コロナ禍で米中覇権交代が加速か!?「帝国の墓場」アフガニスタンから米軍が撤退! 中国の後ろ盾を得たタリバン新政権に国際社会はどう応じる!?〜9.5岩上安身による第1050回 ゲスト 放送大学名誉教授高橋和夫氏 2021.9.5

記事公開日:2021.9.6取材地: テキスト動画独自
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 20年続いた米国のアフガニスタン戦争が、ついに8月15日のタリバンによる首都カブール無血入城、31日の米軍完全撤退という形で終結した。

 これを受けて、9月5日、岩上安身は放送大学名誉教授・高橋和夫氏へ緊急インタビューを行い、アフガニスタン戦争終結、米軍完全撤退の意味についてうかがった。

岩上「アメリカの9.11の同時多発テロから20年、米軍が撤退した途端にタリバンがあっという間に復活して、カブールに入城。劇的な終わり方でしたが、なぜ20年もかけて米軍はタリバンを排除できなかったんでしょうか。タリバンの勝利は何を意味するのでしょうか?」

高橋「負けた方の要因から見ていくと、アメリカが20年かけて作った政権は非常に腐敗していて、国民に信を得られなかった。もちろん、首都カブールに住んでいるような豊かな人々は、アメリカとともに良い思いをして、アメリカが作った政権を支持していたんですけど。

 ただ、アフガニスタンは農村社会。大半の農村社会では、アメリカの統治下で良い思いをしていないという感覚が強かったと思います。

 パスポートを取るにも賄賂がいる、から始まって、建築許可に賄賂がいる、と。

 逃げたしたガニ大統領は、ドバイに巨額のお金を移しています。ガニの弟はやっぱり巨大なビジネスをやっていて、政府コントラクトをそこに落とす。その前のカルザイ大統領の兄弟は、麻薬取引で有名でした。そもそも、そういう人たちがやっている政府であり、上から下まで腐敗していた、と。

 体制が腐敗し始めると、この体制保たないぞとみんな思うわけですね。逃げ出さないといけない。じゃあ、海外にお金を持っておかないといけないと、坂を転がり落ちるようにますます汚職が激しくなって、というのが一つの問題。政権側の腐敗です。

 もちろん、アメリカ側の腐敗もあって、アメリカが注ぎ込んだ2兆ドルのかなりの部分はアメリカ(の軍にぶらさがる業者のもと)に戻ってきているわけです。

 空軍を持っていれば、街は守れるわけですよね。でも、なぜ最後の段階で、空軍を持っていたアフガニスタンの政府軍が突然崩壊したのか?

 アメリカが作った空軍は、パイロットはアフガニスタン人がやるけれども、飛行機の整備にはアメリカの契約会社が入っていて、ぼろ儲けする仕組みになっていたんですね。

 20年間もいたのに、飛行機の整備は教えていなかったんです。だから、アメリカ人がいなくなったら飛行機が飛ばなくなることは、みんな知っていた。空軍の火はすぐ消えると。こんなバカな軍隊をアメリカは作ってきたんですよね。

 アフガニスタンの政府も腐敗しているし、介入した方のアメリカ側も腐敗していました。

 アメリカ軍を指揮していた、マクリスタル将軍(※)、ペトレイアス将軍(※)、みんなビジネスを始めて大儲けをして。一回の講演料が数百万円という様な。アメリカの軍隊を率いてこれだけの犠牲を出した人たちが大儲けする様な、こういうシステムがいいんだろうかという、そういう腐敗があったと思います」

※マクリスタル将軍:スタンリー・アレン・マクリスタル(元)陸軍大将。アフガニスタン戦争で、国際治安支援部隊(ISAF)司令官およびアフガン駐留軍司令官を務めた。

※ペトレイアス将軍:デイヴィッド・ハウエル・ペトレイアス(元)陸軍大将。アフガニスタン駐留アメリカ軍司令官、アメリカ中央情報局長官などを務めた。

 岩上は、そもそも9.11同時多発テロは戦争ではなく事件、にも関わらず、米国は報復するといって、イラク、アフガニスタンという国家に戦争を仕掛けた。このおかしさは、一度総括されるべきだと指摘した。

岩上「ビン・ラディンを殺した後、これが戦争の目的だと言いました。そして今回、ブリンケン(国務長官)は、今回のアフガン撤退の理由として、『ビンラディン殺害が目的だった。我々はその任務を果たした(We did it!)』と言いました。しかしビン・ラディンは10年も前に殺害しており、とっくに『任務』を果たしていたのです。米国は、ビン・ラディン殺害から10年も道義も正義もない戦争をしてアフガニスタンに居座ってきたんですよ」

高橋氏「アメリカの政策に整合性がないですね。20年を経て今、問題になるのは、911関係の資料が出てくることです。これでもし、サウジの関与が明らかになったとき、アメリカ、サウジはどうするか。

 上院が9.11関連の機密資料の公開を求めていて、バイデンが公開すると言いました。サウジが米国内で活動するテロリストをサポートしていたことや、ブッシュとの親密な関係などが見えてくるか、というのが今後の期待ですね」

岩上「今、サウジアラビアにおけるイスラム原理主義者ワッハーブ(※)が非常に軟化しているというニュースが気になります」

高橋氏「サウジはこれまで石油があって働かなくてもよかったんですけど、これからはそうもいかない、というのでサルマン皇太子(※)が改革に乗り出しているんですね。

 ワッハーブ派(※)を抑えている。

 一つの心配は宗教主義者の揺り戻し。皇太子は近代化しようとしているが、かなり独善的で、(ジャマル・)カショギ氏殺害事件(※)への関与など、懸念もされています」

※サルマン皇太子:ムハンマド・ビン・サルマン皇太子。1985年生まれ。石油資源に依存しない経済・社会を目指した改革、女性の地位向上などの古い慣習にとらわれない改革を進めている。

※ワッハーブ派:復古主義・純化主義的イスラム改革運動を進めるイスラム原理主義の一派。サウジアラビアの国教である。オサマ・ビンラディンも元々ワッハーブ派に属する信徒であったとされる。

※カショギ氏殺害事件:サウジアラビア政府を批判していたサウジ人記者ジャマル・カショギ氏が2018年10月、イスタンブールのサウジ総領事館で殺害された。ムハンマド・ビン・サルマン皇太子の関与が疑われたが、サウジ側は一貫して否定。皇太子の側近らが起訴され、5人に死刑判決が出たが、禁錮20年に減刑。

 米軍の撤退と同時に、8月26日、170人以上の命を奪った自爆テロが、カブールの国際空港の入場ゲートで起こった。「IS-K(イスラム国ホサイン州)」が、犯行声明を出した。また、29日には、IS-Kのテロが計画されている情報があると言って、タリバンに通報することなく、米軍がドローンで攻撃し、テロとはまったく無関係な一般市民が巻き添えになり、2歳の女の子が亡くなるという凄惨な事件があった。

岩上「米軍の撤退とともに、IS-Kが出てきました。ISはいつも米国にとって便利に動いてきました。米国は撤退後も、ISとの戦いをドローンなどを使って続ける、と言っています。タリバンは『他人の土地で作戦を行うのは正しくない』と批判していますが、これが当たり前じゃないですか。(米軍の報復攻撃で)2歳の女の子が巻き添えになって爆殺されているんですよ。

 ISって、僕は疑っているんですけど。スマホで招集されたなんだかわからない寄せ集め集団が、なぜか莫大な資金を持っていて。米国はISを掃討するという名目で、シリアをぐちゃぐちゃにしました。アフガニスタン撤退時のオペレーションから見える胡散臭さ。米国はめちゃくちゃじゃないですか?」

高橋「米軍はタリバンと戦っている時から、一方で、ISとの戦いはタリバンと共同してやっていたんですよ。タリバンが地上から、米軍が空から攻撃するといった作戦をやっていたんです」

岩上「タリバンと米軍の協力関係は、だいぶ以前から築かれてきたんですね。タリバンが退避する米国人を護衛して空港まで送り届けていたという情報もありました」

高橋「米軍はタリバンと戦っているんだけど、一方で話し合いもしているんです」

岩上「米軍は、ドローンによる攻撃を今後もやると思いますか?」

高橋「やると思います。ただ、陸上の基地がなくなると、かなりオペレーションは難しくなるのではないでしょうか。今回もどこから出撃したか明らかにしていないですよね。

 ISは、タリバンが物足りなくなった連中が動いていると思います。IS-Kは、タリバンもやりすぎだろうというようなひどいテロをやってきました。人数は600人程度ともいうけれども、日本でいう暴力団みたいな組織と組んでいて、情勢が不安定になるのをじっと待っているんですね」

 カブール陥落、米軍の撤退と、「IS-K」による自爆テロ、米軍のドローンを使った報復攻撃と、アフガニスタン情勢は不穏である。

 アフガニスタンは「帝国の墓場」、「文明の十字路」と言われる。

 会員限定配信の部分では、アフガニスタンがなぜ「帝国の墓場」と言われるのか、アレキサンダー大王の時代から、19世紀から20世紀にかけて3次にわたるアフガニスタン戦争を展開した大英帝国の衰退、アフガニスタンに侵攻して、その後滅びたソ連、そして現代の軍事帝国である米国は、今後どうなるのかという議論にもなった。

 アフガニスタン史では、ゾロアスター教から仏教へ移行したために、仏像の意匠にもゾロアフター教の影響が残っていること(仏像の背後の火炎など)、アレキサンダー大王の東征と初期仏教の関係、玄奘三蔵はアフガニスタン経由でインドに入ったこと、チンギス汗をも阻んだアフガニスタンの山岳など、大変興味深いお話をうかがった。

 アフガニスタンの民族分布は国境とほとんど関係がない。ペルシャ、インド(パキスタンと分裂する以前)、中国、ロシアといった大国に囲まれた中央に位置するアフガニスタンは、大国同士が激突するのをやわらげる、いわば「クッション」緩衝地域として機能してきたと、高橋氏は指摘した。

 「ザ・グレート・ゲーム」と呼ばれる、19世紀に大英帝国とロシア帝国が争ったときにも、アフガニスタンは両国の間の緩衝地帯として作用し、英国はロシアの南下を嫌って、アフガニスタンの北西部から中国に伸びる回廊のようなワハン地域をアフガニスタンにくっつけたというお話もいただいた。中国とのこの長い回廊は、これから非常に重大な意味を持つことになるであろう。

 アフガニスタンの諸民族の分布と関係、そしてこれからの中国との関係、パンジシールにいる反タリバン戦力、タジキスタンと東トルキスタン=新疆ウイグル自治区の中国からの分離独立を求める過激派ETIMとタリバンとISの関係、弱まっていく可能性があるイスラエルと米国のそれぞれの国力と両国の関係など、多岐にわたって密度の高いお話をいただいた。

 タリバン政権は今後、安定した社会を構築した方向に向かうのか、それとも、米軍を追い出したことで「調子に乗って」、武力を持って支配領域を拡張していく方向に向かうのか。

 岩上は「タリバンは女性の人権をある程度認める、国際社会と仲良くしていきたいというメッセージを出すなど、以前とは異なる柔軟な姿勢を見せているようですが」と、問うた。

 高橋氏は五分五分だと回答。

高橋氏「今はひとつの進歩、タリバンも変わってきたということもあるのではないか。タリバンの指導者層の中でもせめぎ合いがあるでしょう。

 国際社会もあまり気の短いことをいってはいけないのではないかな、と思います。アメリカだって、女性の政治家としてオルブライト国務長官が出てくるまで、200年かかったわけでしょう。アフガニスタンの指導者たちは、そう言っています。

 これからアフガニスタンの人権問題をタリバンがどうするか。40年も戦い続けてきて国民は疲れていると思うのか、もうさらなる戦争をしないで社会を安定させて豊かになろうと思うのか。

 それともタリバンはアメリカに勝った、その前のムジャヒディン(※)はソ連に勝った。自分たちには神様がついているから、と思い上がり、イスラム原理主義をテロとともに輸出し、タリバン運動を頑張るのか。

 タリバン政府として頑張るか、タリバン運動に頑張るのか。どういう決断をし、どちらに行くのか今のところ、五分五分だと思いますね。

 比較的穏健なバラダル師(※)が新政府の首班になると言われていますが、まだ出てきていませんね。揉めているのだろうと思います」

※ムジャヒディン:アラビア語で「ジハードを遂行する者」を意味するムジャーヒドの複数形。1978年にアフガニスタン人民民主党による共産政権が成立すると、各地で「ムジャヒディン」を名乗る反政府ゲリラが蜂起した。1979年にソ連軍がアフガニスタンに侵攻すると、ムジャーヒディーンはソ連に対抗して戦った。

※バラダル師:アブドル・ガニ・バラダル師。タリバンの中で穏健派とされる。8月15日のカーブル陥落の際には、バラダル師はドーハから勝利宣言のビデオメッセージを発表、8月17日にアフガニスタンに帰国した。8月23日、極秘裏にカーブル入りしたバーンズCIA長官と会談したと報じられており、米国とのパイプがあるため、バラダル師がアフガニスタン大統領に就任することは、新政権の国際的な承認を得るために有利だと見られている。

 アフガニスタンについて、他では聞けない密度の高いお話をうかがった。

 また、このアフガニスタンの陥落と米軍の撤退は、アフガニスタンという小国で内戦がひとまず終わった、という話で終わることではない。インタビュー中、「撤退した米軍は、今度は東アジアへシフトするんです」と高橋氏は述べた。

 つまり、ヒラリー・クリントンが国務長官だった時代に唱えられた「ピボット・トゥ・アジア(アジア回帰政策)」が実体を伴って、東アジアに米軍がやってくる、ということを意味する。東アジアを中心として繰り広げられる米中戦争は、直接的に私たち日本人の生活や人生や生命や財産を脅かす。

 アフガンの人々に、平和が戻ってくるのだとしたら、それは喜ばしいことに違いない。

 しかし、次に「戦場」にされ、米国の軍産総合体にとっておいしい「ビジネスとしての戦争」が繰り広げられて、泣かなければならないのは、日本人かもしれない。

 真剣にこの問題と格闘していかなくてはいけない。

 ぜひ、IWJの会員となって、会員限定部分のインタビューも御覧いただきたい。

 岩上安身による放送大学名誉教授・高橋和夫氏の直近のインタビューも、この機会にぜひ御覧いただきたい。

■ハイライト

  • 日時 2021年9月5日(日)20:30~
  • 場所 IWJ事務所(東京都港区)

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