岩上安身は、2026年6月5日、日本安全保障フォーラム会長の矢野義昭元陸将補に、インタビュー第2弾を行った。
インタビューの冒頭では、直近のイラン情勢について検証した。
米・イスラエルとイランとの戦争が一時停戦中の6月2日深夜、米軍のヘリコプターが、イランのタンカーを停止させるためにヘルファイア・ミサイルで攻撃、タンカーは航行不能になった。米軍は、ホルムズ海峡のケシュム島にあるイランの通信塔も攻撃した。
これに対してイスラム革命防衛隊は、「シオニスト・アメリカ側の船舶をミサイル攻撃した」「(クウェート)に駐留する米軍基地、ならびにバーレーンの米第5艦隊司令部が、革命防衛隊のミサイルおよび無人機の攻撃を受けた」と、報復したことを発表した。
矢野氏は、「こういう小競り合いが続いているのは、間違いない」と述べ、ホルムズ海峡付近で、米軍とイランの革命防衛隊との間で、「一種の報復合戦が起きているというのが実態」だとの見方を示した。
矢野氏によると、「米国側は、『自衛のための、抑制的な戦闘で、停戦協定に違反するものではない』と言っている。イラン側は、『ホルムズ海峡は、我々の管理下にある』と、米国や同盟国のタンカーが通行すれば、攻撃したり、通行税を取っている」と、「停戦下」にある、とはいっても、戦火はおさまっていない現実を指摘した。
さらに矢野氏は、米軍側の被害について、以下のように語った。
「2月28日に、米・イスラエルが奇襲攻撃を行った初日から、イランは湾岸のカタールにある米空軍基地の早期警戒レーダーを、精密誘導攻撃で破壊してしまいました。
それで、早期警戒のアラートが取れなくなってしまい、他の米軍基地も、軒並みつぶされてしまいました。
最初は、13ヶ所と言っていましたが、今は、16ヶ所と言っています。全中東に展開している米軍基地27ヶ所のうち、過半数が、甚大な被害を受けています。
これは、『CNN』も報道していて、ほぼ事実であろうと思います。衛星画像で見れば、ある程度わかるので、隠しようがありません」。
さらに矢野氏は、「今回の一時的な停戦に入る前に、米国とイスラエルのミサイルは、ほぼ枯渇している状況」だと指摘した。
それに対して、「イラン側は、地下陣地に、開戦前から、対空、対艦ミサイルなど各種あわせて数十万発保管していて、かつ、地下に製造工場もあり、カスピ海からは、ロシアの船で、部品も入っているようですし、中国も間接的に支援しているようです」と、明らかにした。
イラン側が、材料や半導体などを補充できるのに対して、レアアースの9割を中国からの輸入に頼る米国側は、材料がないことに加え、製造業の空洞化で、技術者がいない。矢野氏は、「枯渇しているハイマース(多連装ロケット砲)やPAC3などの再生産には、数年かかると言われている」と指摘した。
一方、イスラエルは、「停戦中」にもかかわらず、一方的にレバノンへの攻撃を続けている。このドサクサにまぎれて、イスラエル北部と国境を接する南レバノンを破壊し、割譲しようという意図がありありと見てとれる。
トランプ大統領は、6月1日、ネタニヤフ首相に対し、「お前は完全に狂っている」「私がいなければ、お前は刑務所に入っていた」などと罵倒したことが報じられている。
矢野氏は、「イスラエルが、レバノン侵攻で停戦協定をつぶそうとしているのは明確」「トランプ大統領は、早くイランとの戦争を収めて、米本土防衛や対中シフトしたいことは間違いない」と指摘し、「それをことごとくつぶそうとしているネタニヤフ首相には、苛立っているどころか、本当はクビにしたいぐらい」「でも、そのあとに反動で極右が出てくるのが怖いので、思い切ったことが言えないというのが、実態じゃないでしょうか」と述べた。
また、矢野氏は、イランがすでに核兵器を数十発もっているとの見方を示し、以下のように述べた。
「ロシアが、機微情報を提供したという情報もあります。核それ自体ではないけれど、重要な技術を供与したのではないか、という話です。
イランは、すでに1990年代に、ミサイルの技術については、北朝鮮からノドンを入れて、国産化しました。その時に、逆に、パキスタンから入れたウラン濃縮技術を北朝鮮に提供したという、昔からのつながりがあります。
北朝鮮とパキスタンの核の設計図は、漢字で書かれていて、どうも60年代の中国の核の設計図が渡ったと見られています」。
「イランが核弾頭を数十発もっていれば、イスラエルが数百発もっていても、山がちで花崗岩質で広大な国土のイランには、ほとんど効果がない。国土が狭く、ほとんどが砂漠のイスラエルは、とても生き残れない」と、矢野氏は語った。
他方、米国通商代表部は、6月2日、日本を含む60ヶ国・地域からの、原則すべての輸入品に、10%または12.5%の追加関税を課すことを提案した。
矢野氏は、イランとの戦争で、1兆ドル(約160兆円)以上使っていることを指摘し、「戦費を調達したいという意図もあるのではないか」との見方を示した。
矢野氏は、同盟国にも関税をかけ、離反していくことも織り込み済みだとして、次のように述べた。
「前方防衛自体、体制を切り替えますから。同盟国と言ったって、コミットメントする気はないですから。
そうなると、もう、経済利益しか残らないので、こういうことを平気でやるんじゃないでしょうか」。
さらに矢野氏は、以下のように続けた。
「反面、イラン戦争については、従来使っていた欧州の基地とか領空通過を、NATO加盟各国が拒否している。欧米の亀裂が、今回のイラン戦争で、さらに深まりました。
ウクライナについて、欧州は、ドローンでロシア領内を攻撃させ、戦争を泥沼化させようとしています。欧州は、ロシアが最大の脅威だとして、ウクライナを負けさせるわけにはいかないと、いまだに突っ張っています。
一方、トランプ政権は、そこに距離を置いて、(ウクライナに対して)領土の割譲もやむなしと、ロシアと手を打とうとしています。
アメリカから見ると、欧州は対ロシアで、イスラエルは対イラン・中東で、両方とも暴走していて、アメリカの本来の国益が損なわれている、というのが本音だと思います。
ただ、それをコントロールしきれない。特にイスラエルについては、完全に牛耳られている、という状況じゃないでしょうか」。





































