2025年6月6日、「岩上安身によるインタビュー第1194回ゲスト 現代イスラム研究センター理事長 宮田律氏 第2回」を初配信した。
6月5日に初配信した第1回インタビューは、以下のURLからご視聴いただきたい。
米国のトランプ大統領は、2025年2月4日、あきれたことに、米国がパレスチナのガザ地区を接収し、リゾート開発すると発表した。
- ありえない!「ガザは米国が所有し、パレスチナ人は全員、国外へ退去させる」! パレスチナ人が誰もいなくなった空地のガザをイスラエルと米国で再開発して「中東のリビエラ」にする!?「ただしパレスチナ人は戻れない」トランプ氏の「正体」見たり! 白昼公然と民族浄化に先住民パレスチナ人の土地の略奪!!(日刊IWJガイド、2025年2月6日)
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そして、3月18日に、停戦合意を一方的に破棄して、ガザへの空爆を再開したイスラエルは、5月16日に、ガザの全域制圧に向けた、大規模な地上作戦を開始した。
イスラエルのネタニヤフ首相は、5月21日の記者会見で、「最終的には、ガザの全域がイスラエルの管理下に入る」と表明した上で、米国のトランプ大統領のガザのリゾート開発構想を念頭に、「ガザを完全に非軍事化し、『トランプ計画』を遂行する」と宣言した。トランプ大統領と、ネタニヤフ首相、彼らは一体である。
- ガザ猛攻、死に直面する200万人 逃げ場なく「民族浄化に等しい」(朝日新聞デジタル、2025年5月23日)
イスラエルは、3月から、人道支援団体によるガザへの食糧支援物資の封鎖も続けており、飢餓状態が深刻化したガザでは、子供の餓死も相次いでいる。
- 【ユダヤ系イスラエル人の82%がガザ地区住民の追放を支持!トランプ政権が人道支援のかたちを装って民族浄化、分断、追放に協力!】(『ハアレツ』、2025年5月28日ほか)(日刊IWJガイド、2025年6月5日)
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この「トランプ計画」について、第2回インタビューで、宮田氏は、「今のガザの人々というのは、占領地の住民なんです。占領地の住民は、保護しなければいけない(1949年に採択された『戦時における文民の保護に関するジュネーヴ条約』=『第4条約』)わけなんですけども、その人達を追い出すというのも、これも国際人道法違反なんです」と、解説した。
その上で、宮田氏は、次のように、トランプ大統領を厳しく非難した。
「『トランプ計画を実行する』とは、つまり、世界の金持ちのために、ガザの人々を追い出して、そこを整地してリゾートを作る。
トランプ大統領は、最近(2025年5月13日~16日)、アラブ湾岸諸国(サウジアラビア、カタール、アラブ首長国連邦)に行きましたけども、そこでもやはり、リゾート計画をぶち上げて、カタールではゴルフ場を作る、サウジアラビアのジェッダにはトランプタワーを作る、と(表明した)。
大統領をやりながら、不動産業もやっているわけで、本当に、利益相反のことをやっている。これは、本当にひどい話だと思うんですよね」。
宮田氏は、「トランプ大統領のガザ・リゾート開発構想のために、ガザでは日々、100人単位で命が失われているのに、全然、大きなニュースの扱いにならない」と述べ、一方で、5月21日に、ワシントンでイスラエル大使館職員2人が、パレスチナ支援者のヒスパニック系の容疑者に銃撃されて殺害された事件が、大きく報じられたことと比較して、「ニュースにも、2重基準があるという感じがする」と、憤りを示した。
- イスラエル大使館職員2人、米首都で銃撃され死亡 パレスチナ解放叫ぶ容疑者拘束(BBC、2025年5月22日)
イスラエルや米国の、パレスチナに対する非人道的な行為に対し、今後もイスラエル人に危害を加える事件が、頻繁に起こるのではないか、と宮田氏が懸念を示すと、岩上安身は、「そういうことがあったら、また、『我々は、反ユダヤ主義の危機にさらされている』と、宣伝材料に使うわけですよね」と応じた。
これに対して宮田氏は、「『反ユダヤ主義』と、イスラエル批判というのは、これはまったく別のものですからね。これは、日本人は、よく心得ておいた方がいいと思います」と、強調した。
宮田氏は、「ガザ2035計画」と題された、海岸に高層建築が建ち並ぶガザのリゾート開発のイラストを、パワーポイントで示し、「今、(ガザに)人が住んでいるのに、もうこういう構想を出すというのは、相当、面の皮が厚いんじゃないか」と、不快感をあらわにした。
宮田氏によると、「米国上院の弾劾裁判では、出席議員の3分の2以上が賛成すれば、大統領は有罪となり、失職する」とのことだが、「目下のところ、米国の上院議員で、トランプ大統領の『リヴィエラ構想(ガザのリゾート開発)』に反対しているのは、バーニー・サンダース議員のみ」だという。トランプ大統領ひとりがクレージーなのではなく、米国の国会議員、与野党、政府もことごとくクレージーであると言わざるをえない。
サンダース議員は、「ガザに関するトランプの発言は理解できない、グロテスクだ」と表明し、「億万長者のためにではなく、パレスチナの人々のためにガザを再建しよう」と呼びかけている。
宮田氏は、「日本など、東アジア諸国、グローバルサウスの国々、また、EUなどヨーロッパ諸国は、団結して、サンダース議員の呼びかけに応じるように、トランプ構想の実現を断固阻止すべきである」と訴えた。
さらに、1月の停戦に反対して、連立政権の閣僚を辞任していた、イスラエルの極右政党「ユダヤの力」党首のイタマル・ベングビール氏が、「トランプ構想」を実現するために、ネタニヤフ首相がガザ戦争を再開したことによって、国家安全保障大臣として政権に復帰した。
宮田氏は、「極右政党との連立によって、政権が極右化したイスラエルでは、言論の自由が急速になくなり、また不法入植者が跋扈するなど、国際法違反が、いっそう進んでいる」と指摘している。
ヨルダン川西岸では、パレスチナ住民が、国際法違反の極右のユダヤ人入植者達に土地を奪われ、家屋を破壊され、日常的な暴力にさらされている。ベングビール国家安全保障大臣は、銃器所持の制限を緩めたため、極右入植者達は銃で武装している。パレスチナ人が入植者に銃で撃たれても、イスラエル兵はただ見ているだけで、犯罪を取り締まろうとはしない。
宮田氏は、「イスラエルの占領は、ユダ王国があった土地に戻ってきただけだ」という高校教師の発言を紹介した上で、この主張の愚かさを、次のように揶揄した。
「ここ(ヨルダン川西岸も含めたパレスチナ)全域がユダ王国の領土だから、自分達がここに戻ってくるのは正当だと言うわけですけど、そんなことを言ったら、世界の秩序は保てないですよ。
地中海なんて、ほとんどローマ帝国の領土でしたから、地中海の縁辺はもう全部、イタリアの領土になっちゃいますからね」。
インタビューの後半では、宮田氏が、2025年3月の停戦破棄後のイスラエルによるガザへの攻撃や、ガザのモスクへの空爆、ガザの惨状、爆破されるガザのアル・アズハル大学といった映像も、紹介した。
ガザでは、学校、病院、水道施設などのインフラがことごとく破壊され、50万人が飢餓に直面している。
イスラエルは、ガザを支援するUNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)の職員も殺害し、UNRWAの施設を破壊している。
さらに2024年10月28日には、イスラエルは、UNRWAの国内での活動を禁止し、自国民とUNRWA職員の接触を禁止する法律を成立させ、パレスチナ人への人道援助を妨害している。
イスラエルが行っていることは、人道上許されることではなく、ガザは、「国際法の墓場」になっていると、UNRWAのラザリーニ事務局長は訴えている。
宮田氏が紹介した映像の中には、米兵が歓声を上げ、笑いながら、ガザを銃撃する様子や、支援物資としてガザで配給された砂糖の袋の中身が砂だったという、衝撃的なものもある。もちろん、中身をすりかえたのは、イスラエルの嫌がらせである。
また、イスラエルのベングビール国家安全保障大臣が、エルサレムにあるイスラム教の聖地ハラム・アッシャリーフに入り込んでいる映像を紹介した宮田氏は、「イスラムを侮辱する行為だ」と指摘した。
この場所は、トーラーというユダヤ法によって、ユダヤ人が入ってはいけないとされている場所である。
さらに、3人の子供を抱き抱えた、ごく普通の母親に見えるイスラエル人の極右の女性が、このハラム・アッシャリーフで、笑顔で、イスラム教の聖地のモスクを破壊した上で、ユダヤ教の神殿の建設を訴えている映像を紹介した宮田氏は、「ニヤニヤする話じゃない」と、不快感をあらわにした。
現代のイスラエルのユダヤ人が、まったく異邦人の人権や権利を尊重しないのは、選民思想はもちろんのこと、何も恐れるものはない、という傲慢さは、米国がバックアップしているからだろう。