7月29日(火)朝8時から、テレビ朝日「モーニングバード!」に出演しました。
スタジオでは、佐世保で起きた、高校女子生徒による同級生の殺害事件が取り上げられました。「人を殺してみたかった」という供述、遺体の切断など、陰惨かつ不可解な事件です。逮捕された少女は、恵まれた家庭に育ち、東大を目指すほど、勉強熱心でもあったようです。「いい子」の「優等生」だからこそ、知的発達の進み具合に比べ情緒的発達が遅れ、バランスを欠いてしまって引き起こした事件かもしれません。
その他、解禁されたばかりのサンマ漁が深刻な不漁というニュース、「遺体保管所」の設置を巡り対立する業者と地域住民のニュースについてもコメントしました。
「人を殺してみたかった」16歳の少女
27日未明、長崎県佐世保市のマンションの一室で、高校1年生の松尾愛和さん(16)が、頭部と左手首が切断された無惨な姿となって見つかりました。長崎県警は27日、この部屋に住む同級生の少女(15)を殺人容疑で逮捕。本人の供述によれば、26日20時ごろ、松尾さんの後頭部をハンマーで何回も殴った後に、ひもで首を絞めて窒息死させたといいます。
逮捕された少女は警察の取り調べに対して落ち着いた様子で答え、「人を殺してみたかった」「遺体をバラバラにすることに関心があった」といった趣旨のことを話しているものの、後悔や反省の言葉などはないそうです。
少女は、9月からの海外留学を控えて、この4月から犯行現場となったマンションの一室で一人暮らしを始めていました。室内には、ハンマーやのこぎりや刃物が残されており、少女は「自分で買った」と供述しているそうです。また、29日になり、自分から会いたいと自宅へ誘ったという趣旨の供述をしたことも明らかになりました。以上のことから、警察は、松尾さんの殺害に計画性があったものと見て捜査を続けています。
岩上「佐世保というと、2004年に小学6年生の女子児童がカッターナイフで同級生の女の子の殺害した事件がありました(※1)。同級生の殺害、女の子同士という点で、今回の事件と似ています。しかし以前の事件の場合、加害者側に強い攻撃性があったり、被害者との感情のもつれがあったりと、分かりやすい動機がありました。
一方、今回の事件の場合、加害者が『殺してみたかった』と言っていますが、これはまるで感情が喪失しているように聞こえますね。それと同時に計画的な準備をしていると思われる面もあります。
『殺してみたかった』と本当に思っているのかもしれない、そう考えると慄然とします。ただ、そうなると、加害者の精神状態が正常だったのかどうか確かめる必要もあると思います。精神鑑定も視野に入れて、これからの捜査を進めていくべきだと考えます」(逮捕の女子生徒「人を殺してみたかった」 NHK、7月28日)
(※1)佐世保小6女児同級生殺害事件:2004年6月1日午後、長崎県佐世保市の市立大久保小学校で、6年生の女子児童が同級生の女児にカッターナイフで切り付けられ、死亡した事件である。小学生の女子児童による殺人事件でかつ学校が舞台であり、世間に大きな衝撃と波紋を広げた。被害者の死因は、首をカッターナイフで切られたことによる多量出血だった。(Wikipediaより )
出口のない「優等生」
逮捕された少女は小さい頃から「頭がいい」という評判でした。二人が通っていたのは、県下でも上位の進学校。少女が「東大を狙っていた」との証言もあります。スポーツに打ち込む一面もあり、全国大会に出場した経験もありました。
父親は「地元の名士」と報じられましたが、職業は弁護士。恵まれた家庭環境に育ったことを思わせます。ただ、東大出身で地元のメディアで働き、退職後は教育関係の仕事にもたずさわっていたという実母は昨年秋に病死。その後すぐに、父親は再婚したといいます。
また、少女は、小学生の時に給食に異物を混入させる「事件」を起こしたことがあったといいます。さらに、小動物の解剖に熱中していた時期があったとの証言も出ています。周囲には「頭が良すぎて、逆に何を考えていたかわからない」という印象を与えていたようです。
岩上「加害者は優等生だったのだろうなと思いますね。優等生というと親や周囲が好意の目で見ます。しかし、知的には発達していても情緒的には不安定な場合が多々あるのだろうと思います。このような子が起こした不条理な事件はこれまでもあったように思います。
かつて、東京渋谷の歯科医一家で、兄が妹を殺害するという事件がありました(※2)。これも自宅の部屋で事件が起きたという点で似ており、恵まれた家庭の頭の良いお子さんの間で起こったことですね。頭が良いことと、情緒が安定していることはまた別の問題なのだと思います。
頭が良いとされる子供であるほど、情緒の安定にはむしろ時間がかかるのかもしれません。また、何かマイナスの負荷がかかった場合に、普段から遊び歩いたり、やんちゃができる子であれば、発散や反抗の仕方があったかもしれませんが、優等生であったがゆえに、他に出口を見いだすことができなかった可能性もあるように思いますね」
(※2)渋谷区短大生切断遺体事件:2007年1月3日に東京都渋谷区で発覚した殺人・死体損壊事件。2006年12月30日午後、歯科医師の両親と大学生の長男が帰省中となり東京都渋谷区の自宅の中で予備校生の次男(当時21歳)と短大生の長女(当時20歳)が二人きりとなっていた。二人は家族や生活態度などについて1時間に渡り話し続けたが、長女の「兄さんには夢がないね」という言葉で逆上し、加害者は木刀で被害者の頭を殴りつけた後にタオルで首を絞め殺害。さらにのこぎりで被害者の体を首や腕、脚の各関節部分を中心に15カ所でバラバラに切断した。(Wikipediaより )
サンマの不漁
今年は、サンマが食べられないかもしれません。
北海道東部では今月上旬にサンマ漁が解禁されたばかりですが、たいへんな不漁です。昨年の漁獲量は過去10年で最も少なかったのですが、今年は26日現在、前年同時期の10分の1にしかならないそうです。
当然、価格は高騰し、10日の初競りでは1キロ当たり2万8900円という過去最高の値が付きました。昨年に比べ、8700円の値上がりだといいます。一尾400円という値段が付けられ店頭に並ぶ、わずかなサンマの姿をスタジオの映像で見た時、今年はあきらめなければならない、と思いました。
まとまったサンマの魚群を見つけることが困難な状況が続く中、高騰する燃料費の影響もあり、海へ出るのを控えようとする漁師さんも出ているとのことです。
都市部の消費者にとっても、燃料費の上昇はいい話ではありません。ただでさえ高い今年のサンマが、運搬費分まで上乗せされて店頭に並ぶからです。
岩上「原油高が続くと思います。以前この番組でウクライナ情勢が不安定になると原油高になるという指摘をしました。さらに中東の政情もますます悪化しています。今後も原油価格上昇が予想される中、漁師さんが遠くへ船を走らせることが難しくなっています。
ただ、悲観ばかりもしていられないな、と思います。魚の漁獲量には種類ごとにローテーションがあるといいます。かつてニシンが獲れていたのが難しくなっているとか、以前はサンマが希少だったのが、その後に漁獲量が増えたという現象があるそうです。
サンマは人気があり、私も好きなので食べられないのは残念ですが」
ここでひとつ訂正が。コメントの中で今年はかわりに「アジが大漁なのでアジを食べましょう」と言ってしまいましたが、これは私の言い間違いでした。正しくは豊漁なのはアジではなく、イワシ(「サンマ漁でイワシが大量に水揚げ」NHK、7月25日)。
失礼しました。訂正いたします。ちなみに私はイワシも好物で特にイワシのツミレは大好物。
※店頭に並ぶサンマの価格も、ウクライナ情勢に左右されます。それくらい世界の出来事は一つにつながっています。
※エネルギー資源の中東依存は、日本にとってのっぴきならない問題です。5月23日におこなったインタビューの中で藤和彦氏は、ロシアからパイプラインを引けばいいじゃないか、という示唆に富んだ内容の発言をされました。
遺体保管所が必要とされるわけ:孤立死の増加
川崎市中原区宮内の住宅街で、「遺体保管所」の開設を巡り、地域住民が反発しています。遺体保管所とは、火葬前の遺体を一時的に預かる施設です。近年都市部で増加しているといいますが、建設に関する法規制はこれまでのところありません。
住民たちからは、「地域のイメージが悪くなる」「不安だ」「気味が悪い」といった声が上がっています。23日に住民と事業者の間で説明会が持たれましたが、強く反対する住民側に対して、事業者側は「法的には問題がない」と主張し、議論は平行線のまま。事業者側からは「なぜ、ご遺体がだめなのか」と、逆に問いかける一幕もありました。
28日には、宮内の住民を中心とする団体が、川崎市に対して、事業者の説明責任や、遺体保管所を規制する条例、国による法律の整備を求める申し入れを行いました。
これは、どちらか一方が正しく、一方が間違っている、という問題ではなさそうです。
住民の感情は、もっともだとは思います。しかし、一方的に嫌悪し、「出ていけ」と主張するのは、遺体の尊厳の問題にもかかわりますし、「死んでまで、邪険にされるのか」という、暗い気持ちを抱く人々もいます。いままた、ご遺体は、ほんの一日か二日前には生きていた人間だったのです。どんな人間でも息を引き取ったら、仏様につまりは「ご遺体」になる、という事実を忘れてはなりません。遺体保管所のような施設の増加には、引き取り手のない遺体が急激に増えているという背景があります。周囲に看取られることなく亡くなっていく、孤立死の増加の問題もあります。
岩上「日本では、お葬式関連に関してずっと法律がない状態でした。社会の習俗および宗教行為として国が立ち入るべきでないし、規制は必要ないという了解の下これまでやってきたんです。
実際、社会があり、家庭があり、看取る家族があり、埋葬する土地があるという風に、規制なしでやってこられた環境があったように思います。ところが現在、全人口のおよそ4分の1が65歳以上のご老人です。これは日本が始まって以来の出来事です。
誰も予想しなかった高齢者人口割合の増加に、社会が対応できなくなっている現実があります。そのような中、行き場のない遺体を受け入れている遺体保管所の側の立場も考える必要がありますね。遺体保管所の業者も社会的役割を果たしている面があるのですから。
なによりも、これまでならば、看取る家族がいましたね。私も母と父の両方を看取った経験がありますが、火葬するまで遺体を安置する場所が必要ですね。周囲に看取る人がいなかったりする人の場合は孤立死になります。こういう方が今非常に増えています。
したがって、行政なりが対応して、一時的に身寄りのない遺体を引き取るという事情がすでに多く生じているということです。これは、みんなで考えるべき大きな社会問題だという点に目を向けるべきですね」
【孤立死の増加】
死後、誰にも気づかれることなく長期間放置された末に発見される「孤立死」は、たびたび報じられるように、繰り返される慘ましい出来事です。
内閣府の『平成26年版高齢社会白書』によると、東京23区内で死亡した一人暮らしの65歳以上の方の数は、2013年で2733人(速報値)。2002年では1364人ですから、10年で2倍以上増えたことになります。また、独立行政法人・都市再生機構が運営管理する賃貸住宅およそ75万戸についての調査によれば、単身居住者が死亡から一週間以上を過ぎて発見されるケースが近年(2008年以降)増加しており、特に65歳以上の高齢者でその増加率が極めて著しい(8割増)ことが分かっています。
★岩上安身がレギュラーコメンテーターとして出演中のテレビ朝日「情報ライブショー モーニングバード!」は、毎週火曜日午前8時から放送中! ぜひ、ごらんください。
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