2025年2月28日午後4時頃より、東京都千代田区の外務省にて、岩屋毅外務大臣の定例会見が開催された。
会見冒頭、岩屋大臣より、モンゴルのバトツェツェグ外相の訪日(2月28日~3月5日)について、報告があった。
- バトツェツェグ・モンゴル外務大臣の訪日(外務省、2025年2月26日)
続いて、各社記者と岩屋大臣との質疑応答となった。
他社の記者からは、「G7首脳テレビ会議(共同声明の発表予定)」「南アフリカで開催(2月19日~23日)のG20外相会合」「ウクライナ情勢(ゼレンスキー大統領の訪米)」「米国の関税政策」「タイ政府によるウイグル族の強制送還」そして「国会での審議(政府による高額療養費制度の利用者負担上限の引き上げ方針の見直し)」について、質問があった。
また、フリー・ジャーナリストの高橋清隆氏より、「米国国際開発庁(USAID)の閉鎖が日本へ及ぼす影響」について、質問があった。
IWJ記者は、ウクライナ支援政策について、次のように質問した。
IWJ記者「ウクライナ政策について質問します。
トランプ政権発足後、米国のウクライナ政策が、戦争継続から停戦案へと変換されましたが、石破総理は、2月24日のG7首脳TV会議にて、『日本はG7と連携し、今後もウクライナ支援と対露制裁を継続する』意向を表明されました。
過去2年間の日本政府のウクライナ支援総額は、121億ドル、約1兆7000億円にのぼるといわれています。
米国では、イーロン・マスク氏が、『上院の予算案にウクライナの予算が多いのは、政治家へのキックバックがあるためである』と、X(エックス)上で指摘し、また、USAIDの解体に着手するなど、米国は確実に、大きく舵を切っているように見えます。
また現在、財務省解体デモの勢いが拡大しており、『政治家や官僚は、日本国民のために予算を使うべきだ』との怒りを訴えています。
国の予算は、国民の生活の底支えのためにこそ使われるべきだと考えますが、岩屋大臣の考えをお聞かせください」
これに対し、岩屋大臣は、以下の通り答弁した。
岩屋大臣「ロシアによるウクライナ侵略への対応にあたっては、私どもは、欧州とインド太平洋の安全保障は一体不可分であると。このような力による一方的な現状変更の試みは、世界のどこであれ、許してはならないという強い危機感のもとで、自らの問題として、この問題に取り組んできているところでございます。
この考え方にもとづいて、御指摘のように、これまで、人道、財政、復旧・復興の分野で総額120億ドル以上の支援を表明し、また着実に実施してまいりました。
現在、ウクライナをめぐって、国際社会において様々な動きが出てきておりますが、我が国としては、それらの動きを注視しながら、G7を始めとする国際社会と緊密に連携し、今後とも対ウクライナ支援を継続していく考えでございます。
このウクライナ支援を含めて、我が国の様々な外交政策について、国民の皆さまに御理解いただけるように、その意義を説明する努力は、もちろんこの記者会見の場を含めて、様々な機会をとらえて行ってきておりますし、これからもしっかりと努力を尽くしていきたいと考えております」
以上のように、岩屋外相の回答は、「G7との連携」などと、今もまだ欧州と米国が一体であるかのような前提に立つものであった。
しかし、トランプ政権は、ウクライナ紛争の問題に関しては、バイデン政権の外交姿勢を強く批判した上で、180度舵を切っている。これまで通り、ロシアが一方的な侵略を行ったとして、ウクライナ支援と対露制裁を継続しようとする欧州とは、一線を画している。
欧州と米国は、一枚岩ではない。いまだに一枚岩であるかのような岩屋外相と日本政府の認識は、現実から大きくズレている。
なお、IWJ記者が質問の中で触れた「米国によるウクライナ支援に対するキックバック」については、以前の定例会見でも質問している。
また、IWJ記者は、上記の質問について、ウクライナ国内で横行している汚職について、さらに追及する質問も行なっている。
会見の詳細については、全編動画を御覧いただきたい。