2025年6月17日午後5時18分より、東京都千代田区の外務省にて、岩屋毅外務大臣の定例会見が行われた。
会見冒頭、岩屋大臣より、G7カナナスキス・サミット(6月15日~17日、於カナダ・アルバータ州)、このサミットにあわせて開催された日米首脳会談、中東情勢(イスラエル・イラン間の攻撃の応酬)、そして、6月16日に韓国・ソウルにて開催された「日韓国交正常化60周年記念レセプション」の4点について、報告があった。
続いて、各社記者と岩屋大臣との質疑応答となった。冒頭の岩屋大臣からの報告事項に関する質問や、米国の関税措置に関する日米協議についての質問の他、中東情勢について、質問が集中した。
IWJ記者は、国際情勢についての認識、および中東情勢に対する政府外務省の外交政策について、以下の通り、質問した。
IWJ記者「日本の外交方針について質問します。
米国は、米英豪の同盟関係ともいうべきAUKUSから手を引くことを宣言し、カナダのカーニー首相は、米国との同盟を解消すると発言するなど、いわゆる西側、あるいは、G7のまとまりは急速なスピードで分裂・解体しつつあり、『もう西側は既に存在しない』という欧州委員会委員長のフォン・デア・ライエン氏の発言通りの状況となっているように見えます。
そこで、イスラエルとイランとの戦争についてですが、日本政府は、既にバラバラの西側と協調するという惰性の外交から、国益を第一に考え、第3次石油危機を避けるための独自の外交を進めるべきではないかと考えます。
日本は、G7での孤立を恐れず、ガザでジェノサイドを続け、核保有国でもあるイスラエルに対し、強い自制を求め、先制攻撃を仕掛けたイスラエルに対して果敢に停戦を呼びかけ、さらにパレスチナとの二国家共存、パレスチナ国家承認にまで踏み切るべきではないかと考えますが、大臣のお考えをお聞かせください」
岩屋大臣「G7が分裂・解体しつつあるというご指摘には、同意をいたしません。
むしろ、世界が分断・対立に向かい、様々な紛争が勃発している中にあればこそ、G7が、やはり結束をすることが大事だと思っておりまして、今般のカナダでのサミットにおいても、日本が果たすべき役割というのは、G7の結束をもう一度しっかりと図る、課題によっては、テーマによっては、意見の相違があるであろう中にあって、やはり結束を強固にするために、日本が結び目の役割を果たしていくということだと思いますし、石破総理は、その役割を、今、しっかり果たしていただいていると考えているところです。
それから、後段の点については、まったく同感でございまして、先ほど来、申し上げておりますように、ガザ情勢についても、今般のイラン・イスラエル間の問題についても、すべての関係者に対して、国際法に則った対話・協議による解決ということを、我々は主張してきているわけです。
ガザについては、人質解放と停戦に関する合意、せっかくできた合意を、しっかり誠実かつ着実に履行することが、双方にとって重要だという立場ですし、このことについても、イスラエルを含むすべての当事者に対して、交渉に立ち戻って、合意の継続に向けて誠実に取り組むように求めてきております。
それから、パレスチナの問題については、これも、これまで一貫して申し上げてまいりましたように、当事者間の交渉を通じた『二国家解決』を、一貫して、我々、支持しております。独立国家樹立に向けたパレスチナ人の希望を理解して、これに向けたパレスチナの努力を、支援、日本がしてきたところです。
しかしながら、その上で、パレスチナの国家承認については、やはり和平プロセスをいかに進展させるかということが大事だと思います。
現行の状況で、ただ、国家承認をすることが事態の改善解決につながるのかどうかということを、しっかり考えていかなくてはいけないと思っておりますので、『二国家解決』が、最終的な解決だという方針を堅持しつつ、引き続き、総合的に、どの段階でどういう対処が最も有効かということを総合的に検討していきたいと思っているところです」
トランプ米大統領は、G7よりも、イラン・イスラエル戦争でのイスラエル支援を優先して、サミットを途中で切り上げ、帰国した。
IWJ記者が質問で指摘したように、カナダやEU自身が、「西側」という枠組みを否定する発言をしている、という事実に対し、岩屋外務大臣の、「G7が分裂・解体しつつあるというご指摘には、同意をいたしません」という答えは、何の論拠も示しておらず、日本政府の単なる願望にすぎないのではないか。
また、岩屋外務大臣は、「G7の結束を、もう一度しっかりと図る」のが日本の役割だ、とも答えた。
G7は、6月16日、イスラエルへの支持を表明した上で、イランを中東の不安定要因だと非難する声明を発表しました。
- G7、イスラエル支持を表明 「イランは不安定要因」=声明(ロイター、2025年6月17日)
岩屋外務大臣の発言は、90発と推定されるイスラエルの核保有は、「自衛権」だと容認した上で、イランが核を保有できる能力があるというだけで、イスラエルによる国際法違反のイランへの先制攻撃を肯定したG7の結論を、「結束」させるのが、「日本の役割」だ、と言っていることになる。
しかも、このG7の声明は、いつ日本に跳ね返ってきてもおかしくないものである。
日本は、2023年末時点で、約44.5トンのプルトニウムを保有しており、これは、数千発分の核兵器に相当する。
兵器転用可能なプルトニウムを大量に保有していることは、イランと同じように、いつ「核兵器製造能力の保持」と言いがかりをつけられるか、わかったものではない。
反論して交渉しているうちに、先制攻撃をされても、自衛権も認められない、日本が、そんな目にあわないと、誰が保証できるのだろうか?
G7のメンバーは、西欧帝国主義の国々であり、白人支配の国々であって、さらにはユダヤ=キリスト教の伝統が現代でも根強く生きている国々である。
日本も旧帝国主義国家だが、白人でも、欧州でもなく、ユダヤ=キリスト教の文化的伝統もない。
福音派のようなキリスト教原理主義者にして、キリスト教シオニズムも、根づいていないし、理解も困難だ。
イエス・キリストが再臨するとか、その前に、イスラエルが再建されなければならないとか、ハルマゲンドンこと、世界最終戦争が起きて、世の終わりと最後の審判が来るとか、敬虔な信者だけは、空中携挙(ラプチャー)といって、生きて、肉体を持ったまま、空に吊り上げられて破滅を免れるとか、再臨したイエスが統治する千年王国が支配するとか、そんな話を本気で信じることができるわけがない。死者が、甦るなど絶対にあり得ないことだ。
しかし、今日、福音派は、イスラエルが力を得て、イスラム教徒らを虐殺して、版図を拡大することを歓迎し、世界的な戦争が起こりそうな気配を聖書の預言が成就する兆しだとして、何百万人もが、喜んでいるとは狂気の沙汰である。
しかもその狂信がますます支配的な政治力を持っているのである。
そして、この狂信を狂信だと思える、正気の人々は、彼らの仲間には入れない。彼らも仲間とはみなさないだろう。
G7なり、西側諸国なりが、シオニストと、福音派に、忖度するようになればなるほど、日本は疎外されていくだろうと容易に想像がつく。
現在、世界では、どのようにウクライナ戦争や、イラン・イスラエル戦争が語られているか、SNSの発達によって、手に取るようにわかる。
福音派のYouTuberが、今回のイラン・イスラエル戦争を、旧約聖書の三大予言書のひとつ、エゼキエル書の中のエゼキエル戦争とみなして、興奮している様子も見ることができる。
現在、「悪役」にされているロシアは、エゼキエル書の中に出てくる、終わりの日に、イスラエルをペルシャ(イラン)とともに襲う、北方の「ゴグ」というイスラエルの敵役の国に当てはめられている。
新約聖書の中で、唯一、預言的な書であるヨハネの黙示録の中にも、「ゴグ」は、出てくる。ユダヤ教徒も、キリスト教徒も、共通して、この終末戦争を期待し、喜び、預言の成就のために、政治的に加速させようとすらするのである。
我々日本人は、どこまでいっても、異邦人でしかない。
トランプ大統領は、明らかに、在米ユダヤ人と、このキリスト教シオニストである福音派の期待を背負って、政権をとった人物である。娘婿のクシュナー氏はユダヤ人であり、娘のイバンカはユダヤ教徒に改宗した。
彼が、大統領選挙中に、暗殺未遂にあい、銃弾が耳を貫いて、九死に一生を得た事件で、彼のカリスマ性は、こうした福音派のような人々の目には、「神に選ばれた人物」と映った。
こうしたエピソードは、その当時は、戯言のように扱われたのだが、今では、ジェフリー・サックス教授が言っていた通り、近代的で、合理的な理性が、嘲笑われているような現実が、出現していると言える。
この排他的な狂信が渦巻く現実と、本気でどうつきあっていくのか。
異邦人である我々は、どうのみこまれずにいくのか。
真剣に考えなければいけないだろう。「なかったこと」には、できない話である。
会見の詳細については、ぜひ全編動画を御覧いただきたい。


































