2026年1月2日、「2015年から2022年までドンバス戦争を現場でその目で見てきた元OSCE監視員が、ウクライナ戦争の『真実』を明らかにする! 岩上安身によるインタビュー第1209回 ゲスト 元フランス陸軍予備役将校(大尉)、元欧州安全保障協力機構(OSCE)監視員 ブノワ・パレ氏 第1回」の(その3)を初配信した。
インタビュー(その3)では、「ウクライナを理解するための最低限の基礎知識」と題して、複数民族国家であるウクライナの多様な言語分布について、詳しく検証した。
歴史の上で、何度も周辺諸国からの支配・統治を受けてきた、現在のウクライナという国は、ウクライナ語を話すウクライナ人だけが住む単一民族国家ではない。
ウクライナ人以外にも、ロシア人、ルーマニア人、タタール人、マジャール人(ハンガリー人)、ブルガリア人、ガガウズ人(モルドバ系)、ポーランド人、アルバニア人など、多くの少数民族が暮らしている。
こうした少数民族にとって、ソ連時代に公用語であったロシア語は、国内の他の民族や国外の旧ソ連構成共和国の国民との間でとのコミュニケーションを取る上でも、行政サービスを受ける上でも、とても重要である。
しかし、ソ連邦から独立する直前の1989年に、ウクライナは「言語法」で「ウクライナ語が唯一の国家言語」と宣言。独立後の1996年に制定されたウクライナ憲法に、「ウクライナの国家言語はウクライナ語である」と明記した。
一方、2012年に当時のヤヌコーヴィチ政権が制定した「国家言語政策の基礎に関する法」(言語法)によって、ロシア語を含む少数民族の言語は、話者が一定割合(10%以上)を超える地域で「地域公用語」として、公的な使用が認められていた。
ところが、2014年のユーロ・マイダン・クーデター後、この法律を廃止する動きが強まり、2018年2月にウクライナ憲法裁判所が、この2012年の言語法を「違憲」と判断した。
さらに2019年には、「ウクライナ語の国家語としての機能保障法」が制定され、公務員、議員、教員、医師などの公的な職務、公教育、科学、文化などの分野、テレビ・ラジオ・新聞などのメディアや、広告などで、ウクライナ語のみの使用が義務付けられた。
ウクライナ語の強制について、パレ氏は、以下のように批判した。
「私はドンバスで、ウクライナ語を理解できない多くの人々に出会いました。それでも、ウクライナ国家は、ウクライナ語を強制しようとしていました。
それは、ドンバスだけでなく、オデッサ州でも同じことでした。
特にオデッサ州からベッサラビア(ウクライナ南部のモルドバと接する地域)南部では、彼らの第1言語は、ロシア語ですらありません。ブルガリア語や、ルーマニア語、さまざまな言語を話しているのです。
でも、彼らは、昔からロシア語を使って、互いにコミュニケーションを取ってきました。それなのに、突然『ウクライナ語を、学ばなければならない』と言われたのです」。
さらにパレ氏が出会ったウクライナ人の中には、「スイスやベルギー、ルクセンブルクのように、公用語を複数もつ国があることを知らない人もいた」とのことで、パレ氏は「ウクライナで、『一つの言語しか許されない』という考えを押し付けるために、どれだけ洗脳が行われていたかがわかります」と語っています。
パレ氏が「2014年に見つけた」という、ウクライナの2001年の国勢調査による言語分布図では、クリミアと、ドンバスの一部、ベッサラビアの一部を除いて、ウクライナ全土がほとんど、ウクライナ語を示す青色で塗りつぶされています。
ところが、実はこの地図は、「実際には、ロシア語とウクライナ語が混ざりあったような、スルジク語という一種の方言を話している人達」も、すべて「ウクライナ語」に分類している、「操作された」ものであると、パレ氏は明らかにした。
インタビュー(その3)では、このあと、クリミアがロシアからウクライナの領土に変更された経緯や、クリミアがウクライナから独立しようとしていたが、ウクライナ政府が、武力行使をほのめかせて独立を求める住民投票を阻止したことなどを、岩上安身が解説した。
「そうした重要な話を、西側メディアは、完全に覆い隠し、無視してしまっている」と述べたパレ氏は、かつて議論になったあるウクライナ人から、「あなたは嘘をついている」「作り話をしている」と言われたことがある、と明らかにした。
「私は、ウクライナの人達自身が、このことをほとんど知らないのだ、という事実に気づいたのです。
学校でも教えられていませんし、自分達の歴史を知らない人が多い。それを見て、国家によるプロパガンダの力というものが、いかに恐ろしいかを痛感しました。歴史の重要な出来事さえ、消し去ってしまうことができる。そして、そうやって人々を操作することが可能になるのです。
そして、西側世界では、このことを知っている人は、ほとんどいません。ところが、実際に調べ始めてみると、驚くほど膨大な資料やエピソードが見つかるんです。それだけ多くの情報があるにもかかわらず、ほとんど知られていない」。
パレ氏は、「ロシアでは『クリミア併合』とは呼びません。クリミアが祖国に『戻った』という意味で、『再統合』と呼んでいます」と述べ、以下のように、厳しく批判しいた。
「『ウクライナがクリミアを取り戻すまで、ロシアと戦争を続けるべきだ』、と主張する人達がいますが、私にはそれは正気の沙汰とは思えません。
完全に行き過ぎていますし、道義的に見ても不公平だと感じます。
それは、クリミアに暮らしているすべての人々を裏切る行為です。
そして同時に、西側諸国を動かしている人達が、そうした人々のことなど、まったく気にかけていない、ということを示しているのです。現地の人々が、何を考えているかなんて、まったく気にしていない」。




































