2025年1月、米国で第2次トランプ政権が発足し、トランプ大統領の本音とも妄想ともつかないような言動に、世界中が振り回されている。
2025年2月18日、東京都内のIWJ事務所にて、岩上安身は現代イスラム研究センター理事長・宮田律(みやた おさむ)氏にインタビューを行った。2024年12月末に続いて2回目となるが、その間の約1ヶ月半で、ガザを巡る状況は、さまざまに変化している。
トランプ大統領の就任に間にあわせるかのように、1月15日、ガザでのイスラエルとハマスの停戦が発表され、19日に停戦が発効した。
ところがトランプ大統領は2月4日、イスラエルのネタニヤフ首相との共同記者会見で、「米国がガザを長期的に保有して再開発する」と発言、ガザ地区のリゾート開発構想を打ち出したのである。
これは、停戦後のガザを米国が接収し、パレスチナ人を追放して、新しい大型観光施設などを建設するというものだ。
宮田氏は、これを新たな「民族浄化」計画だとし、その背景に、ユダヤ人で、トランプ大統領の娘婿であるジャレッド・クシュナー氏の存在があることを指摘した。
トランプ大統領の娘のイヴァンカ氏と結婚したクシュナー氏は、元々は不動産開発企業の経営者である。第1次トランプ政権で大統領上級顧問を務めた時は、その立場を利用して、ホワイトハウスの人事にまで関与し、「政治を私物化している」と批判された人物である。
第2次トランプ政権下では、公職に就かず、サウジアラビアやカタール、アラブ首長国連邦(UAE)からの投資を受けたプライベートエクイティ(PE)会社を経営している。
そのクシュナー氏は、2024年、ガザについて、その惨状には、目もくれず、「価値の高いウォーターフロント物件だ」と、開発業者の目線で値踏みをしている。そして、ガザでの戦争を「少し残念な状況ではあるが、イスラエルの観点に立って、私は住民を避難させ、その後、一掃するために最善を尽くす」と述べているのだ。
これについて宮田氏は、「ガザの海岸には美しいビーチがあり、魚も獲れて、沖合にはガス田もある。不動産開発すれば、かなりのお金が入る。そこに目をつけたのだろうが、クシュナー氏にはパレスチナ人に対する感情移入は、まったくない。ナチス時代の、ユダヤ人の強制移住を彷彿させる」と話した。
岩上安身は、「地上げを暴力でやって、補償しない。代替の土地や家屋の用意もない。すべて一掃して、リゾート地にする。ハッピーに見えるホロコーストじゃないですか」と憤りを口にした。
現代イスラム政治の専門家である宮田氏は、中東情勢についても多くの著書を執筆している。2024年4月には、ガザ紛争について『ガザ紛争の正体~暴走するイスラエル極右思想と修正シオニズム』(平凡社新書)を上梓し、2025年1月16日には、新著『イスラエルの自滅~剣によって立つ者、必ず剣によって倒される』(光文社)が発売された。
この2冊をあわせ読むと、パレスチナ人をジェノサイドし続ける残酷な現象面だけでなく、彼らが、「神」という妄想のもとに、好き勝手をやる特権的な自由が、自分達、ユダヤ=キリスト教徒だけには、神から許されているという、根深く傲慢な妄想的確信に支えられていることがわかる。
さらに、インタビューの後半では、「15ヶ月に及ぶ戦争は中東地域に何をもたらしたか?」と題して、宮田氏に解説していただいた。
※「トランプは戦争をしない」は嘘! 米大統領がバイデンでもトランプでも、イスラエルのやることは全部支持! キリスト教に妥協したユダヤ教徒と、キリスト教シオニストの福音派の猛烈な支持を抜きには考えられず、イスラエルの利益を最大限に追求!~岩上安身によるインタビュー第1176回ゲスト 現代イスラム研究センター理事長・宮田律氏
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/526058
※これまで『イスラエルの戦争犯罪を裁け』と言ってこなかった者たちに、『ハマスの戦争犯罪を裁け』なんて言う資格はあるのだろうか?~1.29浅野健一が選ぶ講師による「人権とメディア」連続講座~第3回 岡真理 早稲田大学文学学術院教授 2024.1.29
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/521301
※パレスチナ人の人権を蹂躙する極右の国内治安相~12.23 浅野健一が選ぶ講師による「人権とメディア」連続講座~第1回 宮田律氏(現代イスラム研究センター理事長)「ガザ紛争の背景~台頭するイスラエル極右の世界観と米国のダブルスタンダード」 2023.12.23
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/520531