろん、金の価値というものが、ずっと一定であるということを前提にしています。
これは、驚くべき現象が起きていて、つまりこの金の価格というのは、ドルに対する信認を表しているわけで、これ(米国債の金利)が上昇するということは、ドルに対する信認が低下していると。
だから、『ドルを持っていて大丈夫かな、怖いかな、まずいかな』と思う。
金利が、10年物で4%を超えているんですよ。だけど、それでもドルを手放して、何ら金利を生まない金を買うということは、それだけドルを持っていることが怖いんですね、ということがわかりますよね」。
続いて田代氏は、ビットコインの価格推移を表したグラフを示して、次のように語った。
「金は実体がありますが、ビットコインは物理的実体がないですよね。法定紙幣は、国家権力が入ってるけど、それも入ってないですね。(中略)
そのように、何の実体もない、何の法的根拠もないこのビットコイン(の価格)が、こんなに上がってるわけです。ドル建てで見て。
それを考えても、これは、なかなかたいへんなことが起きているとわかりますよね」。
次に、「米国の財政が、極めて苦しい局面に来ている」という話題に入った。
今年8月、米財務省は、米国債の総額が、初めて37兆ドル(約5432兆円)を突破したと発表した。
FRBのパウエル議長は、労働市場の軟化、雇用の伸びの鈍化、失業リスクの高まりを理由に、FRBが早ければ9月にも利下げを行う可能性を示唆した。
しかし、インフレ率は、依然として高いままである。
田代氏は、以下のように語った。
「明らかに、失業率が高まっているわけでしょ。それだったら、通常は金利を下げるという政策をとりますよね。
一方で、こんなにインフレーションが高止まりしていて、なおかつ株価がこんなに膨れ上がっていて、これって金利を上げないと、たいへんなことになりますよって、みんな気づくわけです。
だけど、トランプは、『株価の上昇は何の問題もない。もっと上がれ』と、いう感じですよね。
一方で、労働統計の悪化を示したら、長官(米労働省労働統計局長のエリカ・マクエンタファー氏)を解任したわけじゃないですか。
だから、もう、今は連邦準備制度は、非常に選択の余地が難しいですよね。どっちを取るんだろうかというのは、よくわからなくなってしまったと。
これ、下手をすると、インフレーションは止まらないし、その一方で失業率は増加して、経済が悪化していく、景気が悪化していくと。
これは、典型的なスタグフレーションですよね。そこに陥るんじゃないか、というのは、感じるわけ」。


































