【岩上安身のツイ録】シリア邦人拘束事件 身柄確保のため「民間軍事会社」関係者は即刻会見を 「モーニングバード!」で岩上安身がコメント 2014.8.20

記事公開日:2014.8.20 テキスト
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 8月19日(火)朝8時から、テレビ朝日「モーニングバード!」に出演しました。

 内戦状態にあるシリア北部のアレッポで、日本人男性が「イスラム国」に拘束されている模様です。男性の解放に向けて動いているという反政府派の「イスラム戦線」の幹部によると、男性は無事だということですが、まだ予断を許さない状況が続いています。

 そのほか、古物商「まんだらけ」から鉄人28号のおもちゃを万引きした犯人が逮捕されたニュース、独り暮らしのお婆さんが自宅裏山の土砂崩れで亡くなったニュース、そして、たった一滴の血液で13種類のがん診断が可能となる新しい医療技術の話題についてもコメントしました。

シリアで邦人男性が拘束:「民間軍事会社」のCEO

 内戦が続くシリア北部のアレッポで、日本人男性がイスラム国とみられる集団に拘束されました。この事件が明らかとなったきっかけは、YouTubeに投稿された動画でした。映像の中で男性は、仰向けにされ、この場所にいる理由を問いつめられます。また自分の名前を「はるな ゆかわ」と名乗ります。「どうして銃を持っているのだ」とも問われていることから、拘束時に武器を持っていたことがうかがわれます。  

 その後、ネット上では、この男性が、千葉市在住で「PMC(Private Military Company)」という会社を経営する湯川遥菜さんではないか、という憶測が出はじめます。湯川さんはPMCの自社サイトのほか、Facebookやブログなども積極的に利用しており、その活動や交友関係などが、おおよそ明らかとなりました。

 湯川さんのFacebookには、シリアで銃を手に持つ写真や、AK-47の射撃をデモンストレーションする様子を映した映像がアップロードされています。さらには、田母神俊雄氏、元特命全権大使などとのツーショット写真も投稿されていました。

 その他、自由シリア軍の兵士と交流する様子をとらえた写真も数多く投稿されていることも注目されるべきでしょう。湯川さんのブログには、「アサド政権の虐殺の実態を見てきた」と書かれていることから、反政府派に共感しているらしいことを思わせます。彼らととともに行動していたというのは、まず間違いないようです。

 PMC社の顧問で元茨城県議の木本信男氏(70)によれば、湯川さんはかつて、米国と英国からの軍事物資の輸入と、自衛隊への納入に関わる仕事をしていたといいます。ただし、軍事経験は全くないそうです。今年の4〜5月頃にも、自由シリア軍に拘束されていたという情報もあります。

 湯川さんの解放に関して日本政府が直接動くの難しい状況が続いています。イスラム国と交渉をしようにも、シリアでは政府、自由シリア軍やイスラム戦線などの反政府派、『イスラム国』の3勢力の戦闘が泥沼化しており、日本大使館はヨルダンへ避難しています。関係者が現地に行って直に確認するのが非常に困難な状態です。

岩上「まず思うのは無事であって欲しいということですね。ただ過去にイラクやアフガニスタンで日本人が拘束されたケースとは全く条件が異なっています。

 かつて拘束された方々はジャーナリストや平和活動家といった民間人。つまり非武装でした。したがって戦闘地域にいる人たちにとっては、敵でもなく味方でもない存在でした。ところが今回、拘束された人は武器を携行していたということですね。

 さらに、『イスラム国』と敵対する自由シリア軍と一緒に行動していたといいます。そうすると、当然、『イスラム国』からは敵だと見なされることになります。

 そして本人自身がネット上でPMCという会社のCEOをしていることを明らかにしている。PMC(Private Military Company)というのは世界で通用する言葉で、『民間軍事会社』を意味します。これを『民間警備会社』と誤訳している一部報道がありますが、大きな間違いです。

 日本に軍事会社があっていいのかという問題もありますが、それはひとまず置くとしても、『イスラム国』側は、正規軍ではないが、軍事会社の人間が銃を持って侵入してきたと認識したわけです。

 そして拘束された時に、御自身のことを写真家であると名乗ってしまった。軍人であったなら捕虜として扱われる可能性がありました。しかし『写真家だ』と言ったため、向こうは偽装したスパイであると見なした可能性がある。

 そうすると、さらに悪いことに、日本政府が関与して送り込んだスパイだという疑いにまで発展しかねません。

 したがって、この男性の『民間軍事会社』に関わりがあり、顧問になっているような人は、一刻も早く会見するべきです。会見して、この男性が日本政府とは関係なく単独でシリアに入ったのであれば、そのことを表明し、そしてスパイではないことを早くイスラム国側に伝え、解放を促すべきですね」

 湯川さんの安否が気遣われる中、IWJは18日に田母神氏の事務所に対し湯川さんとのツーショット写真について電話取材をしましたが、応対した男性の回答は「この件について何らかのコメントを出す予定は、今のところない」というもの。人命がかかっており、田母神氏には説明責任があるのではないか、という問いに対しても「取り次ぎもしないし、コメントも出さないというのが田母神代表のスタンスだ」と答えました。

 このように一度は「ノーコメント」を貫いていた田母神氏の事務所ですが、さすがにだんまりを決め込むこともできなくなったのか、田母神氏のツイッターアカウントから18日夜、「彼との写真は私が何千人かと撮った写真の一枚です。いつ彼に会ったのかも覚えておりません」「全く面識がありません」というツイートが流されました。

 これが、湯川さんの無事が伝えられるまでに、田母神氏が出した唯一のコメントです。湯川さんを心配している様子もありません。記憶していようがいまいが、人命がかかっています。可能な限り動こう、という姿勢があってもいいと思うのですが——。

 その後、20日夜になり、解放に関する交渉を行っている「イスラム戦線」の幹部の話として、湯川さんの無事が伝えられました。すると田母神氏は「よかったですね」とコメントをします。「日本政府にも無事帰還のために全力を尽くして欲しい」などと、まるで自分とは関係ないと言わんばかりです。

 また、田母神氏は湯川さんのことを一貫して「湯浅」と表記していますが、わざとだとすれば、面識がないことを強調しようとする、姑息なやり方だと言わざるを得ません。

 自身の会社に「民間軍事会社」という名前をつけていた湯川さん。元航空幕僚長の田母神氏とのツーショット写真にどういう気持ちでおさまっていたのでしょうか。まさか、自分が生死の分かれ目にあるときに、「面識がない」の一言で済まされてしまうと、予想していたでしょうか。

 民間軍事会社なるものを作ることは、そのまま現政権の軍事強調路線に沿ったものですが、だからといって、湯川さんが拘束されたことを「自己責任」だと突き放していいものでしょうか。私は18日夕方に、イスラム学者で中東情勢にも詳しい中田考氏にインタビューしましたが、このことについても意見をうかがいました。

「愛」より「金」か:「まんだらけ」鉄人28号万引き犯逮捕

 先だって話題となっていた、古物商「まんだらけ」での鉄人28号のブリキ製おもちゃの万引き犯事件で新しい動きがありました。警視庁は19日、千葉市在住アルバイトの岩間和俊容疑者(50)をこの万引き犯として逮捕しました。

 ご存知のように、まんだらけは4日の被害直後から盗難された鉄人の返却を求め、犯人だと推測される人物が記録された防犯カメラの画像を、顏部分だけにモザイクをかけた上で、自社ホームページで公開していました。当初、12日までに返却しない場合は、顏部分の公開にも踏み切るとしていましたが、警視庁から「捜査に支障が出る」との申し入れがあり、13日の0時すぎに公開の中止を発表しました。

 盗まれた鉄人28号は犯行3日後の7日に、中野区の別の古物商に売却されていました。この古物商の防犯カメラに岩間容疑者の姿が記録されており、売却の際に岩間容疑者は身分証を提示していました。その後、まんだらけの防犯カメラに写っていた人物とよく似ていたことが分かり、今回の逮捕につながりました。

 ゼンマイで動くという鉄人は25万円で販売されていましたが、その売却額は6万4000円でした。岩間容疑者は、「ショーケースの扉が開いていたので盗んでしまった。売ってお金にしようと思った」と動機を話しています。また、まんだらけによる画像公開については、売却の後に知ったそうです。

 わずか3日後に、同じ中野区内の同業者に売却するとは、素人臭い印象を与えるやり方です。一方で、これまで同じような犯行を繰り返していて、気づかれることがなかった可能性もあります。

岩上「足がつかないことが分かっていたとすれば、そのくらい常習だったのかもしれません。

 ところで、鉄人28号が50歳代にとってアイドルだということが先週話題になりましたね。犯人も同年代ですが、ずっと手許に置いておくというわけではなかったようです。鉄人への『愛』から起こした事件ではなかったようですね。残念なことでもあります。

 ところで今回は『まんだらけ』さんが法の枠内でぎりぎりのチャレンジをしました。そのチャレンジが、モザイク越しでも犯人像が浮かび上がるきっかけとなったわけです。

 その意味で、今回の件はいろいろな教訓を残したと思います。もう少し、ゆるいモザイクをかけて出せばいいのか、とかですね(笑)。店舗側は死活問題ですから。

 ぜひとも、お店にはこの鉄人が戻って欲しいですね。『万引き事件のあの鉄人』として飾っていただくのは、どうでしょうか」

行政の責任は?:土砂崩れで独り暮らしのお婆さんが亡くなる

 石川県羽咋(はくい)市で17日午後0時頃、大雨の影響で住宅の裏山が崩れ、土砂に埋もれている独り暮らしの女性が発見されました。この女性は間もなく死亡が確認されました。土砂崩れは7時30分に地元の町内会がパトロールした際に発見されており、連絡を受けた市職員2人は10時過ぎに現場確認に訪れていました。しかし土砂の中に長濱さんが埋もれていることには気づかなかったといいます。

 亡くなったのは長濱英子さん(74)。現場は、高さ5メートル、幅4メートルにわたって土砂が崩れていました。実は、長濱さん宅の裏山は、大雨の度に土砂崩れが起きる状態であることが2年前からすでに分かっており、親族の男性によれば板で土砂崩れを防いでいたといいます。昨年夏にも裏山は崩れ、長濱さんは町内会を通じ、羽咋市に対して対策を求めていました。

 ところが市側は、私有地だということを理由に、確たる対策を講じませんでした。市からは、長濱さんに対し、「自主避難」という「指導」があったといいます。さらに、現場周辺には、石川県が指定する土砂災害危険区域が設定されていますが、長濱さん宅の裏山はこれに含まれていませんでした。

 番組の井口レポーターの取材に対し、羽咋市地域防災対策室の担当者は、「昨年8月上旬に現地に行き、本人に対し、民地・民家の対策工事は各所有者が行うことが基本である旨を説明した」と答えました。

 しかし、専門家によれば、「私有地」という理由で工事ができないことはないといいます。民有地の傾斜地に関する制度として、各都道府県には「急傾斜地崩壊対策事業」があります。石川県の場合は、斜面の高さ5メートル以上、勾配30度以上など一定の条件を満たせば、県による工事が可能となります。

 長濱さん宅の裏山に関してもこの制度を利用することができたかもしれませんが、市から県に対する申し入れなどはなかったといいます。

 岩上「かつては、『行政ではなく自分達でやろう』ということが正当性を持った時代がありました。

 まず、お家という場所には皆が住むもので、そもそも大家族で、お婆さんと一緒に、働き盛りの息子世代も住んでいた。そして働いているわけですから現金が手元にある。その現金を工事に使うことができたわけです。

 ところで、このケースです。山、土地、家をという資産を所有していますが、これらをすぐに現金に換えるわけにはいけません。お婆さんには年金の乏しい現金しか入ってきませんね。だから、すぐに大きな額のお金を工面できるわけではない。

 人口全体で高齢者は4分の1の現在、一人暮らしの高齢者の数が増加しています。リタイアした人たちは年金でその日の暮らしをなんとかしているところへ、『自分達でやりなさい』と言っても、果たして自力でやれるのか。疑問ですね。

 もう一度、しくみ自体を考え直す必要があると思います」

世界最先端:「画期的」ながん診断システム

 近い将来、たった一滴の血液で、13種類のがん診断が可能となるかもしれません。

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と国立がん研究センター(NCC)、および東レなどの企業が共同し、がんや認知症を検査できる、最先端の診断システムの開発に着手するといいます。このシステムが実現すると、一回の血液検査で13種類のがんや認知症を診断することができるそうです。およそ79億円の国費が投じられ、産官学が連携する大型プロジェクトです。

 血液などの人間の体液には、遺伝子物質(マイクロRNA)が含まれているそうですが、がんなどを患うと、マイクロRNAの量や種類が変化することが分かっているといいます。プロジェクトでは、NCCに保存されているがん患者の血液を解析し、疾患の早期発見につなげるそうです。

岩上「私は心配性なので、『素晴らしい』ということの裏で、何か問題が発生するのではないかと考えてしまいます。しかし話を聞いた限りでは、何も起こりそうもないですね。

 『世界的な発見』だとか『世界の診断のスタンダードを目指す』など、国を上げての取り組みですね。素晴らしいことだと思いますが、ちょっと待てよと。少し考えてみると、これまでガンの発見、診断、治療などに関して大変な技術の集積があるはずですね。

 同時にそうした過去の特許権を持っている人がいるわけですよ。そういう人たちが失業したり、困ったりするかもしれません。新しい診断法に関わる人たちが世界から妬みを買うかもしれません。ま、それくらいしか見つかりませんが。

 この新しい診断技術は、途上国などのコストをかけられない国の人たちにとっては朗報だと思いますね。逆に先進国の一部では『面白くない』と思う人が出てくるかもしれません。ともあれ、いいことには違いありません」

 自分ががんになったらどうするだろうか。検査や手術はもちろん、藁にもすがる思いで、保険適用外の薬や治療法を試そうとするかもしれません。しかし現実には、たいへんなお金がかかります。そう考えると、がん細胞の早期発見が可能になるという、この診断技術が素晴らしいことには間違いがありません。心より実現を望みます。

  ところで、このプロジェクトは「産官学」が共同して行うものですね。そして、民間企業の中では、経団連会長を務める方が会長職にある会社が、大きく関わっているということです。

 誰もが認める一流企業が、なかば独占的に、すべての人に提供されるべき「画期的」な医療技術の商用化を進めることになりはしないか。それを正当化するための「産官学」なのではないか。新しく「がん治療ムラ」ができてしまうのではないか。そのために血税が使われているのではないか——。

 こんな懸念をほんの少しでも持ってしまう私は、やはり「心配性」なのでしょうか。懸念の払拭には、ちょっとした取材が必要かもしれません。

★岩上安身がレギュラーコメンテーターとして出演中のテレビ朝日「情報ライブショー モーニングバード!」は、毎週火曜日午前8時から放送中! ぜひ、ごらんください。

【過去のモーニングバード!ツイ録記事】

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