円安・株安・債券安(金利上昇)が、急ピッチで進んでいます。
『トレーディング・エコノミクス』で、直近6ヶ月の対ドルの円の値動きを見ると、2月13日の152.65円から、3月27日の160.25円まで、ほぼ、一律に円安が進行しています。
- Japanese Yen(トレーディング・エコノミクス、2026年3月29日閲覧)
3月30日の最新状況でも、1ドル=159.8円の円安状況が続いています。
- US dollar to Japanese yen Historical Exchange Rates(wise、2026年3月30日)
さらに、30日の東京市場は株安と債券安が進み、円も朝方に一時160円半ばまで下落するなど、トリプル安の様相となっています。
日経平均は、全面安の展開で年初来安値を更新しました(午前の終値で51,580.50円)。ドルは160円近辺と、ドル/円は為替介入が実施された2024年7月11日以来の高値圏で推移しています。
- インベストメント・コム(2026年3月30日)
長期金利も(10年国債)も2.390%をつけ、1999年2月以来27年ぶりの高水準を更新しました。
3月30日付『ロイター』は、株価・債券・円のトリプル安の状況になったとして、以下のように識者達の分析を紹介しています。
「<ニッセイ基礎研究所 チーフ株式ストラテジスト 井出真吾氏>
市場は、軍事衝突の長期化を織り込みにいっているのだろう。
直近でもイエメンの親イラン武装組織フーシ派によるイスラエルへの攻撃や、米国が地上作戦の準備を進めているとの報道などが相次いでいる。
本格的な(インフレと景気後退が同時進行する)スタグフレーションを、市場は気にし始めているのではないか。
需要不足ではなく、供給不足が意識されている側面が強い。需要不足は、景気刺激策が取り得るが、供給不足は対策が難しい。
エネルギーの使用制限なども視野に入ってくるのではないか。
短期で停戦すれば株価は、反発が見込まれるが、少なくとも現時点では、まだその段階ではなさそうだ。
本格的なスタグフレーションの方向に向かうとすれば、株価はさらに1‐2割程度、下落してもおかしくない」。
「<あおぞら銀行 チーフマーケットストラテジスト 諸我晃氏>
ドルが、160円に乗せたのは対円相場では大きな節目ではあるものの、イラン情勢に伴う原油高がドル買いを促したことが影響している。
とはいえ、きょうは、三村淳財務官からかなり強めのけん制が入り、介入警戒感が上値を抑えている。
きょうの三村財務官のような口先介入が入るとみており、為替介入の前段階とされるレートチェック(日本当局の日銀・財務省が、銀行に問い合わせる行為)もあり得るが、効果は米国の協力があるか次第で変わる。
レートチェックが入れば、日本単独でも1円程度の下押しにはなるだろう。
米国の協力があればさらに大きな値幅となりそうだが、日本だけなら、レートチェックの影響はごく一時的なものにとどまりそうだ。
実弾投入に踏み切るからには、ドル/円を5円程度動かすつもりでやるのではないか。
年度末を過ぎれば、為替介入実施の可能性があるとみている。ドル161円超えなど、急上昇すれば年度末でも可能性を否定はできない」。
「<SBI証券 チーフ債券ストラテジスト 道家映二氏>
円金利は夏にかけて、もみ合いながらレンジを切り上げていくとみている。長期金利はいったん2.50%付近に向けて上昇し、状況次第では通過地点となる可能性はある。
日銀は利上げ姿勢を継続し、中東情勢次第とはなるものの、4月の金融政策決定会合で利上げに踏み切ると予想している。
仮に中東情勢緊迫化が沈静化したとしても、ホルムズ海峡を巡る混乱は残り、原油高は続くだろう。
中東からの原油輸入の依存度が高い日本は、直接的な影響を受けやすい。原油価格が上昇すれば、貿易赤字が意識され、外為市場では円安が進行しやすい。
インフレ懸念から日銀は利上げ姿勢を継続しなければならない。
政府は、物価高対策を講じる必要があり、補正予算の話も出てくる。
今回の中東情勢の緊迫化で米国は戦費が膨らんでいるとみられ、日本に財政負担を求めてくるリスクもある。
さらに、決算前でポジションを動かせなかった市場参加者による売りが新年度に入るとでてくる可能性がある。
(国債は)7-10年ゾーンを中心に売られやすく、ビハインドザカーブ・リスク(政策対応が経済の変化に遅れてしまうリスク)や財政懸念が強まれば、超長期ゾーンにも金利上昇圧力がかかっていく」。
- 日経平均は大幅続落、円も債券も安値圏:識者はこうみる(ロイター、2026年3月30日)
スタグフレーションの回避には、米国とイスラエルのイラン侵略戦争が早期に沈静化ことが必須ですが、沈静化しても、「ホルムズ海峡を巡る混乱は残り、原油高は続く」と、SBI証券 チーフ債券ストラテジスト 道家映二氏は見ていることが注目されます。
また、同氏は「原油価格が上昇すれば、貿易赤字が意識され、外為市場では円安が進行しやすい」とも分析していて、原油価格の安定化が、今後予想される狂乱インフレの回避に必須であることがわかります。
3月24日に発表された2月分の消費者物価指数は、総合指数は2020年を100として112.2(前年同月比は1.3%の上昇)であり、生鮮食品を除く総合指数は111.4(前年同月比は1.6%の上昇)、生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数は111.5(前年同月比は2.5%の上昇)でした。
イラン戦争が始まった直前で、これだけ、物価は上昇しているのです。
次回4月24日に発表される3月分は、たいへんな物価上昇率が見込まれます。
- 2020年基準 消費者物価指数 全国 2026年(令和8年)2月分(2026年3月24日公表)(総務省、2026年3月30日)
また、この160円を突破した円安について、AIエージェントが記事を作成し人間がチェックするメディア『ainvest』は、以下のような分析を行っています。
「USD/JPYは160円15銭を突破し、中東の緊張が始まって以降で2%の上昇を記録した。これは、(ドルに対する)地政学的な安全資産需要と、政策の乖離(日米の金利差)によって押し上げられたものである。(中略)
日本銀行は、政策的な板挟みに置かれている。植田和男総裁は、円安が原油価格上昇と相まって輸入インフレを悪化させる可能性があると警告しており、通貨安が物価安定という中核的使命に直結する問題であることを示している。
ここに明確な矛盾が生じている。すなわち、日本銀行は、円を強化しインフレを抑制するために利上げが必要である一方、その利上げは中東情勢による高コストのエネルギーショックをすでに受けている経済を減速させる可能性がある。
このため、為替の変動は、より重要な政策変数となっている。植田総裁は、こうした変動が、以前よりもインフレに与える影響が大きくなっていると指摘し、中央銀行の意思決定における重要性が増していることを強調した。1月の議事要旨では、政策委員の間で利上げペースを巡って意見が分かれており、望ましくない円安を抑えるため、数ヶ月ごとの利上げを求める声もあった。このタイミングを巡る内部議論が、現在の政策乖離の流れを生み出す重要な要因となっている。
今後の動きを決定づける要因は、3つである。
第一に、日本当局による明確な為替介入は、最も直接的な流れの反転要因となる。
第二に、原油価格の安定が、重要な緊張緩和のシグナルとなる。イランの脅威によって原油価格が上昇している中で、中東情勢の緊張が緩和されれば、安全資産としてのドル需要が弱まり、円への圧力も軽減される。
第三に、次回の日本銀行会合が極めて重要である。そこでは利上げペースについて初めて具体的なシグナルが示される可能性があり、ドル高を支えている政策乖離に直接的な影響を与えることになる」。
- USD/JPY Breaks 160: Flow of Intervention Risk vs. Policy Divergence(ainvest、2026年3月27日)
3月16日の参院予算委員会で、片山さつき財務大臣は、円の下落について、「最大限の緊張感を持って、断固たる措置を含めてそういう姿勢でいる」と為替介入を行うと答弁しています。
- 片山財務相、緊張感持ち「断固たる措置を含めた姿勢でいる」-為替(ブルームバーグ、2026年3月16日)
原油価格の安定については、短期的な安定は難しく、不安定な高止まりになる可能性が高いです。
また、次回の日本銀行の金融政策決定会合は、2026年4月27日から28日が予定されており、4月会合は「展望レポート(Outlook)」が出る回のため、特に注目されています。
ここでは、経済見通しや物価見通し、利上げの方向性が公式に示されることになり、円相場の分岐点になる可能性が高いと思われます。
また、株式相場は、イランでの戦争や原油急騰、インフレ再燃懸念によって、企業収益悪化と金融引き締めが懸念され、株は世界的に下落しています。
今後の注目点としては、4月27日から28日に開催される、次回の日本銀行の金融政策決定会合での経済認識や物価認識、利上げの方向性が注目されます。




































