2024年10月29日午後2時より、東京都千代田区の外務省にて、岩屋毅外務大臣による定例記者会見が行われた。
会見冒頭、岩屋大臣より、(1)G7による「ウクライナのための特別収益前倒し融資」、(2)「シリアへの緊急無償資金協力」、(3)「第1回日・EU外相戦略対話」の3点について、報告があった。
岩屋大臣は、11月1日に訪日予定のジョセップ・ボレル欧州連合外務・安全保障政策上級代表との間で、第1回目の日・EU外相戦略対話を開催する予定である。
- ウクライナのための特別収益前倒し(ERA)融資に関するG7首脳声明(外務省、2024年10月26日)
- シリアにおける人道状況の悪化を受けた緊急無償資金協力(外務省、2024年10月29日)
岩屋大臣からの報告に続いて、各社記者と岩屋大臣との質疑応答となった。
他社の記者からは、「衆議院議員選挙の受け止めと外交への影響」、「日中韓3ヶ国協力」、「北朝鮮兵士のロシアへの派遣(国連安保理会合の開催)」、「中東情勢(イスラエルへの働きかけ)」、「元シー・シェパード代表、ポール・ワトソン氏の拘束と身柄の引き渡し」、「日・EU戦略的パートナーシップ協定」、、そして、「イスラエル国内での『UNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)』の活動を禁止する法案可決」について、質問があった。
IWJ記者は、「北朝鮮兵士のロシアへの派遣」について、以下の通り質問した。
IWJ記者「北朝鮮兵士が3000人、訓練を受けるために、ロシア東部に移動したとの報道があります。
問題は、これが日本を含む西側諸国が、2014年(平成26年)から8年にわたってウクライナが行ってきた、ロシア語話者への差別やジェノサイドについて完全に無視し続け、ウクライナへの過剰な軍事支援、過剰なロシア敵視、そして、過剰な対露制裁を行った結果である、ということであり、ロシアと中国、そして、北朝鮮との結びつきが深まってしまった、ということです。
これら3ヶ国と国境を接するのは、G7では日本だけです。いずれも核保有国であるこれらの国と、同時に有事となれば、集団的自衛権の解釈改憲をした日本は、無事では済みません。
岸田政権の外交方針とは一線を引き、東アジアでの戦争を回避する外交に転換するおつもりがあるかどうか、お聞かせください」
この質問に対して、岩屋大臣は次のように答えた。
岩屋毅外務大臣「日本政府としては、北朝鮮によるロシアへの兵士の派遣については、ロシアによるウクライナ侵略に加担する可能性を含めて、深刻に懸念しているところでございます。
北朝鮮が兵士をロシア東部へ派遣して、軍事訓練に関与していると信じるに足る情報は、確認しておりまして、米国及び韓国を始めとする関係各国とも協力して、関連情報の収集・分析に努めております。
先ほども申し上げましたが、ロシアによるウクライナ侵略というのは、明らかな国際法違反であって、国際秩序の根幹を揺るがす暴挙だと、我々は考えておりまして、最近の北朝鮮との軍事協力の進展の動きは、ウクライナの状況をさらに悪化させる恐れがあるということを憂慮しているところでございます。
外交方針を変えるつもりはないかというお尋ねですけれども、私どもとしては、引き続き、関連情報を収集分析して、ウクライナにおける一日も早い、公正かつ永続的な平和の実現のために、国際社会と緊密に連携して取り組んでいきたいと考えております」。
その平和の実現は、ロシアとの対話、あるいはロシア側の主張にも公平に耳を傾けることがあってこそ、実現するものではないのか、という疑念が強く残る。
ロシアの侵攻が国際法違反なら、それに先立つウクライナ国内でのロシア語話者に対する8年間に及ぶジェノサイドもまた、国際法違反ではないのか?
内戦に介入したNATOによるコソボ空爆は問題なくて、ロシア系住民の保護という、一応は大義名分のあるロシア軍の介入は国際法違反になるのは、ダブルスタンダードではないのか?
大いに疑問がわいてくる。
記者会見の詳細については、ぜひ全編動画でご確認いただきたい。